面積区画はどんな構造で区画すればいいの?
面積区画にはどんな緩和があるの?
面積区画は竪穴区画と兼用することは出来るの?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
床面積が大きい建築物に必要になる区画のこと
面積区画とは、防火区画の1つで、1時間準耐火構造の壁・床と特定防火設備で区画が必要になる
面積区画は、面積の倍読みの緩和や、所定の用途の適用除外などの規定がある
面積区画には、竪穴区画と兼用可能。その場合、水平区画をした方が計画しやすい
面積区画は、しかし、内容を整理してしまうとそこまで難しく感じないと思います。
今回の記事では、わかりやすく面積区画について解説していきます!(twitter:sozooro)
では、早速解説していきます。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
『面積区画』とは
4つある防火区画の1つ 面積区画とは、
建築基準法施行令112条により、建築基準法には防火区画が定められています。防火区画には4種類存在していて、①面積区画、②高層区画、③竪穴区画、④異種用途区画です。
この中に、面積区画があります。面積区画は、簡単に言うと床面積が大きい建築物に必要になる区画です。所定の床面積ごとに区画が必要になります。
その所定の床面積は、『1500㎡以内』『1000㎡以内』『500㎡以内』の3つに区分されています。
簡単に言うと、面積区画は『主要構造部を耐火構造』又は『準耐火建築物』にした建築物が区画の対象になるのですが…
その区分は『①何の規制によって』『②主要構造部を耐火構造or準耐火建築物にしたか』の2つが絡んでいるのです。
面積区画は、『①何の規制によって』の部分も関係があるので、他の防火区画よりややこしいです。複雑そうに見えますが…当ブログではそんな面積区画を簡単に考える方法をご紹介していますので、そちらも確認してみてください。
区画が必要になる建築物 | 区画面積 | 区画方法 | |
壁・床の構造 | 防火設備の種別 | ||
主要構造部を耐火構造とした建築物 準耐火建築物(任意準耐火) |
床面積≦1500㎡ | 1時間準耐火構造 | 特定防火設備※1 |
法21条・法27条・法61条・法67条により、準耐火構造を義務付けられた以下の建築物 準耐火建築物(1時間以上を除く) 準耐火建築物(ロ-1) |
床面積≦500㎡(防火上主要な間仕切壁も必要) | ||
法21条・法27条・法61条・法67条により、準耐火構造を義務付けられた以下の建築物 準耐火建築物(1時間以上) 準耐火建築物(ロ-2) |
床面積≦1000㎡ | ||
※1…以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、以下2つのいずれかと連動して自動閉鎖するもの ・煙感知器 ・熱煙複合式感知器 |
面積区画は、基本的には『水平区画』又は『鉛直区画』をします。ただ、基本的に『水平区画』で計画されることが多いです。なぜなら、水平区画にした場合、竪穴区画と兼用できるからです。
Q.『任意』で主要構造部を耐火構造又は準耐火構造にした場合は?
設計者が安全側として『任意で』主要構造部を耐火構造又は準耐火建築物にした場合はどうなるの?
任意で主要構造部を耐火構造又は準耐火建築物とした場合は、1500㎡以内の区画が必要
1000㎡や500㎡の区画は不要ですが、最低限の1500㎡以内の区画は必要になります。任意だからと言って、面積区画を無くすことが出来ません。
Q.『主要構造部をその他』にすれば、面積区画は不要?
面積区画(令112条)は不要です。その代わり、防火壁(法26条)の設置が必要になります
主要構造部を『その他』にした場合、主要構造部をその他にすれば、面積区画は不要です。しかし、防火壁(法26条)は必要になります。防火壁(法26条)は延べ面積が1000㎡を超え、耐火建築物・準耐火建築物以外の建築物に必要になります。
だから、主要構造部をその他にしたからと言って、区画の話が全くないということではありません。注意したいですね。
面積区画の『区画方法』について
面積区画の区画方法について
区画面積 | 区画方法 | |
壁・床の構造 | 防火設備の種別 | |
床面積≦1500㎡ | 1時間準耐火構造 | 特定防火設備※1 |
床面積≦500㎡(防火上主要な間仕切壁も必要) | ||
床面積≦1000㎡ | ||
※1…以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、以下2つのいずれかと連動して自動閉鎖するもの ・煙感知器 ・熱煙複合式感知器 |
区画について注意すべきは2点です。
1点目は、500㎡区画のついては、『防火上主要な間仕切壁』も必要になります。単純に500㎡以内に区画だけではないので、注意が必要です。
2点目は、区画の開口部は、特定防火設備に加えて、閉鎖方式の指定があるということです。常時閉鎖又は随時閉鎖の性能が必要です。(令112条19項)具体的には、以下のいずれかに適合しているものにしなくてはなりません。
- 告示仕様(告示2563号)に適用していること
- 大臣認定(CAT-⚫︎⚫︎⚫︎)を取得しているものであること
単なる特定防火設備だと、火災が起こっても、開口部が開きっぱなしになる可能性があります。これだと、区画している意味がありませんよね。だから、閉鎖性能等についての指定があるのです。
配管の貫通について
所定の措置をしなくてはならない 防火区画に配管等を貫通する場合は、
防火区画には、原則として、配管等をは貫通させない方が良いです。しかし、やむを得ず貫通が必要な場合もあるかと思います。
その場合、所定の措置をしなくてはなりません。(建築基準法施行令112条20項、21項)
貫通する給水管・配電管等の措置
以下2つ全てに適合させること
①管と防火区画との隙間をモルタル等の不燃材料で埋めること
②以下3つのいずれか1つに適合させること
・貫通する部分からそれぞれ両端1m以内の距離にある管を不燃材料で造ること
・管の外径が、用途、材質その他の事項に応じて告示1422号が定める数値未満であること
・国土交通省の認定を受けたもの
貫通する換気、暖房、冷房の風道等の措置
特定防火設備であって、大臣が定めた構造又は大臣の認定したものであること
スパンドレルについて
スパンドレルの計画が必要です 面積区画を計画する場合、
スパンドレルとは、建築物の内部からではなく、外部からの回り込みによる延焼を防止するための規定です。
面積区画とぶつかる外壁は、そこを含む90㎝以上の外壁を準耐火構造とするか、50㎝以上突出した庇を準耐火構造とし、開口部があった場合は防火設備としなくてはなりません。
図
面積区画の『緩和』について
面積区画の緩和は、
- 共通で使える緩和
- 『1500㎡以内』『1000㎡以内』『500㎡以内』の3つで異なる緩和
の2つがある
面積区画には、大きく分けて2つ緩和があります。共通で使える緩和と区画によって異なる緩和です。それぞれの緩和を確認してみましょう。
共通で使える緩和
面積区画に対して共通で使える緩和
スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもの(自動式)を設けた部分は、その部分の床面積の1/2を区画面積から除くことが出来る
スプリンクラー等(自動式)を設けることで、その設置部分の1/2を区画面積から除くことが出来ます。しかし、あくまで設置部分に限るので、注意が必要です。
スプリンクラーを設置すれば、単純に倍読みの1500→3000㎡となるわけでは無いので、そこは注意してください!
種類に応じて使える緩和
面積区画の種類に応じて使える緩和
面積区画の種類 | 緩和 |
1500㎡区画 |
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1000㎡区画 |
以下に該当する建築物の部分で、天井・壁の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものは区画不要
|
500㎡区画 |
所定の用途や条件を満たした建築物の部分は、面積区画が不要になったり、区画されているとみなされます。
これらに類する用途に供する建築物の部分とは?
どんな用途?
大空間での利用や連続した機械設備等のために区画が行えない構造に該当する以下の用途がこれらに類する用途に供する部分に該当する
・ボーリング場
・屋内プール、屋内スポーツ運動場
・不燃性の物品を保管する立体的な倉庫
・卸売場、仲買売場等の売場、買い荷の保管または積み込み等の荷捌き場
(建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)p122より)
詳しくは、以下の書籍で確認をするようにしてください。
建築基準法で『面積区画』を確認する
建築基準法施行令112条
主要構造部を耐火構造とした建築物、法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が千五百平方メートルを超えるものは、床面積の合計(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)千五百平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ない場合においては、この限りでない。
壁
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間仕切壁(耐力壁に限る。)
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一時間
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外壁(耐力壁に限る。)
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一時間
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柱
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一時間
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床
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一時間
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はり
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一時間
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まとめ
✔️面積区画は、『①何の規制によって』『②主要構造部を耐火構造or準耐火建築物にしたか』によって、3つの種類に分かれている
区画面積 | 区画方法 | |
壁・床の構造 | 防火設備の種別 | |
床面積≦1500㎡ | 1時間準耐火構造 | 特定防火設備※1 |
床面積≦500㎡(防火上主要な間仕切壁も必要) | ||
床面積≦1000㎡ | ||
※1…以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、以下2つのいずれかと連動して自動閉鎖するもの ・煙感知器 ・熱煙複合式感知器 |
✔️面積区画には、以下の緩和を使うことができる
面積区画の種類 | 緩和 |
共通で使える緩和 | スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもの(自動式)を設けた部分は、その部分の床面積の1/2を区画面積から除くことが出来る |
1500㎡区画 |
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1000㎡区画 |
以下に該当する建築物の部分で、天井・壁の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものは区画不要
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500㎡区画 |