延焼ライン(延焼のおそれのある部分)の定義、防火の基本と緩和

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本記事は、2026年現在、施行中の最新の建築基準法・関係法令に基づいて解説しています。
※当該規定に関して2026年時点で改正がない場合も、現行法令を前提としています。

元・指定確認検査機関員(審査実績5,000件超)、著書2冊(累計2万部)、日経アーキテクチャー「著者に聞く」掲載
実務者目線で建築法規を解説しています
[▶︎筆者プロフィール(経歴・実績)]

結論(まずはここだけ)

延焼ライン(延焼のおそれのある部分)とは、隣家の火災の影響を直接受けたり輻射で延焼するおそれのある部分のこと。隣地境界線・道路中心線等から1階3m以下、2階以上5m以下が対象。公園・川・耐火構造の壁等に面する部分や、耐火構造の袖壁設置、大臣認定基準への適合により緩和が受けられる。該当すると法2条(耐火・準耐火建築物)、法23条(屋根不燃化区域)、法27条(特殊建築物)、法61条(防火・準防火地域)の規制を受ける。

この記事でわかること

  • 延焼ライン(延焼のおそれのある部分)の定義と、境界線からの距離(1階3m以下・2階以上5m以下)
  • 水路・公園・線路敷等に面する場合や、地階・敷地内複数棟の場合の延焼ラインの考え方
  • 延焼ラインの2つの緩和方法(耐火構造の袖壁の設置/国土交通大臣が定める基準への適合)
  • 延焼ラインに該当すると影響を受ける4つの法文(法2条・法23条・法27条・法61条)とその規制内容
そぞろ

延焼ラインは、実務でも建築士試験でもほぼ100%出てくる、基準法の基本中の基本の用語。ただ、結構難しいんですよね…。
今回の記事では、わかりやすく解説しますのでご安心ください!

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『延焼ライン(延焼のおそれのある部分)』とは

『延焼ライン(延焼のおそれのある部分)』とは隣家の火災の影響を直接うけたり、火災の輻射により延焼を受けるおそれのある部分のこと

建築物に火災が発生すると、その建築物だけでなく、周囲の建築物に延焼する可能性があることは容易に想像が出来ますよね。

その隣地から延焼する可能性がある建築物の部分のことを『延焼ライン(延焼のおそれのある部分)』と建築基準法では定義しています。

『防火地域、準防火地域における住宅の延焼ラインで気を付けること。/NEGAMi』より引用

延焼ラインの『具体的な部分』とは?

延焼ライン(延焼のおそれのある部分)は、以下の境界から、1階の場合は3m以下、2階以上の場合は5m以下の部分

  • 隣地境界線
  • 道路中心線
  • 敷地内に2つ以上の建物があり、2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超える場合、外壁同士の中心線

これ以外にも、『水路等がある場合の延焼ライン』と『敷地内に建築物が2棟以上ある場合の延焼ライン』の考え方はそれぞれ異なるので、確認していきましょう!

地階の場合、延焼ラインは発生するか?

法文に明記はない。ただ一般的には、地階であっても延焼ラインは発生するとの取り扱いが多数ある。その場合は、1階と同様に、地階部分は3m以下の部分となる

『水路等がある場合』の延焼ライン

下記に定める防火上有効な部分には、延焼ラインの緩和がある

この部分に該当するとどうなるの?

延焼ラインの範囲が狭くなったり、面する部分は延焼ライン免除されたりします!

防火上有効な空地の種類緩和内容
里道・農道・臨港道路など(公共団体が所有・管理)里道などの中心線から延焼ラインを適用
10m未満の幅員の水路・都市下水路など(公共団体が所有・管理)水路などの中心線から延焼ラインを適用
水面・10m以上の幅員の水路(川・海)面する部分は延焼ライン免除
線路敷(駅舎等駅構内に面する部分は除く。)面する部分は延焼ライン免除
公園・広場など面する部分は延焼ライン免除

『敷地内に建築物が2棟以上ある場合』の延焼ライン

敷地内に2つ以上の建物があり、2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超える場合、外壁同士の中心線からも延焼ラインが発生

ここで、注意していただいたいのは、あくまで2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超える場合のみということです。つまり、2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超えない場合は、延焼ラインは発生しません。

でも、例外もあります!詳しくみていきましょう!

延べ面積が500㎡以上の場合における附属建築物の取り扱い

以下の附属建築物で『主要構造部が不燃材料で造られたもの』は、延焼のおそれのある部分が発生しない

  • 自転車置場
  • 平家建ての小規模な物置※(ゴミ置き場を含む)
  • 受水槽上屋
  • 浄化槽の上屋
  • ポンプ室

※…小規模な物置の開口部については、法2条九号の二ロに規定する防火設備を設けること。

この取り扱いは、 建築物の防火避難規定の解説で解説しているものです。詳しくは、書籍で確認してください。

ただし、主要構造部を不燃材料で造られたもの、という条件なども必ずチェックしてください!

延焼ライン(延焼のおそれのある部分)の『緩和』

延焼ラインの緩和は2つ

  • 耐火構造の袖壁を設置すること
  • 国土交通大臣に定められる基準に適合させること

それぞれの内容について確認してみましょう![

耐火構造の袖壁を設置すること

耐火構造の袖壁を計画した場合、延焼ラインが以下のように緩和されます。 建築物の防火避難規定の解説の内容を引用しますので、参考にしてください。

『建築物の防火避難規定の解説』より引用

国土交通大臣に定められる基準に適合させること

延焼ライン(延焼のおそれのある部分)には、国土交通大臣に定められる基準に適合させることで適用できる緩和規定があります。(法2条六号ロ)

大きく2つの緩和があり、
・建築物と隣地境界線が水平ではない場合の緩和
・敷地内の建築物同士の緩和

この場合、所定の緩和がされます。

建築物と隣地境界線が水平ではない場合の緩和敷地内の建築物同士の緩和
引用『建築基準法防火関係等告示の制定・改正に関する意見募集の結果について』より
引用『建築基準法防火関係等告示の制定・改正について(技術的助言)』より

こちらの緩和はかなりややこしいです。したがって、別記事でわかりやすく計算方法を解説していますので、確認ください。

延焼ラインに求められる『防火』の規定

でも、実際延焼ラインに該当すると、どうなるの?
どんな規制を受けるの?

具体的には、防火に関する規定が適用されます!
ここでは、いくつかの規制を紹介します!

延焼ライン(延焼のおそれのある部分)に該当すると受ける規制

  • 法2条(耐火建築物・準耐火建築物)
  • 法23条(屋根不燃化区域内の外壁)
  • 法27条(特殊建築物の開口部)
  • 法61条(防火地域・準防火地域内の開口部・外壁)

では、詳しく確認してみましょう。

法2条(耐火建築物・準耐火建築物)

耐火・準耐火建築物にするためには、主要構造部を耐火構造・準耐火構造にするだけでなく、延焼のおそれのある部分に『防火設備』が必要です。

耐火建築物・準耐火建築物にするためには、延焼ラインの考え方が切り離せないということです。

詳しくは、以下の記事で解説していますので確認してください。

法23条(屋根不燃化区域内の外壁)

法22条区域の延焼ラインにかかる木造の外壁は、『防火構造』にしなくてはなりません。

法27条(特殊建築物の開口部)

特殊建築物は、所定の規模を超える場合、主要構造部や外壁の開口部に規制を受けることとなります。

例えば、延焼ラインの外壁の開口部に『防火設備』が必要になったりします。

法61条(防火地域・準防火地域内の外壁)

防火地域・準防火地域内の延焼ラインの外壁の開口部に規制を受けることとなります。

防火地域・準防火地域内の建築物には延焼ラインの外壁の開口部に『防火設備』が必要です。

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まとめ

✔️延焼ラインとは、隣家の火災の影響を直接うけたり、火災の輻射により延焼を受けるおそれのある部分のこと

✔️延焼ラインの位置:以下の境界線等から建築物の1階で3m、2階以上で5m。

  • 隣地境界線
  • 道路中心線
  • 敷地内に2つ以上の建物があり、2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超える場合、外壁同士の中心線

✔️以下の防火上有効な部分に適用される緩和規定あり。

  • 広場
  • 川、水面
  • 線路敷
  • 耐火構造の壁これらに類する部分

✔️延焼ラインは、以下の規制の影響を受ける

  • 法2条(耐火建築物・準耐火建築物)
  • 法23条(屋根不燃化区域内の外壁)
  • 法27条(特殊建築物の開口部)
  • 法61条(防火地域・準防火地域内の開口部・外壁)

根拠法文

記事内では正確な情報発信を心がけていますが、最終的な判断は必ず原文(法令)を確認してください。実務で役立つ主要な条文を抜粋して掲載します。

建築基準法2条六号

根拠法文を確認する(クリックで展開)

延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線(ロにおいて「隣地境界線等」という。)から、一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、次のイ又はロのいずれかに該当する部分を除く。
イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分

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この記事を書いた人

そぞろのアバター そぞろ 建築法規作家

元・指定確認検査機関員
5,000件超の審査実績。著書2冊(学芸出版社)は累計1.9万部、SNSフォロワー4万人超。実務者目線で建築法規を解説。