今回は『面積区画(防火区画)』についての記事です。
面積区画とは?
建築基準法令第112条第1項〜第6項に記載がある法文。床面積が大きい建物にかかる規制。建物内部を区画して、火災時に延焼を防ぐ事を目的としている。
防火区画(面積区画、高層区画、異種用途区画、竪穴区画)は、一級建築士の試験でもよく出てきますよね。そんな防火区画の中でもぶっちぎりで難しいのは、『面積区画』です。その理由、絡む法文が多いからです。
面積区画が必要な建築物は?その他の建築物はかかる?
面積区画が必要な建築物は、
『主要構造部』を『耐火構造 又は 準耐火構造』にした建築物
(ざっくり言うと!)
つまり、『その他の建築物』は面積区画の適用を受けないという事です。
その他の建築物は、防火区画の適用を受けない代わりに、『法第26条』という防火区画に似ている規制がかかります!
法第26条は、床面積が1000㎡を超える建築物にかかる規制です。ただし書きで、耐火建築物と準耐火建築物は除かれていますが、その他の建築物は適用を受ける事になります。『その他の建築物』なら区画の規制は受けないと思って見落とす人が多い法文なので、注意してください。
法第26条の法文を載せておきますので、確認して見てください。
延べ面積が1000㎡を超える建築物は、防火上有効な構造の防火壁によつて有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1000㎡以内としなければならない。ただし、次の各号の一に該当する建築物については、この限りでない。
一 耐火建築物又は準耐火建築物
二 卸売市場の上家、機械製作工場その他これらと同等以上に火災の発生のおそれが少ない用途に供する建築物で、イ又はロのいずれかに該当するもの
イ 主要構造部が不燃材料で造られたものその他これに類する構造のもの
ロ 構造方法、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合するもの
三 畜舎その他の政令で定める用途に供する建築物で、その周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあつて、その構造及び用途並びに周囲の状況に関し避難上及び延焼防止上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するもの
面積区画は、3種類ある
面積区画には、以下の3つの区画があります。
①1500㎡区画(令第112条第1項)
②500㎡区画(令第112条第4項)
③1000㎡区画(令第112条第5項)
3つの違いは、床面積を何㎡以内毎に区画するかの違いです。当然ですが、1500㎡区画が最も規制は緩いです。
さて、問題はここからです。
これが面積区画で一番難しいところです。この分類のせいで、面積区画は複雑になっていると言っても過言では無いのです。
でも、たった一つの事を念頭におけば、簡単に判断する事ができます。
その建築物は、どうして主要構造部を耐火、準耐火にしているのか?
建築基準法には、主要構造部を耐火構造にしなさい!準耐火構造にしなさい!と定められている法文があります。これをちゃんと把握していれば、簡単です。
そこで、その問題となる主要構造部を耐火構造、準耐火構造にしなさい!という法文を紹介します。
①法第21条(建物規模によってかかる規制)
②法第27条(特殊建築物の用途によってかかる規制)
③法第61条、67条(防火地域等によってかかる規制)
おそらく、上記の3つのうちのどれかに該当して、仕方がなく主要構造部を耐火構造、準耐火構造にする方が多いのではないでしょうか。
さらに、準耐火構造の場合、主要構造部の時間も大事です。
(45分準耐火や、1時間準耐火など)
それをしっかり思い浮かべながら、次の表で判別していただければ、簡単に①②③のどれに該当するか確認する事ができます。法文通り読むと超複雑に感じますが、ざっくり整理してみるとだいぶわかりやすくなります!
ざっくり言うと主要構造部が | 法文でちゃんと確認すると | |
①1500㎡区画 | ◆耐火構造
◆任意 耐火構造 ◆任意 準耐火構造 |
◆主要構造部を耐火構造とした建築物
◆法第2条第9号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物 ◆第136条の2第1号ロ若しくは第2号ロに掲げる基準に適合する建築物 |
②500㎡区画 | ◆法第21条、27条、61条、67条の規制による45分準耐火構造 | ◆法第21条第1項の規定により第109条の5第1号に掲げる基準に適合する建築物(通常火災終了時間が1時間以上であるものを除く。)とした建築物
◆法第27条第1項の規定により第110条第1号に掲げる基準に適合する特殊建築物(特定避難時間が1時間以上であるものを除く。)とした建築物 ◆法第27条第3項の規定により準耐火建築物(第109条の3第2号に掲げる基準又は1時間準耐火基準(第2項に規定する1時間準耐火基準をいう。以下同じ。)に適合するものを除く。)とした建築物 ◆法第61条の規定により第136条の2第2号に定める基準に適合する建築物(準防火地域内にあるものに限り、第109条の3第2号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものを除く。)とした建築物 ◆法第67条第1項の規定により準耐火建築物等(第109条の3第2号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものを除く。)とした建築物 |
③1000㎡区画 | ◆法第21条、27条、61条、67条の規制による1時間準耐火構造 | ◆法第21条第1項の規定により第109条の5第1号に掲げる基準に適合する建築物(通常火災終了時間が1時間以上であるものに限る。)とした建築物
◆法第27条第1項の規定により第110条第1号に掲げる基準に適合する特殊建築物(特定避難時間が1時間以上であるものに限る。)とした建築物 ◆法第27条第3項の規定により準耐火建築物(第109条の3第2号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものに限る。)とした建築物 ◆法第61条の規定により第136条の2第2号に定める基準に適合する建築物(準防火地域内にあり、かつ、第109条の3第2号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものに限る。)とした建築物 ◆法第67条第1項の規定により準耐火建築物等(第109条の3第2号に掲げる基準又は1時間準耐火基準に適合するものに限る。)とした建築物 |
面積区画の方法とは?
1時間準耐火構造の壁床 と 特定防火設備(常時閉鎖or随時閉鎖)で区画
※ただし、主要構造部が耐火構造の場合は 耐火構造の壁床 になる
区画の方法は、3種類とも全て同じです。
令第112条の法文の中で、第19項でやっと出てくるので見落としがちですが、ちゃんと確認してみてください!
第1項、第4項、第5項、第10項又は前項(18項)の規定による区画に用いる特定防火設備、
第7項、第10項、第11項又は第12項本文の規定による区画に用いる法第2条第9号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる十分間防火設備及び
第13項の規定による区画に用いる戸は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める構造のものとしなければならない。
一
第1項本文、第4項若しくは第5項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第7項の規定による区画に用いる法第2条第9号の二ロに規定する防火設備
次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法(昭和48年建設大臣告示2563号)を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
イ 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。
ロ 閉鎖又は作動をするに際して、当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。
ハ 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあつては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。
ニ 常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであること。
二
第1項第2号、第10項若しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備、第10項、第11項若しくは第12項本文の規定による区画に用いる法第2条第9号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる10分間防火設備又は第13項の規定による区画に用いる戸
次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法(昭和48年建設大臣告示2564号)を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
イ 前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。
ロ 避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。
面積区画はスパンドレル必要?
面積区画はスパンドレルが必要
面積区画には、スパンドレルが必要です。(スパンドレルについての解説記事はそのうち書くつもりです)
それは、令第112条16項、17項に記載がありますので、確認してみてください。
16
第1項若しくは第4項から第6項までの規定による1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁(第四項に規定する防火上主要な間仕切壁を除く。)若しくは特定防火設備、
第7項の規定による耐火構造の床若しくは壁若しくは法第2条第9号の二ロに規定する防火設備
又は
第11項の規定による準耐火構造の床若しくは壁若しくは同号ロに規定する防火設備に接する外壁については、
当該外壁のうちこれらに接する部分を含み幅90センチメートル以上の部分を準耐火構造としなければならない。
ただし、外壁面から50センチメートル以上突出した準耐火構造のひさし、床、袖壁その他これらに類するもので防火上有効に遮られている場合においては、この限りでない。
17
前項の規定によつて準耐火構造としなければならない部分に開口部がある場合においては、その開口部に法第2条第9号の二ロに規定する防火設備を設けなければならない。
まとめ:面積区画は複雑そうに見えるけど、ポイントを抑えれば簡単!
面積区画は法文がごちゃごちゃしているように見えますが、何㎡区画すればいいのか?については以下の手順で確認すると簡単になります。
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手順①計画している建物の主要構造部が耐火構造、準耐火構造だった場合、その法文でその要求があるのか確認する
↓
手順②準耐火構造だった場合、主要構造部の時間(45分?1時間?)を確認する
↓
手順③表に当てはめて確認する
主要構造部が | |
①1500㎡区画 | ◆耐火構造
◆任意 耐火構造 ◆任意 準耐火構造 |
②500㎡区画 | ◆法第21条、27条、61条、67条の規制による45分準耐火構造 |
③1000㎡区画 | ◆法第21条、27条、61条、67条の規制による1時間準耐火以上 |
こんな手順で確認すると楽ですよ!是非法文と合わせて読んでみてください。