単体規定

避難規定とは?|対象となる建築物は?建築基準法を根拠に解説

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避難規定ってどんな規制?

避難規定は、すべての建築物が適合させなくてはならない規制なの?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

避難規定とは、建築物にいる在館者が建築物から安全に避難できるようにする規制のこと

避難規定は、以下の建築物に対して規制を受ける(すべての建築物ではない)

緩和とみなし規定って何が違いのか?

今回の記事では、わかりやすく解説していきます!(X:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
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著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

『避難規定』とは?

避難規定とは法35条に定められた規制のこと。

所定の建築物の避難施設等は、避難上及び消火上支障がないように計画をしなくてはならない

建築物から火災や地震などが発生した場合、在館者は速やかに建築物から避難しなくてはなりません。そこで、円滑に避難をするために、廊下や階段、その他の避難施設についての規制が定められています。

避難規定は、在館者の安全を確保するための超重要な規定といえるでしょう!

避難規定の『適用を受ける建築物』とは?

避難規定の適用を受ける建築物は以下の通り

あれ?すべての建築物じゃないってこと?
その通りです!だから、無窓居室のない2階建ての住宅などは、避難規定の対象ではありません!

避難規定の肝は、この適用を受ける範囲です。よく、避難規定の一つである、『直通階段の設置』や『手すりの高さ』はすべての建築物に適用が必要と勘違いされがちです。しかし、実際には避難規定の適用を受けるのは所定の建築物に限られるので、すべての建築物に必要になるわけではないのです。

避難規定を理解すると、実は2階建ての住宅などは、階段が不要なことがわかります!詳しくは、以下の記事っで解説しています。

避難規定『具体的な規制内容』とは?

避難規定の具体的な規制内容は以下の通り

  • 廊下の幅
  • 直通階段の設置
  • 2以上の直通階段
  • 避難階段の設置
  • 屋外への出口
  • 屋上広場等
  • 排煙設備の設置
  • 非常用の照明装置の設置
  • 非常用の進入口の設置
  • 敷地内通路
それぞれの規制について、詳細に確認していきましょう!

廊下の幅

廊下の幅は、以下に定める数値以上とすること(令119条)

廊下の用途、配置 両側居室 片側居室
  • 小学校、中学校、義務教育学校、高等学校
  • 中等教育学校における児童用又は生徒用のもの
2.3m 1.8m
  • 病院における患者用のもの
  • 共同住宅の住戸若しくは住室の床面積の合計が100㎡を超える階における共用のもの
  • 三室以下の専用のものを除き居室の床面積の合計が200㎡(地階にあつては、100㎡)を超える階におけるもの
1.6m 1.2m

建築物の廊下は、避難を円滑にするため、所定の寸法以上になります。その寸法は、建築物の用途や規模だけでなく、片側居室なのか、両側居室なのかによっても異なります。

参考 【廊下の幅の基準】3室以下の室や両側居室とは?

 

直通階段の設置

建築物の階段を、直通階段(各階で次の階段まで誤りなく通じ、避難階又は地上まで直通する階段)にすること(令120条)

直通階段は、居室の各部分からの歩行距離30〜60mの部分に設置すること

建築物の階段を、避難しやすい階段である直通階段とし、居室から直通階段の距離を短く計画する必要があります。

直通階段は、次の経路を誤らないように計画されている階段のことです。詳しくは、以下の記事で記載しているので確認してみてください。

参考 直通階段とは?【建築基準法上の定義などをわかりやすく解説】

 

2以上の直通階段

所定以上の建築物は、階段を2つ以上設けなければならない(令121条)

用途、規模 5階以下 6階以上
劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 客室、集会室のある階に必要 居室があれば必要
物品販売業を営む店舗 売り場のある階に必要(床面積の合計1,500㎡を超えるもの) 居室があれば必要
キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー等 客室のある階に必要 居室があれば必要
病院、診察所、

児童福祉施設等

主要構造部準耐火構造or不燃材料 主たる居室面積>100㎡の階 居室があれば必要
その他 主たる居室面積>50㎡の階 居室があれば必要
ホテル、旅館、共同住宅、下宿、寄宿舎 主要構造部準耐火構造or不燃材料 宿泊室の面積、共同住宅の居室面積、寄宿舎の寝室面積>200㎡の階 居室があれば必要
その他 宿泊室の面積、共同住宅の居室面積、寄宿舎の寝室面積>100㎡の階 居室があれば必要
その他の居室 主要構造部準耐火構造or不燃材料 居室面積>200㎡(避難階の直上階のみ400㎡) 居室があれば必要
その他 居室面積>100㎡(避難階の直上階のみ200㎡) 居室があれば必要

所定以上の建築物は、2つ以上の階段が必要です。表の内容を簡単に解説すると、6階以上の建築物であれば、基本的に階段が2つ必要で、5階以下の場合は、所定以上の場合に階段が2つ必要になるということです。

参考 【2以上の直通階段】必要になるか緩和できるかは『階数』で決まる

 

避難階段の設置

避難階段は、避難優れた直通階段のことで、『屋内避難階段』と『屋外避難階段』と『特別避難階段』の3種類ある(令122条)

避難階段は、以下の建築物の部分に必要になる

必要になる建築物 必要になる避難階段
  • 5階〜14階建ての建築物
  • 地下2階の建築物
  • 3階・4階を物品販売店舗※とした建築物
以下3つのいずれかの避難階段

  • 屋内避難階段
  • 屋外避難階段
  • 特別避難階段
  • 15階建て以上の建築物
  • 地下3階以下の建築物
  • 5階以上の階を物品販売店舗※とした建築物
  • 特別避難階段

※…床面積の合計が1500㎡を超えるものに限る(令121条1項一号により)

避難階段とは、直通階段の中でも、特の避難に優れた階段のことです。原則として、5階以上っや地下2階以下の建築物に必要になります。避難階段の構造等については、以下の記事で詳しく解説しています。

参考 【2以上の直通階段】必要になるか緩和できるかは『階数』で決まる

 

屋外への出口

避難階において、歩行距離は以下の数字以下とすること

各居室から主要な出入口まで『令120条の歩行距離×2』以下とすること

直通階段から主要な出入口まで『令120条の歩行距離』以下とすること

避難階においての歩行距離の制限です。簡単に言うと、直通階段の設置の歩行距離の、避難階パージョンと言ったところです。小規模な建築物であれば、特に意識せずとも適合することが多いですが、平面的に大きな建築物だと、うっかりオーバーしてしまうこともあるので注意しましょう。

参考 歩行距離とは?距離の測り方・緩和についてわかりやすく解説

 

屋上広場等

以下の建築物の部分は、高さ1.1m以上の手すり壁・さくを設けなくてはならない

  • 屋上広場
  • 2階以上の階にあるバルコニー
  • その他これに類するもの(避難施設及び避難経路の部分である階段の踊場及び吹抜きに面した廊下)

バルコニー等の手すりは、落下防止の観点から、所定以上の高さが必要です。これも実は避難規定の項目です。

逆に言うと、避難規定の対象ではない建築物は、このバルコニーの手すりの高さの規定も適用されないということです。

参考 【階段手すり】設置が必要な法的根拠と手すりの高さの基準について

 

排煙設備の設置

以下の建築物については、建築物の全ての部分または一部の居室に対して排煙設備が必要

建物全体に排煙設備が必要 建物の一部の居室に排煙設備が必要
  • 法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物で延べ面積が500m2を超えるもの
  • 階数が3以上で延べ面積が500m2を超える建築物
  • 第116条の2第1項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室
  • 延べ面積が1,000m2を超える建築物の居室で、その床面積が200m2を超えるもの

排煙設備の特徴は、建築物の全ての部分に必要なんか、建築物一部居室に必要なのかが、必要になる条件で異なることです。

建築物全体に必要になると、トイレなどにも必要と解釈されるので、なかなか厄介です。ただし、基本的には排煙設備には多くの緩和が用意されているので、こちらを駆使して適合させていく形になります。緩和についても記事にしていますので、合わせて確認をしてみてください。

参考 排煙設備が必要な建築物について。廊下などの非居室も必要?

排煙設備の免除、緩和する方法【排煙告示とだたし書きの使い方】

 

非常用の照明装置の設置

非常用の照明装置は、以下の建築物の部分に設置が必要

〈非常用照明が必要な建築物の部分〉
法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物の居室 その避難経路(廊下、階段)
階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物の居室
第116条の2第1項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室
延べ面積が1000㎡を超える建築物の居室

非常用の照明装置とは、予備電源を備えている照明装置の事です。非常時は、停電になり電気がつかなくなってしまうこともあります。電気が付いていないと、円滑に避難ができないことはなんとなく想像が付きますよね。そこで、建築基準法では、停電になっても使用できる照明装置の設置を義務付けています。

非常用の照明装置については、緩和も用意されているので、合わせて確認してみてください。

参考 非常用照明の設置基準と検討方法【建築基準法の基準を解説】

【非常用照明の緩和】わかりやすくまとめた【免除】

 

非常用の進入口の設置

階数が3以上の建築物建築物の高さ31m以下にある3階以上の部分には非常用の進入口の設置が必要

非常用の進入口は、消防隊員が建築物に進入するための開口部です。よって、基本的には在館者が自力で避難が困難となる階数が3以上の部分に必要になります。なお、31mを超える部分には非常用の進入口は不要です。この理由は、単純に、消防車のはしごが届かないからと言われています。

非常用の進入口の代わりとして、代替進入口というものもあります。そちらについては、下記で詳しく解説しています。

参考 代替進入口の設置基準は?|10mの測定方法やサイズについて解説

 

敷地内通路

屋外への出口・屋外避難階段』から道(公園・広場その他の空地を含む)に通ずる以下の幅員を有する通路を確保すること

階段及び面積 通路の幅員
階数が3以下で延べ面積が200㎡未満 90 ㎝以上
上記以外 1.5m以上

在館者の安全を確保するためには、建築物からの避難だけではありません。安全に、道路などの安全性がある程度担保された部分までの避難が必要と考えられています。そこで、建築物から道路等までの通路の幅員についての定めがあります。

 

建築基準法で『避難規定』を確認する

最後に、避難規定についての法文である、建築基準法35条を確認してみましょう!

建築基準法35条

別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が1000㎡をこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火せん、スプリンクラー、貯水そうその他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。

まとめ

✔️避難規定の適用を受けるのは、以下の建築物

  • 別表第1(一)項から(四)項に定める特殊建築物
  • 階数が3以上の建築物
  • 採光無窓・排煙無窓を有する建築物
  • 延べ面積が1000㎡を超える建築物

✔️避難規定は以下の規定

  • 廊下の幅(令119条)
  • 直通階段の設置(令120条)
  • 2以上の直通階段(令121条)
  • 避難階段の設置(令122条)
  • 屋外への出口(令125条)
  • 屋上広場等(令126条)
  • 排煙設備の設置(令126条の2)
  • 非常用の照明装置の設置(令126条の4)
  • 非常用の進入口の設置(令126条の6)
  • 敷地内通路(令128条、令128条の2)
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