一般構造

住宅の居室の採光計算とは?【緩和はある?確認申請に記載が必要?】

住宅の居室って採光計算必要なの?

住宅の居室の採光計算の緩和ってないの?

住宅の居室の採光計算って確認申請に記載が必要なの?

納戸にしたら採光計算不要って言われたけど…ほんとに?

こんなお悩みに、答えます!

 

まずは結論から…

住宅の居室には原則として絶対に窓が必要

地階の居室や用途上やむを得ない居室の場合は採光計算は不要(ただし、他の規制を受けることも…)

住宅の居室の採光計算は、四号建築物であれば確認申請の図書に記載は不要

納戸は確かに採光計算不要(ただし、居室としては使えない)

住宅用途の鬼門って『採光計算』だと思います!

そこで、住宅の採光計算についてわかりやすく徹底解説します!(sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

住宅の居室には採光計算が必要な根拠

後ほど紹介する一部の居室は除き、住宅の居室は絶対に採光の窓が必要です。

絶対に?緩和とかないの?
緩和は無いです!住宅の居室の採光計算って結構厳しい規制なんですよ…

住宅の居室の採光計算は、以下の条件を満たす窓が必要になります。

住宅の居室の採光計算

居室の床面積×1/7<窓の面積×採光補正係数

採光補正係数などは、以下のページで詳しく解説していますので、確認ください。

住宅であっても、採光計算が不要な居室とは?

住宅の居室であっても、以下の居室の場合は、特別に採光計算が不要です。

住宅の居室であっても採光計算が不要な居室

  • 地階に設ける居室
  • 住指発153号に該当する居室(住宅の音楽練習室等)

住指発153号

1 温湿度調整を必要とする作業を行う作業室
次に掲げる居室は、法第28条第1項ただし書に規定する「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室」に該当するも のとする。
(1) 大学、病院等の実験室、研究室、調剤室等温湿度調整を必要とする実験、研究、調剤等を行う居室(小学校、中学 校又は高等学校の生徒用の実験室を除く。)
(2) 手術室
(3) エックス線撮影室等精密機器による検査、治療等を行う居室 (4) 厳密な温湿度調整を要する治療室、新生児室等
2 その他用途上やむを得ない居室
次に掲げる居室は、法第28条第1項ただし書に規定する「用途上やむを得ない居室」に該当するものとする。

(1) 開口部を設けることが用途上望ましくない居室
1) 大音量の発生その他音響上の理由から防音措置を講ずることが望ましい居室
住宅の音楽練習室リスニングルーム等(遮音板を積み重ねた浮き床を設ける等遮音構造であること並びに当該住 宅の室数及び床面積を勘案し、付加的な居室であることが明らかなものに限る。)
イ 放送室(スタジオ、機械室、前室等で構成されるものをいう。)
ウ 聴覚検査室等外部からの震動・騒音が診察、検査等の障害となる居室
2) 暗室、プラネタリウム等現像、映写等を行うため自然光を防ぐ必要のある居室(小学校、中学校又は高等学校の視聴 覚教室を除く。)
3) 大学、病院等の実験室、研究室、消毒室、クリーンルーム等放射性物質等の危険物を取り扱うため、又は遺伝子操 作実験、病原菌の取扱い、滅菌作業、清浄な環境の下での検査、治療等を行う上で細菌若しくはほこりの侵入を防ぐた め、開口部の面積を必要最小限とすることが望ましい居室
4) 自然光が診察、検査等の障害となる居室
ア 眼科の診察室、検査室等自然光が障害となる機器を使用する居室
イ 歯科又は耳鼻咽喉科の診察室、検査室等人工照明により診察、検査等を行う居室
(2) 未成年者、罹病者、妊産婦、障害者、高齢者等以外の者が専ら利用する居室で法第二八条第一項の規定の適用を 受けない建築物の居室に類する用途に供するもの
1) 事務室(オフィス・オートメーション室を含む。)、会議室、応接室、職員室、校長室、院長室、看護婦詰所(いわゆるナ ース・ステーション)等事務所における事務室その他執務を行う居室に類する用途に供する居室
2) 調理室、印刷室等飲食店等の厨房、事務所等の印刷室その他作業を行う居室に類する用途に供する居室(住宅の 調理室で食事室と兼用されるものを除く。)
3) 舞台及び固定された客席を有し、かつ、不特定多数の者が利用する用途に供する講堂等劇場、演芸場、観覧場、公 会堂、集会場等に類する用途に供する居室
4) 管理事務室、守衛室、受付室、宿直室、当直室等事務所等の管理室に類する用途に供する居室
5) 売店等物品販売業を営む店舗の売場に類する用途に供する居室

ご覧いただくとわかりますが、かなり特殊なので、あまり当てはまる居室はありません。

だから、よほどのことがない限り、住宅の居室には採光計算が必要ということになります!

住宅の居室の採光計算は、確認申請に不要?

四号建築物で建築士が設計したもの、つまり確認申請の特例が使える建築物に限り、採光計算は設計図書に記載不要です。

四号建築物で建築士が設計したもの 採光計算は設計図書に記載が不要
四号建築物以外 採光計算は設計図書に記載が必要

例えば、建築士が設計した四号建築物である木造2階建ての一戸建て住宅であれば、採光計算は設計図書に記載不要です。これは、確認申請の図書の省略ができる特例の対象に該当するからです。しかし、木造3階建ての一戸建て住宅は四号建築物ではないので特例の対象とはならず、採光計算も設計図書に記載必要です。

詳しくは、四号特例についての以下の記事に記載されているので確認ください。

納戸は採光計算が不要?

結論として、納戸であれば採光計算は不要です。

なぜなら、納戸は『居室』では無いので、そもそも規制の対象とはならないからです。

じゃあ、納戸を居室として使う!って言ったらどうなるの?
もちろん、居室として使うなら、採光計算必要ですよ!

住宅の居室で、採光計算が確保出来ない場合、やむを得ず納戸として申請されるケースもあります。しかし、これはあくまで非居室扱いとして扱っているので、居室としては使えません。注意しましょう。

法文で確認する【建築基準法28条1項】

住宅の居室の採光計算については『建築基準法28条1項』に記載されています。

建築基準法28条1項

住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、その他の建築物にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。

採光計算にも詳しくなれる住宅設計に必須の書籍

住宅の居室は、建築基準法の中でも扱いが特殊です。

そこで、住宅の設計において絶対に使える書籍を今回発売しました!

住宅には、採光計算が義務になっているだけでなく、他にも換気無窓や排煙無窓などの規制が複雑に絡んでいます。これらの内容を住宅の用途に絞り、わかりやすく解説しています。ぜひ、住宅設計でお困りの方はお手に取ってみてください。

まとめ

✔️住宅の居室には、以下検討式に適合する採光上有効な窓が絶対に必要

  • 居室の床面積×1/7<窓の面積×採光補正係数

✔️以下の住宅の居室には、採光計算は不要

  • 地階に設ける居室
  • 住指発153号に該当する居室(住宅の音楽練習室等)

✔️採光計算は、四号特例の使える建築物であれば、設計図書への記載不要

✔️納戸は非居室なので採光計算不要。つまり、居室で使うなら、採光計算は必要

住宅の居室の採光計算は、緩和が無くて意外と厄介な規制です!油断しないようにかかりましょう!(sozooro
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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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