建築基準法

防火地域・準防火地域|違い・規制内容について解説

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防火地域・準防火地域ってなに?

防火地域・準防火地域に建築物を建てる場合、どんな規制があるのかな?

その他に、防火地域・準防火地域内に計画する場合の注意点はある?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

防火地域・準防火地域とは、主として都市計画で指定され、火災を防止するため建築制限が行なわれる地域

防火地域・準防火地域に建築物を計画する場合、『主要構造部』『延焼のおそれのある部分の防火設備』に対して規制を受ける

それぞれについて、以下の注意が必要となる

防火地域小規模な場合を除き、耐火建築物とする必要があるので、木造建築物の計画はしにくい

準防火地域上位互換である地区の指定がされることがある。その場合、準防火地域より厳しい規制を受けることとなる

防火地域・準防火地域の規制は、法文ではなかなかわかりにくいです!

そこで、今回の記事では、表などを用いてわかりやすく解説していきます!x:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

『防火地域/準防火地域』とは?

防火地域とは、都市計画で指定され、火災を防止するため特に厳しい建築制限が行なわれる地域である

準防火地域とは、都市計画で指定され、火災を防止するため建築制限が行なわれる地域である

防火地域、準防火地域どちらも都市計画によって決定される地域です。火災が発生した場合に、被害や影響が大きい地域に指定されています。

ちなみに、建築基準法によって指定される区域もあり、法22条区域と言われています。法22条区域は、防火地域・準防火地域以外に指定される区域のことです。詳しくは、以下の記事で解説しています。

『防火地域』と『準防火地域』の違いは?

結局、防火地域と準防火地域って何が違うの?

単純に、防火地域の方が準防火地域よりも規制が厳しい

後程ご説明しますが、あらゆる規制において、防火地域の方が準防火地域より厳しい規制を受けます。

建築基準法としては、『防火地域の方が厳しい』と区別しておけば、十分です!

防火地域/準防火地域の『建築制限』とは?

防火地域/準防火地域の建築制限

以下2つの基準に適合させること

  1. 主要構造部を所定の基準に適合させること
  2. 延焼のおそれのある部分(延焼ライン)に防火設備を設けること

防火地域・準防火地域の場合、上記2つ規制を満たす必要があります。②の条件である、延焼ラインと防火設備については、以下の記事で確認してください。

実は、防火地域と準防火地域は、②の延焼ラインの防火設備の規制は共通です。異なるのは、①の主要構造部に関する規制のみです!

主要構造部の規制について確認していきましょう。

防火地域の主要構造部の規制

防火地域の主要構造部の規制

防火地域(階数が地階を含む
100㎡以下 100㎡超
3階建て以上 耐火建築物等 耐火建築物等
2階建て以下 凖耐火建築物等 耐火建築物等

耐火建築物等→耐火建築物又は令136条の2第一号ロに適合させた建築物
準耐火建築物等
→凖耐火建築物又は令136条の2第二号ロに適合させた建築物

 

防火地域内に計画する建築物は、小規模な建築物を除き、耐火建築物としなくてはなりません。また、小規模な建築物であっても、少なくとも準耐火建築物としなくてはなりません。耐火建築物及び準耐火建築物については、以下の記事を確認ください。

耐火建築物『等』、準耐火建築物『等』と書いてある通り、一応、耐火建築物・準耐火建築物以外で計画することもできますが…

正直、あんまり計画しないです。

強いていうなら、準耐火建築物『等』はたまに計画することがありますが、開口部の面積制限など、規制が複雑です。

準耐火建築物『等』である開口部制限などの規制は、以下の書籍がわかりやすいので、確認してみてください。

準防火地域の主要構造部の規制

凖防火地域の主要構造部の規制

凖防火地域(階数が地階を含む
500㎡以下 500㎡超1500㎡以下 1500㎡超
4階建て以上 耐火建築物等 耐火建築物等 耐火建築物等
3階建て 凖耐火建築物等 凖耐火建築物等 耐火建築物等
2階建て以下 屋根・外壁等を所定の基準に適合(後述) 凖耐火建築物等 耐火建築物等
耐火建築物等→耐火建築物又は令136条の2第一号ロに適合させた建築物
準耐火建築物等
→凖耐火建築物又は令136条の2第二号ロに適合させた建築物

 

凖防火地域内に計画する場合、小規模な建築物(2階以下かつ500㎡以下)であれば、耐火建築物又は準耐火建築物以外の建築物で計画することも可能です。その場合、所定の条件に適合させる必要があります。

屋根・外壁等を所定の基準

屋根 市街地における通常の火災による火の粉防止性能
外壁・軒裏 木造 延焼のおそれのある部分を防火構造
木造以外

 

耐火建築物『等』、準耐火建築物『等』の定義については、防火地域の部分と同じです!

防火地域・準防火地域内の『塀』についての規制

防火地域・準防火地域内の塀についても規制がありますので、ご紹介します。

高さが2mを超える以下の塀・門は、『延焼防止上支障のない構造としなくてはならない

  • 防火地域内にある建築物に附属する門・塀
  • 準防火地域内にある木造建築物等に附属する門・塀

『延焼防止上支障のない構造』は、告示194号第7に記載されています。

正直、あんまり実務では登場しないのですが…建築士試験ではよく出るので紹介させていただきました!

防火地域の注意点

防火地域内に計画する場合、木造建築物の計画は難しいです。

なぜなら、木造建築物は、耐火建築物にしにくいから…

防火地域内の場合、2階以下かつ100㎡を除き、原則として耐火建築物としなくてはなりません。木造建築物は、耐火建築物で計画しやすくなってはいますが、まだまだ難しいのが現状です。

防火地域内に木造建築物を計画する場合は注意しましょう。

準防火地域の注意点

準防火地域の場合、地域によっては準防火地域の上位互換である地区の指定がされることがあります!そちらのチェックが必要です!

名称は、地域によって異なるのですが…準防火地域には、さらに上位の地区の指定がされていることがあります。

東京都の場合は、『新たな防火規制』という名称で、以下のような指定がされています。

新たな防火規制について(制度の概要)より引用

もちろん、東京都以外でもこのような区域の指定がされています。見落とすと、大変なことになるので、こういった区域があることが把握しておきましょう。

建築基準法で『防火地域/準防火地域の建築制限』を確認する

最後に、耐火建築物等とすべき特殊建築物の法文である、建築基準法第61条、令136条の2を確認してみましょう!
クリックで建築基準法61条を確認

建築基準法第61条

防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ二メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。

クリックで建築基準法施行令136条の2を確認

建築基準法施行令136条の2

法第六十一条の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。

一 防火地域内にある建築物で階数が三以上のもの若しくは延べ面積が百平方メートルを超えるもの又は準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が四以上のもの若しくは延べ面積が千五百平方メートルを超えるもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第百七条各号又は第百八条の三第一項第一号イ及びロに掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備(外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備をいう。以下この条において同じ。)が第百九条の二に規定する基準に適合するものであること。ただし、準防火地域内にある建築物で法第八十六条の四各号のいずれかに該当するものの外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間(建築物が通常の火災による周囲への延焼を防止することができる時間をいう。以下この条において同じ。)が、当該建築物の主要構造部及び外壁開口部設備(以下このロ及び次号ロにおいて「主要構造部等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
二 防火地域内にある建築物のうち階数が二以下で延べ面積が百平方メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が三で延べ面積が千五百平方メートル以下のもの若しくは地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートルを超え千五百平方メートル以下のもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第百七条の二各号又は第百九条の三第一号若しくは第二号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の主要構造部等がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
三 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートル以下のもの(木造建築物等に限る。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分が第百八条各号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備に建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、当該外壁開口部設備が加熱開始後二十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであること。ただし、法第八十六条の四各号のいずれかに該当する建築物の外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分並びに外壁開口部設備(以下このロにおいて「特定外壁部分等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該特定外壁部分等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
四 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートル以下のもの(木造建築物等を除く。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の外壁開口部設備がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該外壁開口部設備の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
五 高さ二メートルを超える門又は塀で、防火地域内にある建築物に附属するもの又は準防火地域内にある木造建築物等に附属するもの 延焼防止上支障のない構造であること。

防火地域・準防火地域で『他に注意したい規制』

今までのご説明は、主として法61条に定められた規制でした。ただし、他にも防火地域及び準防火地域に該当した場合、適用される規制がありますので、確認していきましょう。

防火地域・準防火地域内の増築の『確認申請』

防火地域、準防火地域内の場合、

10㎡以内の増築、改築、移転であっても確認申請が必要

確認申請は、防火地域、準防火地域外は、合計10㎡以内の増築・改築・移転の工事は確認申請不要です。

逆に言うと、防火地域、準防火地域内の場合は、どんなに小規模な増築・改築・移転行為であっても、確認申請が必要になります。場合によっては、床面積が増えない0㎡の増築であっても、確認申請が必要になる可能性があります。

確認申請については、以下の記事で確認してください。

防火地域・準防火地域内の3階建ての建築物の『竪穴区画』

防火地域・準防火地域の規制によって、主要構造部を準耐火構造した上で、地階・3階に居室がある場合、竪穴区画が必要

防火地域・準防火地域内に計画した場合、耐火建築物や準耐火建築物にするために、主要構造部を準耐火構造にしたりします。

実は主要構造部を準耐火構造にした場合、他の規制も適用になるのです。主として、『防火区画』の規制の適用を受けることとなります。

防火区画には、面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画があります。この中で、最も関わりがあるのが竪穴区画です。

竪穴区画は、以下の建築物に適用されます

以下の建築物で、地階又は三階以上の階に居室を有するもの

主要構造部を準耐火構造(または、耐火構造)とした建築物

令136の2-1-ロの基準適合建築物

令136の2-2-ロの基準適合建築物

主要構造部を準耐火構造にした上で、3階に居室があれば、竪穴区画が必要になります。

結構、簡単に規制を受けてしまうのです

したがって、防火地域・準防火地域の規制によって、主要構造部を準耐火構造にした建築物は、高確率で竪穴区画の適用を受けることとなります。よく注意するようにしましょう。

竪穴区画については、以下の記事を確認するようにしてください。

まとめ

✔️防火地域は、以下の通りで、小規模な建築物を除き、耐火建築物としなくてはならない

防火地域(階数が地階を含む
100㎡以下 100㎡超
3階建て以上 耐火建築物等 耐火建築物等
2階建て以下 凖耐火建築物等 耐火建築物等

耐火建築物等→耐火建築物又は令136条の2第一号ロに適合させた建築物
準耐火建築物等
→凖耐火建築物又は令136条の2第二号ロに適合させた建築物

✔️準防火地域内は、小規模であれば、耐火建築物・準耐火建築物以外でも計画可能

凖防火地域(階数が地階を含む
500㎡以下 500㎡超1500㎡以下 1500㎡超
4階建て以上 耐火建築物等 耐火建築物等 耐火建築物等
3階建て 凖耐火建築物等 凖耐火建築物等 耐火建築物等
2階建て以下 屋根・外壁等を所定の基準に適合(後述) 凖耐火建築物等 耐火建築物等
耐火建築物等→耐火建築物又は令136条の2第一号ロに適合させた建築物
準耐火建築物等
→凖耐火建築物又は令136条の2第二号ロに適合させた建築物

 

 

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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