建築基準法

昇降機は確認申請不要?必要になるケース・必要書類・資格について解説

昇降機でも確認申請って必要なの?

確認申請とする場合、用意すべき必要書類は?

昇降機の設計者は、建築士じゃないとダメなの?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

昇降機であっても、以下の場合は確認申請が必要

  • 法第6条第一号〜第三号の建築物の昇降機
  • 法第6条第一号〜第三号の建築物の小荷物専用昇降機(告示に定めるものを除く)

昇降機の確認申請で必要な書類は以下の通り

  • 確認申請書(昇降機)(第8号様式)
  • 委任状
  • 付近見取図
  • 配置図
  • 各階平面図
  • エレベーターの設計図書

昇降機の設計者は、建築士でなくてもOK

昇降機の確認申請は、正直に言うと…凄くわかりにくいです!

法文に書いてあるのは上記の内容のみですが、実際には、他にも多くの確認申請が必要なパターンがあります。

今回は、わかりやすく解説していきます!(X:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

昇降機で確認申請が必要になるケースとは?

昇降機の確認申請が必要になるかは、以下の通り

法6条1項一号〜三号建築物に設置する場合 法6条1項四号建築物に設置する場合
建築物の建築と同時に設置する昇降機 ○(必要) ○(必要)
ただし、単独申請は不可
上記以外の昇降機
(昇降機単独の設置等)
○(必要) ×(不要)
ただし、特定行政庁によっては法12条5項の報告が求められる

昇降機のサイズや設置する階数ではなく、あくまで『どんな建築物に設置するか』で確認申請の有無が変わります。

四号建築物とは?

四号建築物とは、以下2つ全て満たすもの

用途が原則、特殊建築物ではない事

(特殊建築物だった場合、200㎡以下である事)

規模が以下のいずれかに該当する事

  • 木造建築物で階数2以下、延べ面積500㎡以下、最高高さ13m以下、軒高9m以下(全て満たす)
  • 木造以外の建築物で階数1階、延べ面積200㎡以下(全て満たす)
あれ?結局、昇降機の確認申請が不要なのって、右下のケースだけ?これってどんな場合なの?
これは、四号建築物の確認申請が終わって、検査も受けて、建築物の検査済証がおりた後に、昇降機だけ新設をしたい場合です!これは、昇降機の確認申請は不要です!

昇降機の申請が不要なパターン

四号建築物の工事完了四号建築物の検査済証取得後付けで昇降機の設置

もう一つの特徴としては、四号建築物に設置する場合は、単独申請は出来ず、建築物の一緒に併願申請として出す必要があります。しっかりと把握しておきましょう。

どうしてこんなややこしいことになっているのか、軽く解説します。

まず、法を単純に読むと、昇降機の確認申請が必要なのは、『法6条1項一号〜三号建築物に設置する場合』と書かれています。だから、四号建築物は昇降機の単独申請はできないのです。単独申請を出すことができる法的根拠がないからです。

しかし、これだけ読むと、四号建築物に昇降機を設置する場合確認申請が不要なように読めます。しかし、昇降機は『建築設備』です。建築物に設置される建築設備は、確認申請の審査対象となります。だから、建築設備として、併願で申請が必要ということです。

ややこしいな、と思った方は、結論だけ覚えておけばいいかなと思います!

所定の条件を満たす小荷物専用昇降機は、確認申請不要?

小荷物専用昇降機だったら、確認申請不要って聞いたんだけど…

小荷物専用昇降機とは?

かごの水平投影面積が1㎡以下で、かつ、天井の高さが1.2m以下の物を運搬する昇降機のこと(令129条の3第1項三号)

所定の条件を満たす小荷物専用昇降機であれば、確認申請不要、と法文では書かれていますが…実際には、完全に不要とは言えません

先ほどご説明した内容と重複しますが、所定の条件を満たした小荷物専用昇降機は、確認申請が不要と法文に書かれています。しかし、昇降機は『建築設備』なので、建築物に設置される建築設備として、確認申請の審査対象となります。

だから、小荷物専用昇降機だからと言って、確認申請が不要になるとは言えません。

所定の条件を満たした昇降機の確認申請の扱い
法6条1項一号〜三号建築物に設置する場合 法6条1項四号建築物に設置する場合
建築物の建築と同時に設置する昇降機 ○(必要)
ただし、単独申請は不可
○(必要)
ただし、単独申請は不可
上記以外の昇降機
(昇降機単独の設置等)
×(不要)
ただし、特定行政庁によっては法12条5項の報告が求められる
×(不要)
ただし、特定行政庁によっては法12条5項の報告が求められる
ややこしく嫌になりますよね…!(私も解説を書いていて、嫌になります…)

では、確認申請が不要になると法文に記載されている、所定の条件を満たした小荷物専用昇降機の条件について確認しましょう。

所定の条件を満たした小荷物専用昇降機とは?

昇降路の全ての出し入れ口の下端が 当該出し入れ口が設けられる室の床面よりも50㎝以上高いもの(令146条1項二号、告示239号)

要は、テーブルタイプの小荷物専用昇降機ということです。フロアタイプの小荷物専用昇降機の場合は、一般の昇降機と同様の扱いで確認申請が必要になりますので、注意ください。

昇降機の確認申請で『必要な書類』は?

昇降機の確認申請で『必要な書類』

確認申請書(昇降機)(第8号様式)

委任状

付近見取図

配置図

各階平面図

エレベーターの設計図書

  • エレベーターの仕様書
  • エレベーターの構造詳細図
  • エレベーターのかご、昇降 路及び機械室の断面図
  • エレベーター強度検証法に より検証した際の計算書
  • エレベーターの荷重を算定 した際の計算書
  • エレベーターの使用材料表
こちらは、規則に定められている一般的な図書です!

型式認定などを取得しているものを使う場合は、図書を一部省略することも可能です。こちらは、昇降機のメーカーさんが詳しいかと思いますので、個別で確認するようにしてください。

昇降機は設計者は『建築士』ではないといけないのか

昇降機の設計者は、建築士以外でもOK

理由は、建築士法です。建築士法により、所定以上の建築物を設計・工事監理する場合は、建築士の資格が必要と定められています。

建築士法3条

左の各号に掲げる建築物(建築基準法第八十五条第一項又は第二項に規定する応急仮設建築物を除く。以下この章中同様とする。)を新築する場合においては、一級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。

昇降機は、建築物ではないので、これに該当しないということです!

建築基準法で『昇降機の確認申請』を確認する

最後に、昇降機の確認申請についての法文である、建築基準法87条の4建築基準法施行令146条1項を確認してみましょう!

建築基準法87条の4

政令で指定する昇降機その他の建築設備を第六条第一項第一号から第三号までに掲げる建築物に設ける場合においては、同項(第八十七条第一項において準用する場合を含む。)の規定による確認又は第十八条第二項(第八十七条第一項において準用する場合を含む。)の規定による通知を要する場合を除き、第六条(第三項、第五項及び第六項を除く。)、第六条の二(第三項を除く。)、第六条の四(第一項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第七条から第七条の四まで、第七条の五(第六条の四第一項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第七条の六、第十八条(第四項から第十三項まで及び第二十五項を除く。)及び第八十九条から第九十条の三までの規定を準用する。この場合において、第六条第四項中「同項第一号から第三号までに係るものにあつてはその受理した日から三十五日以内に、同項第四号に係るものにあつてはその受理した日から七日以内に」とあるのは、「その受理した日から七日以内に」と読み替えるものとする。

建築基準法施行令146条1項

法第八十七条の四(法第八十八条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)の規定により政令で指定する建築設備は、次に掲げるものとする。

一 エレベーター及びエスカレーター
二 小荷物専用昇降機(昇降路の出し入れ口の下端が当該出し入れ口が設けられる室の床面より高いことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。)
三 法第十二条第三項の規定により特定行政庁が指定する建築設備(尿浄化槽及び合併処理浄化槽を除く。)
2 第七章の八の規定は、前項各号に掲げる建築設備について準用する。

まとめ

✔️昇降機は、原則として確認申請が必要。ただし、既存の四号建築物に単独で昇降機を設置する場合は、確認申請は不要となる

法6条1項一号〜三号建築物に設置する場合 法6条1項四号建築物に設置する場合
建築物の建築と同時に設置する昇降機 ○(必要) ○(必要)
ただし、単独申請は不可
上記以外の昇降機
(昇降機単独の設置等)
○(必要) ×(不要)
ただし、特定行政庁によっては法12条5項の報告が求められる

✔️昇降機の設計は、建築士以外が行うことも可能

ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

PR