延焼ラインに建築物がかかるとどうなるの?
延焼ラインの緩和について知りたい!
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
隣家の火災の影響を直接うけたり、火災の輻射により延焼を受けるおそれのある部分
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)とは以下の対策が必要になる
延焼ラインに建築物がかかると、- 開口部に防火設備が必要になる
- 防火構造にする必要がある
少しマニアックだけど告示の緩和がある
延焼ラインは、今回の記事では、わかりやすく解説しますのでご安心ください!(sozooro)
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指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
『延焼ライン(延焼のおそれのある部分)』とは
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)とは、隣家の火災の影響を直接うけたり、火災の輻射により延焼を受けるおそれのある部分のことです。建築物に火災が発生すると、その建築物だけでなく、周囲の建築物に延焼する可能性があることは容易に想像が出来ますよね。
その隣地から延焼する可能性がある建築物の部分のことを『延焼ライン(延焼のおそれのある部分)』と建築基準法では定義しています。
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延焼ライン(延焼のおそれのある部分)はどこの建築物の部分
以下の境界から、1階の場合は3m以下、2階以上の場合は5m以下の部分
- 隣地境界線
- 道路中心線
- 敷地内に2つ以上の建物があり、2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超える場合、外壁同士の中心線

延焼ラインが発生しない建築物とは?
延焼ラインは、発生しない、発生するという概念はありません。延焼ラインは、単なる位置を示しているものに過ぎません。
しかし、後ほどご紹介する延焼ラインの規制の影響を受けないという理由で、延焼ラインの影響を受けない建築物もあります。
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)の影響を受けない建築物
以下すべてに該当しない建築物
- 耐火建築物/準耐火建築物
- 法27条の適用を受ける特殊建築物
- 防火地域/準防火地域にある建築物
- 法22条区域に建てられた木造建築物
『水路等がある場合』の延焼ライン
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)には、防火上有効な部分に対する緩和規定があります。(法2条六号イ)
防火上有効な部分とは?
- 広場
- 川、水面
- 線路敷(建築物の防火避難規定の解説2016(第2版) p4)
- 耐火構造の壁これらに類する部分
防火上有効な空地の種類 | 緩和内容 |
里道・農道・臨港道路など(公共団体が所有・管理) | 里道などの中心線から延焼ラインを適用 |
10m未満の幅員の水路・都市下水路など(公共団体が所有・管理) | 水路などの中心線から延焼ラインを適用 |
水面・10m以上の幅員の水路(川・海) | 面する部分は延焼ライン免除 |
線路敷(駅舎等駅構内に面する部分は除く。) | 面する部分は延焼ライン免除 |
公園・広場など | 面する部分は延焼ライン免除 |

『敷地内に建築物が2棟以上ある場合』の延焼ライン
敷地内に2つ以上の建物があり、2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超える場合、外壁同士の中心線からも延焼ラインが発生します。

ここで、注意していただいたいのは、あくまで2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超える場合のみということです。つまり、2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超えない場合は、延焼ラインは発生しません。
補足:延べ面積が500㎡以上の場合における附属建築物の取り扱い
敷地内に建築物が2棟以上ある場合、その外壁同士の中心線からも延焼ラインが発生するとご説明しました。
ただし、例外があります。
以下の附属建築物で『主要構造部が不燃材料で造られたもの』は、延焼のおそれのある部分が発生しない
- 自転車置場
- 平家建ての小規模な物置※(ゴミ置き場を含む)
- 受水槽上屋
- 浄化槽の上屋
- ポンプ室
※…小規模な物置の開口部については、法2条九号の二ロに規定する防火設備を設けること。
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)の『緩和』
延焼ラインの緩和は2つ
耐火構造の袖壁を設置すること
国土交通大臣に定められる基準に適合させること
- 建築物と隣地境界線が水平ではない場合の緩和
- 敷地内の建築物同士の緩和
耐火構造の袖壁を設置すること
耐火構造の袖壁を計画した場合、延焼ラインが以下のように緩和されます。 建築物の防火避難規定の解説の内容を引用しますので、参考にしてください。
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国土交通大臣に定められる基準に適合させること
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)には、国土交通大臣に定められる基準に適合させることで適用できる緩和規定があります。(法2条六号ロ)
- 建築物と隣地境界線が水平ではない場合の緩和
- 敷地内の建築物同士の緩和
この場合、所定の緩和がされます。
建築物と隣地境界線が水平ではない場合の緩和 | 敷地内の建築物同士の緩和 |
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延焼ラインに求められる『防火』の規定
どんな規制を受けるの?
ここでは、いくつかの規制を紹介します!
延焼ライン(延焼のおそれのある部分)に該当すると受ける規制
- 法2条(耐火建築物・準耐火建築物)
- 法23条(屋根不燃化区域内の外壁)
- 法27条(特殊建築物の開口部)
- 法61条(防火地域・準防火地域内の開口部・外壁)
では、詳しく確認してみましょう。
法2条(耐火建築物・準耐火建築物)
耐火・準耐火建築物にするためには、主要構造部を耐火構造・準耐火構造にするだけでなく、延焼のおそれのある部分に『防火設備』が必要です。

耐火建築物・準耐火建築物にするためには、延焼ラインの考え方が切り離せないということです。
詳しくは、以下の記事で解説していますので確認してください。
法23条(屋根不燃化区域内の外壁)
法22条区域の延焼ラインにかかる木造の外壁は、『防火構造』にしなくてはなりません。
法27条(特殊建築物の開口部)
特殊建築物は、所定の規模を超える場合、主要構造部や外壁の開口部に規制を受けることとなります。
例えば、延焼ラインの外壁の開口部に『防火設備』が必要になったりします。
法61条(防火地域・準防火地域内の外壁)
防火地域・準防火地域内の延焼ラインの外壁の開口部に規制を受けることとなります。
防火地域・準防火地域内の建築物には延焼ラインの外壁の開口部に『防火設備』が必要です。
法文で確認する【建築基準法2条六号】
建築基準法では、用語の定義である『建築基準法2条六号』に記載されています。
建築基準法第2条六号
延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線(ロにおいて「隣地境界線等」という。)から、一階にあつては3m以下、2階以上にあつては5m以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、次のイ又はロのいずれかに該当する部分を除く。
イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分
まとめ
✔️延焼ラインとは、隣家の火災の影響を直接うけたり、火災の輻射により延焼を受けるおそれのある部分のこと
✔️延焼ラインの位置:以下の境界線等から建築物の1階で3m、2階以上で5m。
- 隣地境界線
- 道路中心線
- 敷地内に2つ以上の建物があり、2つの建築物の床面積の合計が500㎡を超える場合、外壁同士の中心線
✔️以下の防火上有効な部分に適用される緩和規定あり。
- 広場
- 川、水面
- 線路敷
- 耐火構造の壁これらに類する部分
✔️延焼ラインは、以下の規制の影響を受ける
- 法2条(耐火建築物・準耐火建築物)
- 法23条(屋根不燃化区域内の外壁)
- 法27条(特殊建築物の開口部)
- 法61条(防火地域・準防火地域内の開口部・外壁)