単体規定

歩行距離とは?距離の測り方・緩和についてわかりやすく解説

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建築基準法で定められている歩行距離って何?

歩行距離はどうやって測ればいいの?

歩行距離について緩和はあるの?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

歩行距離は、大きく分けて『避難階』と『避難階以外の階』があり、それぞれ定められている距離が異なる

  • 避難階以外の階:居室の各部分から階段
  • 避難階:居室の各部分から主要な出入口と階段から主要な出入口

歩行距離の測り方は、原則として、申請先によって異なるので、申請先に確認が必要

歩行距離は内装制限をすることにより、緩和を受けることが可能

歩行距離は、避難階とそれ以外で距離が異なります。

今回の記事ではわかりやすく解説していきます!(twitter:sozooro

では、早速解説していきます。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

歩行距離の規制について

歩行距離は、『避難階』か『避難階以外の階』かで数値が異なる

単純に歩行距離と言っても、避難階なのか、それ以外の階なのかで異なります。避難階の定義については以下の記事を確認してください。

歩行距離の規制について

それぞれ以下の規定に適合させること

避難階 避難階以外の階
  • 各居室から主要な出入口まで『令120条の歩行距離×2』以下とすること
  • 直通階段から主要な出入口まで『令120条の歩行距離』以下とすること
各居室から直通階段まで
令120条の歩行距離』以下とすること
肝心の令120条の数値は以下の通りになります!
構造・居室の種類

主要構造部が準耐火構造、または不燃材料で造られている場合 その他

居室及び階段・廊下の壁と天井を準不燃材料にした場合 その他
(1) 令116条の2第1項一号にあたる開口部を有しない居室★

または

法別表第一(い)欄(四)項の特殊建築物の主たる用途に供する居室

40m 30m 30m
(2) 法別表第一(い)欄(二)項の特殊建築物の主たる用途に供する居室 60m 50m 30m
(3) (1)または(2)以外の居室 60m 50m 50m
※15階以上の居室にあっては、表の数値-10mとなる。(令120条第2項・第3項)
★該当する無窓居室については『【2023.4.1施行】無窓居室の歩行距離の緩和について』で詳しく解説
最短でも、30mなので、平面的に小さい建築物であればそこまで意識しなくても適合していることが多いです!

歩行距離の測り方について

距離ってどやって測ればいいの?

壁から数㎝離したりしてもいい?

斜めに測るのあり?

これに関しては、本当に申請先次第です!

基本的には申請先に確認した方がいいですが…

今回は参考となる根拠資料をご紹介します!

壁から数㎝離すことは可能か?

歩行距離を測るとき、スタートの部分を壁面から数㎝離すのは認められる可能性が高いです。なぜなら、『居室の仕上げ面人が建てる範囲』とはならないからです。人間には、厚みが存在するからです。

では具体的に何㎝離すことができるのか。ここでは、50㎝1mの根拠をお伝えします。

50㎝の根拠としては、『建築基準法及び同大阪府条例質疑応答集〔第6版〕』に記載されている為です。こちらの取扱いでは、壁面から50㎝離すことが可能との記載があります。

建築基準法及び同大阪府条例質疑応答集〔第6版〕』より引用

1mの根拠としては、『避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説』の解説書になります。避難安全検証法では、歩行距離の数値を用いて検討を行います。その歩行距離の距離は、壁面から1mを起点として良い旨が明記されています。

ただし、1mが認められるケースはかなり稀です。『避難安全検証法の算定に用いる歩行距離』と『通常の歩行距離』は全くの別物と解釈されることが多いからです。

斜めに測ることは可能か?

歩行距離を斜めに測ることは原則としては可能です。しかし、取り扱いなどでは斜めでは出来ないとしている場合もありますので、念の為に申請先に確認をした方がいいでしょう。

斜めの歩行距離を認めていない2つのケースについてご紹介します。

1つ目は、『建築基準法及び同大阪府条例質疑応答集〔第6版〕』に記載されている内容です。原則として、家具等を考慮して垂直・水平に移動しなくてはなりません。ただし、以下を確認していただくとわかりますが、家具等の配置によっては斜め歩行でもやむをえない場合があるとされているので、絶対では無いようです。

建築基準法及び同大阪府条例質疑応答集〔第6版〕』より引用

2つ目は、『避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例とその解説』に記載されています。先ほどもご紹介しましたが、避難安全検証法では、歩行距離の数値を用いて検討を行います。その歩行距離は斜めの移動は認められず、垂直・水平に移動しなくてはなりません。

歩行距離の緩和について

歩行距離は、『居室及び階段・廊下の壁と天井を準不燃材料にした場合』には、-10mされる

こちらは表で示した通りですが、内装制限をすることで、歩行距離の緩和を受けることが可能です。

居室だけでなく、その避難経路でもある階段・廊下についても内装制限の対象となりますので、注意するようにしましょう。

『歩行距離』を法文で確認する

歩行距離は、『建築基準法施行令120条』及び『建築基準法施行令125条』に記載されている

早速法文を確認してみましょう!

建築基準法施行令120条

建築物の避難階以外の階(地下街におけるものを除く。次条第一項において同じ。)においては、避難階又は地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。以下同じ。)を次の表の上欄に掲げる居室の種類の区分に応じ当該各居室からその一に至る歩行距離が同表の中欄又は下欄に掲げる場合の区分に応じそれぞれ同表の中欄又は下欄に掲げる数値以下となるように設けなければならない。

居室の種類
構造
主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られている場合
その他の場合
(単位 メートル)
(単位 メートル)
(一)
第百十六条の二第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室(当該居室の床面積、当該居室からの避難の用に供する廊下その他の通路の構造並びに消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除く。)又は法別表第一(い)欄(四)項に掲げる用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する居室
三〇
三〇
(二)
法別表第一(い)欄(二)項に掲げる用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する居室
五〇
三〇
(三)
(一)の項又は(二)の項に掲げる居室以外の居室
五〇
四〇

2 主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られている建築物の居室で、当該居室及びこれから地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の壁(床面からの高さが一・二メートル以下の部分を除く。)及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを準不燃材料でしたものについては、前項の表の数値に十を加えた数値を同項の表の数値とする。ただし、十五階以上の階の居室については、この限りでない。

3 十五階以上の階の居室については、前項本文の規定に該当するものを除き、第一項の表の数値から十を減じた数値を同項の表の数値とする。

4 第一項の規定は、主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸でその階数が二又は三であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階については、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が四十メートル以下である場合においては、適用しない。

建築基準法施行令125条

避難階においては、階段から屋外への出口の一に至る歩行距離は第百二十条に規定する数値以下と、居室(避難上有効な開口部を有するものを除く。)の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離は同条に規定する数値の二倍以下としなければならない。

2 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客用に供する屋外への出口の戸は、内開きとしてはならない。

3 物品販売業を営む店舗の避難階に設ける屋外への出口の幅の合計は、床面積が最大の階における床面積百平方メートルにつき六十センチメートルの割合で計算した数値以上としなければならない。

4 前条第三項の規定は、前項の場合に準用する。

まとめ

✔️歩行距離は、『避難階』と『避難階以外の階』についてそれぞれ以下の基準に適合させること

歩行距離の規制について

それぞれ以下の規定に適合させること

避難階 避難階以外の階
各居室から直通階段まで令120条の歩行距離』以下とすること
  • 各居室から主要な出入口まで『令120条の歩行距離×2』以下とすること
  • 直通階段から主要な出入口まで『令120条の歩行距離』以下とすること

令120条の距離は、30m〜60m(用途や規模ごとによって異なる)

✔️歩行距離の測り方は、以下の内容について原則として申請先と協議が必要

  • 起点を壁から数㎝離すことは可能か?
  • 斜め歩行で算定しても良いか?

✔️歩行距離は、居室及び避難経路(廊下・階段)を準不燃材料とすることで、➕10mの緩和を受けることが可能

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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