建築基準法

2方向接道の道路斜線検討は、緩和ではく『みなし規定』です!

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申請先から『2A(2方向道路)緩和について図書に記載してください』って言われたけど…

緩和を使わないなら、書かななくていいんじゃないの?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

2A(2方向道路)は『緩和』ではなく、『みなし規定』です

緩和ではないので、図書には基本的に書く必要があります

緩和とみなし規定って何が違いのか?

今回の記事では、わかりやすく解説していきます!(X:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
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著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

2A(2方向道路)とは?

2A(2方向道路)とは、敷地の一部分について、狭い幅員ではなく、広い道路の幅員とみなして道路斜線を適用すること

敷地の一部分とは?

・2A(=広い方の道路幅員A×2)かつ、35m以内の部分

・狭い方の道路中心から10mを超える部分

道路斜線は、基本的に、幅員が広い道路の方が有利です。そこで、2方向の道路に接している敷地は、狭い幅員の道路も、広い幅員の道路とみなすことができるというものです。

文字で説明してもさっぱりだと思いますので、図で確認しましょう。

詳しくは、以下の記事で解説しています。

なぜ緩和ではなく、みなし規定なのか

2A(2方向道路)は、緩和ではなく『みなし規定』なので、適用するかどうか設計者は選べない

「みなす」という表現は、ある事実があった時に当然のようにその事実を認める、という意味を指します。

どうして、緩和じゃ無いの?
それは法文に『〜とみなす』『〜とする』って書いてあるからです!

建築基準法施行令132条

建築物の前面道路が2以上ある場合においては、幅員の最大な前面道路の境界線からの水平距離がその前面道路の幅員の2倍以内で、かつ、35m以内の区域及びその他の前面道路の中心線からの水平距離が10mをこえる区域については、すべての前面道路が幅員の最大な前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。

2  前項の区域外の区域のうち、2以上の前面道路の境界線からの水平距離がそれぞれその前面道路の幅員の2倍(幅員が4m未満の前面道路にあつては、10mからその幅員の1/2を減じた数値)以内で、かつ、35m以内の区域については、これらの前面道路のみを前面道路とし、これらの前面道路のうち、幅員の小さい前面道路は、幅員の大きい前面道路と同じ幅員を有するものとみなす。 

3  前2項の区域外の区域については、その接する前面道路のみを前面道路とする。

ご覧いただいた通り、みなすって書いてありますよね?

じゃあ、緩和規定についてはどう書いてあるの?
緩和規定の場合は、ちゃんと法文に『〜とすることができる。』と書かれてます。例えば、建築基準法56条4項などが該当します!

建築基準法56条4項

前項に規定する建築物で前面道路の境界線から後退したものに対する同項の規定の適用については、同項中「前面道路の反対側の境界線」とあるのは「前面道路の反対側の境界線から当該建築物の後退距離(当該建築物(地盤面下の部分その他政令で定める部分を除く。)から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものをいう。以下この表において同じ。)に相当する距離だけ外側の線」と、「前面道路の幅員に」とあるのは「、前面道路の幅員に、当該建築物の後退距離に二を乗じて得たものを加えたものに」とすることができる。

たったこれだけの違いですが、法文で区別されているのです。

後退緩和はみなし規定?

法文を読んで思ったんだけど…後退緩和も語尾が『〜とする』だからみなし規定だよね?でも、後退緩和は使っていないこともあるような…

後退緩和も法文上はみなし規定です。ただし、その後退距離は設計者が選択できます。だから、後退緩和0とすれば、後退緩和なし、とも判断できます

だから、実務で見たときは、後退緩和は緩和規定っぽく見えると思います。ただ、法文の書き方的には、みなし規定です。念のために合わせて覚えておきましょう。

緩和規定とみなし規定、何が違うのか

緩和規定とみなし規定の違いとは?

緩和規定 使うかどうか選択できる
みなし規定 使うかどうか選択できない

緩和は任意で選択をすることができます。緩和を使ってもokですし、使わなくてももちろんokです。状況に応じて緩和を利用しないという事も可能です。

ところが、みなし規定についてはある事実があった時に当然のようにその事実を認める、つまり任意の選択はできません。

違いがわかりやすいのは『道路斜線天空率』

天空率適用の時、みなし規定である2方向道路について確認していきましょう。

天空率の時、2方向に道路があった場合必ず2方向道路の規定を適用させなくてはなりません。

例えば、以下の敷地だと3箇所に分けて検討をしているのではないでしょうか。(説明をわかりやすくする為にBの中心からの10mは省略)

もし2方向道路の規定を無視していた場合は審査機関から指摘を受けませんか?

でもさ、普通に考えたら、2方向道路を使った方が有利になるんじゃないの?
いえ!天空率の場合は、2方向道路を使うと、検討すべき領域が狭くなって、不利になることもあります…でも、みなし規定なので、絶対に使わなくてはならないのです…!

天空率の場合、幅員が異なる場合は領域を分けなくてはなりません。

そこで2方向道路の規定をしてみた場合としなかった場合の領域の差を比べてみてください。

2方向道路に接していない場合 2方向道路に接している場合

一目瞭然ですよね?

天空率というのは、領域をどれだけ広く見ることができるかという所で、数値が大きく変わってきます。

ここで、左の狭い領域に建物の高い部分がきてしまった場合は、もしかしたら2方向道路の方が不利になるという事もあり得るのです。

まとめ:みなし規定と緩和の違いを整理すべし

✔️建築基準法には、みなし規定が存在する

✔️みなし規定とは、ある事実があった時に当然のようにその事実を認める、という意味

✔️道路斜線適用の2方向道路はみなし規定なので、使うかどうか選択できないず、絶対に適用する必要がある

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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