建築基準法。

既存不適格建築物とは?増築等する時の考え方【法第3条2項3項】

今回は既存不適格建築物の増築等の考え方についてです。

既存不適格建築物の定義や、既存不適格建築物に対しての増築などの考え方を解説します。

 

そもそも、既存不適格建築物とは?

既存不適格建築物なんて聞くとあまり良い印象は持てないですよね。

不適格って文言が入ってるし、違反してる建物の事なのかな?と思いますよね。でも、その考え方はだいたい合ってます。なぜなら、

既存不適格建築物は仕方が無い理由で、現行の建築基準法に違反している建築物の事だからです。

サラッと言ってるけど、違反建築物じゃないの!
いや、この既存不適格建築物は仕方が無い理由現行の建築基準法の違反になってるだけ。そのへんの違反建築物とはまったく別物

その仕方が無い理由とは、建築基準法の改正や、都市計画の変更です。

 

例を説明します。たとえば、あなたが建蔽率80%までの指定がある用途地域に建物を建てるとします。

ギリギリいっぱい、建蔽率79%で建築計画をしたとしましょう。この時点では建築基準法に適合していますよね。

しかし、建物を建てはじめてから、行政が建蔽率の指定を80%→70%にしてしまいました。これによって、建蔽率オーバーで建築基準法に違反になりましたよね?

 

でも、これってあなたは悪いでしょうか?仕方が無いですよね。だって、工事を着工する段階では法適合していたんですから。

こういう、建築基準法改正や、都市計画の変更などの仕方が無い理で現行の建築基準法に違反になってしまった建築物が既存不適格建築物です。

仕方が無いといえど、現行の建築基準法に適合していない建築物が普通に建っていて大丈夫か?と思う方もいるかと思いますが、それは大丈夫です。

この既存不適格建築物は、ちゃんと建築基準法で現行の建築基準法に適合していなくても許されています。

それは、建築基準法第3条第2項に記載があります。


(適用の除外)
第3条
この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 文化財保護法(昭和25年法律第二百十四号)の規定によつて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物
二 旧重要美術品等の保存に関する法律(昭和8年法律第四十三号)の規定によつて重要美術品等として認定された建築物
三 文化財保護法第182条第2項の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物 (次号において「保存建築物」という。) であつて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの
四 第一号若しくは第二号に掲げる建築物又は保存建築物であつたものの原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てその原形の再現がやむを得ないと認めたもの
2 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
(以下省略)

法第3条は、建築基準法の適用を受けない建築物のについてなのですが、法第3条第2項より、

建築基準法第3条第2項より

この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。

このように、

規定の施行又は適用の際現に存ずる建築物に建築基準法は適用しない』となってきます。

だから、基準時の建築基準法に適合していればokということです。

基準時については以下の記事を参考にしてください。

 

既存不適格建築物の増築等の考え方

さて、既存不適格建築物の意味がわかったところで、『既存不適格建築物の増築等』について考えてみましょう。

(増築等と書きます、改築、移転、大規模模様替、大規模修繕、用途変更も一緒です)

既存不適格建築物だからと言って、好き勝手していいかと思いきや、そんな事はありません。たとえ既存不適格建築でも、増築等をする時はそれなりに法適合の話は出てきます。

 

そこで、既存不適格建築物の増築等の法適合と聞いて、

既存不適格建築物の増築等の場合、一部の現行建築基準法に対して適合させればいいんでしょ?

たとえば、集団規定とか

こんな事を考えてる方はいませんか?

 

上記のように『一部の現行建築基準法に対して適合すれば良い』と考えてる方は、既存不適格建築物の増築等の考え方のスタートラインを完全に間違えているかもしれません。

その考え方を正しいスタートラインで整理すると、既存不適格建築物の増築等の内容がぐっとわかりやすくなります。(理由は後でご説明します)

だから、先ほどのお姉さんが言っていた『一部の建築基準法に適合させる』という間違った内容は一度忘れて、頭を空っぽにして読んでみてください。

 

既存不適格建築物の増築等を考えるスタートライン

まず、1番大事なスタートラインをお伝えすると、

既存不適格建築物は、増築等を行う時点で原則すべての現行法の建築基準法に適合しなければなりません

え!全部の法文を適合?そんなの厳しすぎじゃない?
ほんとです!だって建築基準法にもそう書いてあるから。

そうです、建築基準法にそうやって書いてあるんです。

既存不適格建築物の法文って、読めてない人がほんとに多いです。その理由は、建築基準法の手順通りに読めていないからです。だから、手順通りに読めば、簡単に読めるはずです。

では、既存不適格建築物の増築等についてのスタートの条文を見てみましょう。


(適用の除外)
第三条
(省略)

2 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
3 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、適用しない。
一 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例を改正する法令による改正 (この法律に基づく命令又は条例を廃止すると同時に新たにこれに相当する命令又は条例を制定することを含む。) 後のこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用の際当該規定に相当する従前の規定に違反している建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分
二 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域若しくは工業専用地域若しくは防火地域若しくは準防火地域に関する都市計画の決定若しくは変更、第42条第1項、第52条第2項第二号若しくは第三号若しくは第8項、第56条第1項第二号イ若しくは別表第3備考三の号の区域の指定若しくはその取消し又は第52第1項第七号、第2項第三号若しくは第8項、第53条第1項第六号、第56条第1項第二号ニ若しくは別表第3(に)欄の5の項に掲げる数値の決定若しくは変更により、第43条第1項、第48条第1項から第13項まで、第52条第1項、第2項、第7項若しくは第8項、第53条第1項から第3項まで、第54条第1項、第55条第1項、第56条第1項、第56条の2第1項、第61条若しくは第62条に規定する建築物、建築物の敷地若しくは建築物若しくはその敷地の部分に関する制限又は第43条第2項、第43条の2、第49条から第50条まで若しくは第68条の9の規定に基づく条例に規定する建築物、建築物の敷地若しくは建築物若しくはその敷地の部分に関する制限に変更があつた場合における当該変更後の制限に相当する従前の制限に違反している建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分
三 工事の着手がこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地
四 前号に該当する建築物又はその敷地の部分
五 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に適合するに至つた建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分

法第3条第3項は、既存不適格建築物の中でも、現行の建築基準法の適用を受ける建築物についての記載がされています。

確認すると、

建築基準法第3条第3項より

三 工事の着手がこの法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物又はその敷地
四 前号に該当する建築物又はその敷地の部分

つまり、既存不適格建築物やその敷地に増築、改築、移転、大規模修繕、大規模模様替をした時点で、現行の建築基準法を適用を受けるという事です。

だから、原則は増築等した時点で、既存建築物建築物は現行の建築基準法への適合が必要になるという事です。

 

原則現行法の建築基準法に適合だけど、緩和がある

既存不適格建築物は増築した段階で、現行法の建築基準法への適合が必要とご説明しました。

これってかなり厳しいですよね?ただ、建築基準法も鬼ではありません。

既存不適格建築物に対しては、一部建築基準法についてのみ、緩和が用意されています。

その緩和についての法文が建築基準法施行令第86条の7です。


既存の建築物に対する制限の緩和
(第86条の7)
第3条第2項(第86条の9第1項において準用する場合を含む。以下この条、次条及び第87条において同じ。)の規定により第20条、第26条、第27条、第28条の2(同条各号に掲げる基準のうち政令で定めるものに係る部分に限る。)、第30条、第34条第2項、第47条、第48条第1項から第13項まで、第51条、第52条第1項、第2項若しくは第7項、第53条第1項若しくは第2項、第54条第1項、第55条第1項、第56条第1項、第56条の2第1項、第57条の4第1項、第57条の5第1項、第58条、第59条第1項若しくは第2項、第60条第1項若しくは第2項、第60条の2第1項若しくは第2項、第60条の3第1項若しくは第2項、第61条、第62条第1項、第67条の2第1項若しくは第5項から第7項まで又は第68条第1項若しくは第2項の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替(以下この条及び次条において「増築等」という。)をする場合においては、第3条第3項第三号及び第四号の規定にかかわらず、これらの規定は、適用しない。
(以下省略)

例に、第1項だけを確認してみましょう。(2項と3項も同じ内容が書いてあります)

建築基準法第86条の7第1項より

第3条第3項第三号及び第四号の規定にかかわらず、これらの規定は、適用しない。

法第3条第3項第三号と四号のいうのは、先ほどご説明した『既存不適格建築物は現行法の適合を受ける』という内容で、その規定を受けないという事で(ややこしいですが、)

法第87条の6に記載がある法文に当てはめれば、一部建築基準法については現行の建築基準法に適合させなくてもいい

という事になるんです。

 

肝心の緩和の内容については、また後日別の記事で解説をします!

 

まとめ:既存不適格建築物は法文の順番通りに考えよう

既存不適格建築物の基本的な考え方は、

原則は増築した時点で、既存建築物建築物は現行の建築基準法への適合が必要になる。

ただし、緩和で一部建築基準法については現行の建築基準法への適合は不要になる

これを頭に入れて、法第86条の7を確認すると、法文の内容がスルスル頭に入るはずです。

なぜなら、これが法文の手順通りの考え方だからです。

中途半端に、一部法文だけ現行の建築基準法に適合させるはずだよなぁと思いながら法文を読んでも全然頭に入らないのは、建築基準法を手順で読めていないからです。

そこをしっかり押さえて、既存不適格建築物の増築についての法文を読んでみましょう!

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築士。建築法規に関わる仕事をしています。難解で堅苦しい建築基準法を、面白くわかりやすく伝えていきます!