建築基準法

2方向接道の道路斜線検討は緩和では無いみなし規定です!【法第56条第6項】

細かい事で申し訳ないのですが、2A緩和は緩和じゃないんです!

道路斜線の検討をする時に2以上の道路に接道している場合「2方向道路緩和」で検討するという事をお話しされる方がいます(業界の中では2A緩和と呼ばれています)

また、解説サイトでも「2A緩和」、「2道路緩和」など、緩和緩和と言われてはいますが、

 

厳密には緩和ではありません、みなし規定です。

そもそも、緩和とみなす規定の違いは何か、また2方向道路に接道していた場合の不利になる状況をご説明します

 

2方向以上の道路がある場合の道路斜線の考え方おさらい

道路に2方向接道している場合、道路幅員の狭い方の道路は前面道路の広い方の道路の幅員を有するものとしてその幅員の2倍且つ35メートルの範囲内において適用できます。

さらに、狭い方の道路の中心から10m以降も広い方の道路の幅員を有するもの適用することができます。

 

文字で説明してもさっぱりだと思いますので、図で確認しましょう。

もっと詳しく知りたい方は以下の記事から確認ください。

 

なぜ緩和ではなく、みなし規定なのか

どうして、緩和じゃ無いの?
理由は法文を見ればわかるよ!

それは法文に“みなす”って書いてあるからです。

 

建築基準法施行令第132条

建築物の前面道路が2以上ある場合においては、幅員の最大な前面道路の境界線からの水平距離がその前面道路の幅員の2倍以内で、かつ、35m以内の区域及びその他の前面道路の中心線からの水平距離が10mをこえる区域については、すべての前面道路が幅員の最大な前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。

2  前項の区域外の区域のうち、2以上の前面道路の境界線からの水平距離がそれぞれその前面道路の幅員の2倍(幅員が4m未満の前面道路にあつては、10mからその幅員の1/2を減じた数値)以内で、かつ、35m以内の区域については、これらの前面道路のみを前面道路とし、これらの前面道路のうち、幅員の小さい前面道路は、幅員の大きい前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。 

3  前2項の区域外の区域については、その接する前面道路のみを前面道路とする。

 

みなすって書いてありますよね?

そうなってくると、他の条文がなんて書いてあるのか気になるところですよね。

では、正真正銘の緩和規定である、後退緩和を見てみましょう。

 

 

建築基準法第56条2項

前面道路の境界線から後退した建築物に対する前項第一号の規定の適用については、同号中「前面道路の反対側の境界線」とあるのは、「前面道路の反対側の境界線から当該建築物の後退距離(当該建築物地盤面下の部分その他政令で定める部分を除く。から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものをいう。)に相当する距離だけ外側の線」とする。

違いますよね?法文ってたったこれだけの差で緩和かみなし規定なのか変わってくるのです。

「みなす」という表現は、ある事実があった時に当然のようにその事実を認める、という意味を指します。

緩和とみなし規定、何が違うのか

選択できるのは緩和、選択できないのがみなし規定

緩和規定 使うかどうか選択できる
みなし規定 使うかどうか選択できない

緩和は任意で選択をすることができます。

緩和を使ってもokですし、使わなくてももちろんokです。

状況に応じて緩和を利用しないという事も可能です。

後退緩和なんかは、外構の制限が出てきてしまうので適合していたらわざわざ緩和を利用しませんよね。

 

ところが、みなし規定についてはある事実があった時に当然のようにその事実を認める、つまり任意の選択はできません。

2方向道路があった時点でこちらの意思は関係無く強制して法の適用がされるのです。

 

違いが出てわかりやすいのは道路斜線天空率の時

天空率適用の時、みなし規定である2方向道路緩和規定である後退緩和を比べてみましょう。

 

まず、後退緩和を天空率で利用するとき、後退緩和を利用しないという事がよくあると思います。

これは利用しないという選択をしているからです。

ここで、後退緩和を利用しない方が不利側検討だから、適合が明らかだから利用しなくてもいいのでは?と思う方もいると思うのですがそうとも言い切れません。

後退緩和は後退部分の適合建物の領域が減少するので複雑な天空率の検討においては必ずしも不利側検討とは言い切れないのです。

 

では、みなし規定の2Aはどうでしょうか。

天空率の時、2方向に道路があった場合必ず2方向道路の規定を適用させていませんか。

例えば、以下の敷地だと3箇所に分けて検討をしているのではないでしょうか。(説明をわかりやすくする為にBの中心からの10mは省略)

もし2方向道路の規定を無視していた場合は審査機関から指摘を受けませんか?

2方向道路の場合、不利に可能性があるのは天空率

2方向道路の規定は明らかに斜線が有利になるのだから、適用していた方がいいに決まっているし、別に問題ではない!と思う方もいるかと思いますが、この2方向道路の規定を適用することによって不利になる規定もあるのです。

それは、先ほども話に少し出てきた、天空率です。

 

天空率の場合、幅員が異なる場合は領域を分けなくてはなりません。

そこで2方向道路の規定をしてみた場合としなかった場合の領域の差を比べてみてください。

一目瞭然ですよね?

天空率というのは、領域をどれだけ広く見ることができるかという所で、数値が大きく変わってきます。

ここで、左の狭い領域に建物の高い部分がきてしまった場合は、もしかしたら2方向道路の方が不利になるという事もあり得るのです。

 

まとめ:みなし規定と緩和の違いを整理すべし

法文の読み方ってこんな若干の表現の差で強制なのか任意なのか分かれるなんて難しいですよね。

ちなみに、同じみなす規定で他にも高低差1m以上の時に適用する高低差緩和(緩和って言っちゃった)があります。緩和規定は他には12m緩和がありますね。

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』