単体規定

採光義務とは?法28条の採光規定についてわかりやすく解説

採光義務ってどんな規定?

他の採光の規定と何が違うの?

採光義務が必要な居室は?

採光義務が適合しない場合、どうすれば良いのか?

今回の記事ではこんな疑問に法的根拠を元に答えます。

ざっくりまとめると、

採光義務とは、法28条1項に定める規定で、必ず所定以上の採光を確保できる窓を設けなくてはなりません。

採光義務は、住宅や病院、児童福祉施設等など特定の用途の居室が適用を受ける

他の採光規定との違いは、緩和が無いということ

採光義務は、用途上やむを得ない居室は特例として、規制の対象にはならない

採光の規定は建築基準法に3つ存在します。この中でも、法28条は緩和が無いので厄介な規定です…

今回はわかりやすく解説していきます!(sozooro

3つの採光規定については以下の記事で解説しています。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

採光義務とは?

所定の用途の居室には、採光上有効な開口部を設けなければならない

採光規定は、居室内の明るさや防湿の確保等の観点から設けられている規定です。室内の明るさや防湿等の衛生的な環境の確保する為、原則として「自然光」が必要となります。だからこそ、居室に所定以上の大きさの開口部が必要です。

必要となる開口部の大きさは、居室の広さ及び建築物の用途によって異なります。

具体的には、以下の色が成り立っていればOKです。

採光義務の検討式

居室の床面積×割合<窓の開口面積×採光補正係数

建築物 居室の種類 居室の床面積に乗じる割合
住宅 居室 ×1/7
(照明設備を設けることで、必要な面積の低減が可能)
寄宿舎 寝室 ×1/7
下宿 宿泊室 ×1/7
児童福祉施設等 寝室 ×1/7
保育、訓練 ×1/7
談話、娯楽 ×1/10
病院、診療所 病室 ×1/7
談話、娯楽 ×1/10
幼稚園、小学校、中学校、
義務教育学校、高等学校、
中等教育学校、
幼保連携型認定こども園
教室 ×1/5
(照明設備を設けることで、必要な面積の低減が可能)
上記の学校以外の学校(大学、専修学校等) 教室 ×1/10
保育所、幼保連携型認定こども園 保育室 ×1/5
(照明設備を設けることで、必要な面積の低減が可能)

 

採光補正係数等の求め方については以下の記事を確認してみてください。

例えば、上の表に該当しない事務所の居室とかだった場合どうするの?
その場合、採光義務(法28条)に該当しないので、検討しなくてもOKです!

ただし、法28条に該当しない事務所の居室等であっても、後ほどご紹介するその他の採光規定の検討は必要なのでご注意ください。

病院・診察所の診察室は法28条に該当するか?

この間、診察室も採光義務(法28条)の適用を受ける!って言われたんだけど…

この表には書かれていないよね?

診察室は採光義務(法28条)に該当するの、しないの、どっち?

診察室は現行の採光義務(法28条)には該当しません!

ただし、法改正する前は診察室は採光義務(法28条)の規制の対象でした!だから、勘違いしている方が多いのです…!

平成12年までの法28条では、診察室は採光義務(法28条)の対象となっていました。しかし、改正後は対象から外れています。

したがって、現行法では診察室は採光義務(法28条)には該当しません。

他の採光規定との違い

建築基準法には採光に関わる規制が3つあるが、採光義務(法28条)に関しては緩和がないという(開口部を無くせない)という違いがある

建築基準法には、採光に関する規定として、法28条・法35条・法35条の3の3つの規制があります。

それぞれの規制については以下の記事で確認してください。

法28条と他の採光に関する規定(法35条・法35条の3)では、大きな違いがあります。それは、他の採光に関する規定は、窓がない居室を作ることは出来ますが、法28条に関しては窓を無くすことは出来ないということです。

他の採光に関する規定(法35条・法35条の3)は、非常用照明を設置したり、区画をすることで、窓を無くすことが出来ます。しかし、法28条に関しては、窓を無くすことは出来ず、必ず窓を設け、自然採光を確保する必要があります

採光義務(法28条)にも、必要となる開口部の面積を低減する緩和はあります。(詳しくはこちらの記事で解説しています)しかし、あくまで低減するだけで、窓を無くすことは出来ないということです。

ただし、用途上やむを得ない居室は除く

採光義務(法28条)は、他の採光に関する規制のように代替措置もなく、なかなか厄介な規制です。しかし、法28条に該当する居室であっても、用途上やむを得ない居室については、その対象から除かれます。(法28条1項ただし書き)

そうなんだ!用途上やむを得ない居室ってどんな室?
それは、住指発153号が参考になりますよ!

以下をクリックして確認してみてください。

『住指発153号』を確認する

採光のための開口部を設けることを要しない居室について

近年、建築物の機能の高度化及び多様化、照明設備及び換気設備の機能の向上、国民の住生活様式の多様化等により、居室の利用形態が多様化しており、建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号。以下「法」という。)第二八条第一項ただし書に規定する「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室」の解釈について、地方により統一を欠く向きもあるので、その統一を図るため、今後は左記により取り扱われたい。

 

1 温湿度調整を必要とする作業を行う作業室
次に掲げる居室は、法第二八条第一項ただし書に規定する「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室」に該当するものとする。
(1) 大学、病院等の実験室、研究室、調剤室等温湿度調整を必要とする実験、研究、調剤等を行う居室(小学校、中学校又は高等学校の生徒用の実験室を除く。)
(2) 手術室
(3) エックス線撮影室等精密機器による検査、治療等を行う居室
(4) 厳密な温湿度調整を要する治療室、新生児室等
2 その他用途上やむを得ない居室
次に掲げる居室は、法第二八条第一項ただし書に規定する「用途上やむを得ない居室」に該当するものとする。
(1) 開口部を設けることが用途上望ましくない居室
1) 大音量の発生その他音響上の理由から防音措置を講ずることが望ましい居室
ア 住宅の音楽練習室、リスニングルーム等(遮音板を積み重ねた浮き床を設ける等遮音構造であること並びに当該住宅の室数及び床面積を勘案し、付加的な居室であることが明らかなものに限る。)
イ 放送室(スタジオ、機械室、前室等で構成されるものをいう。)
ウ 聴覚検査室等外部からの震動・騒音が診察、検査等の障害となる居室
2) 暗室、プラネタリウム等現像、映写等を行うため自然光を防ぐ必要のある居室(小学校、中学校又は高等学校の視聴覚教室を除く。)
3) 大学、病院等の実験室、研究室、消毒室、クリーンルーム等放射性物質等の危険物を取り扱うため、又は遺伝子操作実験、病原菌の取扱い、滅菌作業、清浄な環境の下での検査、治療等を行う上で細菌若しくはほこりの侵入を防ぐため、開口部の面積を必要最小限とすることが望ましい居室
4) 自然光が診察、検査等の障害となる居室
ア 眼科の診察室、検査室等自然光が障害となる機器を使用する居室
イ 歯科又は耳鼻咽喉科の診察室、検査室等人工照明により診察、検査等を行う居室
(2) 未成年者、罹病者、妊産婦、障害者、高齢者等以外の者が専ら利用する居室で法第二八条第一項の規定の適用を受けない建築物の居室に類する用途に供するもの
1) 事務室(オフィス・オートメーション室を含む。)、会議室、応接室、職員室、校長室、院長室、看護婦詰所(いわゆるナース・ステーション)等事務所における事務室その他執務を行う居室に類する用途に供する居室
2) 調理室、印刷室等飲食店等の厨房、事務所等の印刷室その他作業を行う居室に類する用途に供する居室(住宅の調理室で食事室と兼用されるものを除く。)
3) 舞台及び固定された客席を有し、かつ、不特定多数の者が利用する用途に供する講堂等劇場、演芸場、観覧場、公会堂、集会場等に類する用途に供する居室
4) 管理事務室、守衛室、受付室、宿直室、当直室等事務所等の管理室に類する用途に供する居室
5) 売店等物品販売業を営む店舗の売場に類する用途に供する居室

例えば、住宅の居室であっても、『住宅の音楽練習室、リスニングルーム等(遮音板を積み重ねた浮き床を設ける等遮音構造であること並びに当該住宅の室数及び床面積を勘案し、付加的な居室であることが明らかなものに限る。)』であれば、採光義務(法28条)の居室からは除かれることとなります。

『採光義務』を法文で確認する

採光義務が記載されている建築基準法28条1項を、法文で確認してみましょう!

建築基準法28条1項

住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、1/5から1/10までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。

法28条の内容の詳細は建築基準法施行令19条に定られているので、合わせて確認しましょう。

建築基準法施行令19条1項

法第28条第1項(法第87条第3項において準用する場合を含む。以下この条及び次条において同じ。)の政令で定める建築物は、児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除く。)、助産所、身体障害者社会参加支援施設(補装具製作施設及び視聴覚障害者情報提供施設を除く。)、保護施設(医療保護施設を除く。)、婦人保護施設、老人福祉施設、有料老人ホーム、母子保健施設、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム又は障害福祉サービス事業(生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る。)の用に供する施設(以下「児童福祉施設等」という。)とする。
2 法第28条第1項の政令で定める居室は、次に掲げるものとする。
一 保育所及び幼保連携型認定こども園の保育室
二 診療所の病室
三 児童福祉施設等の寝室(入所する者の使用するものに限る。)
四 児童福祉施設等(保育所を除く。)の居室のうちこれらに入所し、又は通う者に対する保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与その他これらに類する目的のために使用されるもの
五 病院、診療所及び児童福祉施設等の居室のうち入院患者又は入所する者の談話、娯楽その他これらに類する目的のために使用されるもの
3 法第28条第1項の政令で定める割合は、次の表の上欄に掲げる居室の種類の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる割合とする。ただし、同表の(一)の項から(六)の項までの上欄に掲げる居室のうち、国土交通大臣が定める基準に従い、照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置が講じられているものにあつては、それぞれ同表の下欄に掲げる割合から1/10までの範囲内において国土交通大臣が別に定める割合とする。
居室の種類
割合
(一)
幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は幼保連携型認定こども園の教室
1/5
(二)
前項第一号に掲げる居室
(三)
住宅の居住のための居室
1/7
(四)
病院又は診療所の病室
(五)
寄宿舎の寝室又は下宿の宿泊室
(六)
前項第三号及び第四号に掲げる居室
(七)
(一)の項に掲げる学校以外の学校の教室
1/10
(八)
前項第五号に掲げる居室

まとめ

✔️採光義務(法28条)とは、採光に関わる規定の一つで、特定の用途の居室に所定以上の窓が必要になる

✔️採光義務(法28条)は他の採光に関わる規制と違い、開口部を無くすことが出来ない

✔️ただし、用途上やむを得ない居室に関しては、採光義務(法28条)から除かれる

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