建築基準法

工作物とは?【定義】【擁壁や塀でも確認申請が必要なのか?】

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工作物ってなに?

建築物とは何が違うの?

確認申請が必要になる工作物ってなに?

擁壁は、高さ何メートルから確認申請が必要なの?

こんなお悩みに対して法的根拠を元に解説していきます。

結論からまとめると、

✔️工作物とは、土地に接着させて設置した建築物以外の人工物(ただし、法文に定義がある訳ではない)

✔️建築物との違いは、建築基準法の適用され方が全く違うということ

✔️工作物でも、一部は確認申請が必要になる

✔️『確認申請の有無』に関してはは全くの別物。

擁壁は高さ2mから確認申請が必要

塀は建築物に付属するものなら確認申請が必要(高さは関係ない)

工作物は、建築物では無いので、建築基準法の適用を真っ向からは受けません。

ちょっと変化球で建築基準法が適用されます。だから、複雑なんです。

この記事を読めば、工作物の定義、法文の読み方、規制内容などまるっとわかります!

twitter:sozooro

では、早速解説していきます!

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

工作物の定義とは?

工作物とは、土地に接着させて設置した建築物以外の人工物

とにかく、建築物以外というのがポイントです!

工作物の定義は建築基準法にはありません。しかし、建築物の定義は建築基準法にあります。

建築物とは?(法2条第1項第一号)

以下のいずれか1つに該当する事

土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの

建築物に附属する門若しくは塀

観覧のための工作物

地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)

建築設備

建築物の定義の中にも、工作物がある!
そうです!つまり、建築物と工作物の関係性は…

要するに、建築物も元は工作物です。その中でも所定の条件に該当したものが建築物になるわけです。

では、具体的にどのようなものが工作物になるのでしょうか?

工作物の具体例

・道路
・鉄道
・ゴルフコースなど平面的なもの
・電柱
・看板
・擁壁
・鉄柱
etc…

上記以外にも、人工的に作られたものであれば、工作物となります。

工作物と建築物の違い

工作物は『原則として』建築基準法の適用を受けない

建築物は建築基準法の適用を受けます。しかし、工作物は原則として建築基準法の適用を受けません。

そうなの!?

でも、高さ10mの擁壁とか、その辺の建築物よりも明らかに危ないし、安全性が必要そうだけど…

本当に建築基準法の適用は無いの?

原則は無いです。

でも、あくまで原則です。

例外として、所定の規模・構造の工作物には、一部の建築基準法の準用がされるのです!

準用とは、本来の対象ではないけれども似ている対象に法文を当てはめることをいいます。

工作物は、建築基準法以外の法律によって規制が設けられていることがあります。しかし、全てではありません。だったら、なんでも好きに建てられてしまいますよね。

しかし、一部の工作物は一部の建築基準法の規制を受けるんです。

代表的なものだと、確認申請(建築基準法第6条)ですね!

実は、これ以外の規制も準用されますよ!

なぜか、工作物は『確認申請の有無』ばかり気にされてしまいます。しかし、実際は他の規制の準用もされます。そこはしっかり理解しておきましょう。

建築基準法が『準用』される工作物とは?

まず、準用される工作物には種類が2つあります。

それは、『準用工作物(法第88条第1項)』と『指定工作物(法第88条第2項)』です。

何が違うの?
準用される規定が違います!

例えば、準用工作物は『法第20条』の構造耐力の規定を受けますが、指定工作物は、『法第20条』の構造耐力の規定を受けません。このように、準用される規制に若干違いがあります。

準用される工作物は以下のようになります。

▼建築基準法の準用を受ける工作物

適用
区域
法文 用途 規模 工事
種別
全国
(都市計画区域内外を問わず)
準用
工作物
法88条
第1項
令138条
第1項※4
煙突※1(一号) 高さ6mを超える 築造
RC柱、鉄柱、木柱等※2(二号) 高さ15mを超える
広告塔、広告板、装飾塔、記念塔等(三号) 高さ4mを超える
高架水槽、サイロ、物見塔等(四号) 高さ8mを超える
擁壁※3(五号) 高さ2mを超える
令138条
第2項
観光用施設に設ける昇降機など(一号)
(観光用エレベーター、観光用エスカレーター)※5
築造、大規模の修繕、大規模の模様替え
高架の遊戯施設(二号)
(コースター、ウォーターシュートなど)
原動機付回転遊戯施設(三号)
(メリーゴーランド、観覧車、飛行塔など)
指定
工作物
法88条
第2項
令138条
第3項
用途規則(法48条)を受ける工作物である製造施設、貯蔵施設、遊戯施設、自動車車庫、及び処理施設位置の制限(法51条)を受ける汚物処理場、ごみ焼却場等
※1:支枠及び支線がある場合においては、これらを含み、ストーブの煙突を除く。(令138条第1項第一号)
※2:旗ざおを除く。(令138条第1項第二号)
※3:宅地造成等規制法、開発許可等を受けた擁壁は、確認申請等の準用はされない(法88条第3項)
※4:鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関するものその他他の法令の規定により法及びこれに基づく命令の規定による規制と同等の規制を受けるものとして国土交通大臣が指定するものを除く。(令138条第1項本文)
※5:一般交通の用に供するものを除く。(令138条第2項第二号)
ちなみに、準用工作物も、指定工作物も確認申請(建築基準法第6条)の準用がされるので

表に当てはまった工作物は、確認申請が必要です

準用される規制について

準用される規制については、法第88条を確認すればわかります。

準用工作物 法88条第1項
指定工作物 法88条第2項
準用される規制については、以下をクリックして法文を確認してください!(当記事では全てまとめていると時間が足らないので、割愛します…)

第88条
煙突、広告塔、高架水槽、擁壁その他これらに類する工作物で政令で指定するもの及び昇降機、ウォーターシュート、飛行塔その他これらに類する工作物で政令で指定するもの(以下この項において「昇降機等」という。)については、第3条、第6条(第3項、第5項及び第6項を除くものとし、第1項及び第4項は、昇降機等については第1項第一号から第三号までの建築物に係る部分、その他のものについては同項第四号の建築物に係る部分に限る。)、第6条の2(第3項を除く。)、第6条の4(第1項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第7条から第7条の4まで、第7条の5(第6条の4第1項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第8条から第11条まで、第12条第5項(第三号を除く。)及び第6項から第9項まで、第13条、第15条の2、第18条(第4項から第13項まで及び第24項を除く。)、第20条、第28条の2(同条各号に掲げる基準のうち政令で定めるものに係る部分に限る。)、第32条、第33条、第34条第1項、第36条(避雷設備及び昇降機に係る部分に限る。)、第37条、第38条、第40条、第3章の2(第68条の20第2項については、同項に規定する建築物以外の認証型式部材等に係る部分に限る。)、第86条の7第1項(第28条の2(第86条の7第1項の政令で定める基準に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)、第86条の7第2項(第20条に係る部分に限る。)、第86条の7第3項(第32条、第34条第1項及び第36条(昇降機に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)、前条、次条並びに第90条の規定を、昇降機等については、第7条の6、第12条第1項から第4項まで、第12条の2、第12条の3及び第18条第24項の規定を準用する。この場合において、第20条第1項中「次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準」とあるのは、「政令で定める技術的基準」と読み替えるものとする。
 製造施設、貯蔵施設、遊戯施設等の工作物で政令で指定するものについては、第3条、第6条(第3項、第5項及び第6項を除くものとし、第1項及び第4項は、第1項第一号から第三号までの建築物に係る部分に限る。)、第6条の2(第3項を除く。)、第7条、第7条の2、第7条の6から第9条の3まで、第11条、第12条第5項(第三号を除く。)及び第6項から第9項まで、第13条、第15条の2、第18条(第4項から第13項まで及び第19項から第23項までを除く。)、第48条から第51条まで、第60条の2第3項、第60条の2の2第4項、第60条の3第3項、第68条の2第1項及び第5項、第68条の3第6項から第9項まで、第86条の7第1項(第48条第1項から第14項まで及び第51条に係る部分に限る。)、第87条第2項(第48条第1項から第14項まで、第49条から第51条まで、第60条の2第3項、第60条の2の2第4項、第60条の3第3項並びに第68条の2第1項及び第5項に係る部分に限る。)、第87条第3項(第48条第1項から第14項まで、第49条から第51条まで及び第68条の2第1項に係る部分に限る。)、前条、次条、第91条、第92条の2並びに第93条の2の規定を準用する。この場合において、第6条第2項及び別表第二中「床面積の合計」とあるのは「築造面積」と、第68条の2第1項中「敷地、構造、建築設備又は用途」とあるのは「用途」と読み替えるものとする。

『擁壁』と『塀』は確認申請が必要か?

擁壁は、高さが2mを超えたら工作物として確認申請が必要

は、建物に付属するものとなったら建築物として確認申請が必要

塀は建築物になっちゃうの?どうして?
それは、建築物の定義を確認すればわかります!

建築基準法第2条の建築物の定義により、建築物に附属する門若しくは塀は『建築物』になります。

したがって、建築物に付属する塀は、建築物として確認申請が必要になります。

例えば、準防火地域内で、建築物が建っている敷地に増築する場合、確認申請が必要になったりします

詳しくは、以下の記事を参考にしてください

インスタグラムで詳しくまとめているので、こちらもどうぞ!

まとめ

✔️工作物とは、土地に接着させて設置した建築物以外の人工物

→建築物以外というのがポイント!

✔️建築物との違いは、建築基準法の適用をされ方全く違う

→工作物は、原則として建築基準法の適用を受けない。ただし、一部の工作物だけ、一部の建築基準法の適用を受ける(確認申請が必要になる)

✔️擁壁は全く別物。

擁壁は高さ2mから確認申請が必要

塀は建築物に付属するものなら確認申請が必要

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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