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木造3階建て共同住宅を準耐火建築物で作る方法【徹底解説!】

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木造3階建て共同住宅を準耐火建築物で作りたいけど、出来るかな?

作る場合の条件を教えて欲しい!

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

3階建ての共同住宅は、原則として耐火建築物にする必要がある

ただし、所定の条件』を満たすことで、準耐火建築物(1時間)で計画することも可能

所定の条件は、大きく分けて3つあり、設計者が適合させやすいものを選択することが可能

木造3階建て共同住宅は、私自身が非常に苦労した規制です。正直、わかりにくい規制です。

でも、回の記事はわかりやすく噛み砕いて解説しているので、読んでいただければ、簡単に理解できると思います!twitter:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

『木造・3階建て・共同住宅』はなぜ計画が難しい?

一般的に、木造3階建て共同住宅は計画が難しいと言われています。

それは、共同住宅が特殊建築物で、建築基準法において厳しい規制を受けるからです

特殊建築物は、建築基準法の規制を強く受ける用途のことです。詳しくは、以下の記事で解説しています。

共同住宅が、特殊建築物で規制が強化されるのはわかったけど…どうして、共同住宅の中でも、『木造・3階建て』が難しいと言われているの?
それは、共同住宅の中でも、3階建てになると原則として『耐火建築物』にしなくてはならないからです。木造だと、耐火建築物で作るのは難しいですよね。

だから、木造・3階建て・共同住宅は計画が難しいのです。

木造3階建ての共同住宅を『準耐火建築物で作る方法』

3階建ての共同住宅は、耐火建築物としなくてはならない。

ただし、所定の基準を満たした場合は、準耐火建築物(1時間)で計画することも可能

これは、建築基準法27条が根拠となっています。所定の規模以上の特殊建築物は、耐火建築物等としなくてはなりません。詳しくは、以下の記事を確認してください。

基本的には、耐火建築物としなければなりません。しかし、所定の条件を満たした場合は、準耐火建築物(1時間)で計画することも可能です。準耐火建築物については、以下の記事を確認してください。

面白いのが…この所定の条件、3のパターンがあって、そこから一つを選ぶことが出来るんです!

だから、建築物の計画によって、より良い条件を設計者が任意で選ぶことが出来ます!

そちらの条件とは、以下の通りです。

3階建て共同住宅を準耐火建築物(1時間)とするための条件

パターン以下2つに適合させること

  • 共同住宅の各住戸に避難上有効なバルコニーを設けること
  • 周囲3m空地を設けること

パターン以下3つに適合させること

  • 主たる廊下・階段が直接外気に開放されたものであること
  • 共同住宅の各住戸の通路に面する開口部に、防火設備を設けること
  • 周囲3m空地を設けること

パターン以下4つに適合させること

  • 共同住宅の各住戸に避難上有効なバルコニーを設けること
  • 主たる廊下・階段が直接外気に開放されたものであること
  • 共同住宅の各住戸の通路に面する開口部に、防火設備を設けること
  • 上階延焼防止庇を設けること
この3つの計画から、一つを選んで適合させればOKです!

さらに、建築物の敷地が準防火地域の場合は、以下の条件も追加されます。

建築物の敷地が準防火地域の場合

3階の共同住宅の各住戸の開口部に防火設備またはスパンドレルを設けること

それぞれの条件の定義を確認して行きます。

ちなみに…計画している共同住宅が3階かつ200㎡未満の場合、もっとお手軽に計画できる適用除外があります!

もし該当しそうであれば、後程解説している適用除外も必ず確認してみてくださいね!

共同住宅の各住戸に避難上有効なバルコニーを設けること

避難上有効なバルコニーの定義

 バルコニーから容易に地上の安全な場所に到達することができるよう、次に掲げる基準に適合していること。

1)屋内からバルコニーに通じる出入口の幅、高さ及び下端の床面からの高さが、それぞれ、75㎝以上、1.2m以上及び15㎝以下であること。
2)バルコニーの奥行きが75㎝以上であること。
3)階段、斜路、避難はしご等が設置されているか、又は連続したバルコニーで他の直通階段等へ安全に避難できるものであること。
 屋内の在館者が有効に滞留し得る大きさとして、各宿泊室等の床面積の100分の3以上、かつ、2㎡以上の面積を有すること。
 床が耐火構造又は準耐火構造であること。

上記の避難上有効なバルコニーを、各住戸に設置しなくてはなりません。

計画のポイントは、ロの『バルコニーの必要な面積』ですね。

住戸の3/100以上かつ2㎡以上の面積が必要になりますので、注意ください!

主たる廊下・階段が直接外気に開放されたものであること

廊下が直接外気に開放されたもの

外壁面に直接外気が流通する高さ1m以上の開口部が火災時の煙を有効に排出できるように適切に設けられているもの

階段が直接外気に開放されたもの

階段の各階の中間部分に設ける直接外気に開放された排煙上有効な開口部で、次に掲げる基準に適合するもの

1) 開口面積が2㎡以上であること。

2) 開口部の上端が、当該階段の部分の天井の高さの位置にあること。ただし、階段の部分の最上部における当該階段の天井の高さの位置に500㎠以上の直接外気に開放された排煙上有効な換気口がある場合は、この限りでない。

主たる廊下及び階段においては、上記に定める開放されたものとしなくてはなりません。

開放された廊下や階段は、床面積にも算入されません。

しかし『床面積に算入されない開放性の定義』と、『3階建ての共同住宅を準耐火建築物にするための開放性の定義』は、全くの別物なのです!

あくまで、『3階建ての共同住宅を準耐火建築物にするための開放性の定義』は、先ほどご紹介した定義なので、混同しないようにしましょう。

上階延焼防止庇を設けること

上階延焼防止庇の定義

上階への延焼を防止するため、外壁面から40㎝以上突出した庇を設けること

ただし、開口部から高さ2m、幅は0.5m以上離れている場合を除く

上階への延焼を防止するため、庇を設けなくてはなりません。ただし、開口部と距離が離れている場合は、庇を設ける必要はありません。

こちらについては、わかりにくいと思いますので…以下の書籍に図解で解説されていますので、そちらで確認をしてみてください!

周囲3m空地を設けること

周囲3m空地と聞くと、単純に建築物の周囲に3mを確保しなければならないように感じます。しかし、実際に3m空地が必要になるのは以下の部分は『居室に設けられた開口部がある外壁面(道路に面する部分を除く)』です。

つまり、居室に開口部を設けている面のみ、3m空地を確保すればOKということです。

道路に多く面している敷地だと、適合させることは容易です。以下の図解の引用を確認してみてください。

用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規p202/学芸出版社より引用

告示の内容を確認する

3階建ての共同住宅を準耐火建築物で計画する方法は、『告示255号』に記載されています!ぜひ、そちらも確認してみてください。
クリックで告示255号を確認

告示255号

地階を除く階数が三で、三階を下宿、共同住宅又は寄宿舎の用途に供するもの(三階の一部を法別表第一(い)欄に掲げる用途(下宿、共同住宅及び寄宿舎を除く。)に供するもの及び法第二十七条第一項第二号(同表(二)項から(四)項までに係る部分を除く。)から第四号までに該当するものを除く。)のうち防火地域以外の区域内にあるものであって、次のイからハまでに掲げる基準(防火地域及び準防火地域以外の区域内にあるものにあっては、イ及びロに掲げる基準)に適合するもの 一時間準耐火基準に適合する準耐火構造とすること。
イ 下宿の各宿泊室、共同住宅の各住戸又は寄宿舎の各寝室(以下「各宿泊室等」という。)に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。ただし、各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられている場合においては、この限りでない。
ロ 建築物の周囲に幅員が三メートル以上の通路が設けられていること。ただし、次に掲げる基準に適合しているものについては、この限りでない。
(1) 各宿泊室等に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。
(2) 各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が、直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。
(3) 外壁の開口部から当該開口部のある階の上階の開口部へ延焼するおそれがある場合においては、当該外壁の開口部の上部にひさし等が防火上有効に設けられていること。
ハ 三階の各宿泊室等(各宿泊室等の階数が二以上であるものにあっては二階以下の階の部分を含む。)の外壁の開口部及び当該各宿泊室等以外の部分に面する開口部(外壁の開口部又は直接外気に開放された廊下、階段その他の通路に面する開口部にあっては、当該開口部から九十センチメートル未満の部分に当該各宿泊室等以外の部分の開口部がないもの又は当該各宿泊室等以外の部分の開口部と五十センチメートル以上突出したひさし等で防火上有効に遮られているものを除く。)に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。

3階かつ200㎡以下の共同住宅に使える緩和

近年の法改正により、所定の規模以下の共同住宅は、法27条(耐火建築物等とすべき特殊建築物)の規制の適用除外を受けることが可能となります。

法27条の規制の適用除外の条件

以下3つ全ての条件を満たすこと

階数が3

延べ面積200㎡未満

以下2つのどちらかの警報設備を設ける

  • 自動火災報知設備
  • 特定小規模施設用自動火災報知設備
この緩和を使う場合、準耐火建築物にする必要すらないので、選択肢としては有力です!

木造3階建ての共同住宅の『竪穴区画』について

3階建て共同住宅の竪穴区画は以下の通り

建築物の部分 竪穴区画の要or否
共同住宅の共用階段 竪穴区画が必要
3階以下かつ面積200㎡未満のメゾネット住戸内の住戸内階段 竪穴区画は不要

 

基本的に、主要構造部を準耐火構造にしていて、かつ、3階部分を居室としているので、竪穴区画は必要です。

ただし、所定の規模以下のメゾネットの住戸内階段のみ、免除できる可能性があります。詳しくは、以下の記事で確認をしてみてください。

木造3階建ての共同住宅の『階段の寸法』について

3階建て階段の寸法は以下の通り

階段の種類 階段の幅 蹴上 踏面
住戸内階段 75㎝以上 23㎝以下 15㎝以上
共用階段 直上階の居室の床面積>200㎡

又は

直階の居室の床面積>100㎡

120㎝以上 20㎝以下 24㎝以上
上記以外 75㎝以上 22㎝以下 21㎝以上

住戸内か、共用階段か、そして規模によっても、必要となる寸法は異なります。計画によって慎重に計画するようにしましょう。

共同住宅の設計に必須の書籍

住宅は、建築基準法の中でも扱いが特殊です。特に、その中でも3階建て共同住宅の設計難易度はかなり高いと言えるでしょう。

そこで、住宅の設計において絶対に使える書籍を今回発売しました!

共同住宅の建築法規の知識が0でも、もれなく、確実に建築法規の確認ができるように作らせていただきました。書籍の内容等については、以下の記事で紹介していますので、よかったら確認してみてください。

まとめ

✔️木造3階建て共同住宅は、原則として、耐火建築物にしなければならない

✔️ただし、所定の条件を満たすことで、準耐火建築物(1時間)として計画することも可能

✔️所定の条件とは、以下の中から選択する

パターン以下2つに適合させること

  • 共同住宅の各住戸に避難上有効なバルコニーを設けること
  • 周囲3m空地を設けること

パターン以下3つに適合させること

  • 主たる廊下・階段が直接外気に開放されたものであること
  • 共同住宅の各住戸の通路に面する開口部に、防火設備を設けること
  • 周囲3m空地を設けること

パターン以下4つに適合させること

  • 共同住宅の各住戸に避難上有効なバルコニーを設けること
  • 主たる廊下・階段が直接外気に開放されたものであること
  • 共同住宅の各住戸の通路に面する開口部に、防火設備を設けること
  • 上階延焼防止庇を設けること
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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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