単体規定

内装制限の改正で追加になった緩和について【2020.4.1施行】

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今回は『内装制限の緩和』についてです。

 

2020.4.1の法改正によって、内装制限の緩和の内容が追加になりました。

内容が複雑なので、サクサクいきます。

書いている人
そぞろ

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著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

法改正で追加になった無窓居室の緩和内容について

法文で確認してみる

 

改正前 建築基準法施行令第128条の5 特殊建築物等の内装
(省略)

7 前各項の規定は、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のもの及び第126条の3の規定に適合する排煙設備を設けた建築物の部分については、適用しない。

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改正後 建築基準法施行令第128条の5 特殊建築物等の内装

(省略)

7  前各項の規定は、火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、床面積、天井の高さ並びに消火設備及び排煙設備の設置の状況及び構造を考慮して国土交通大臣が定めるものについては、適用しない。

 

今回の改正で、第128条の5第7項が改正になっています。

要約すると、

告示の内容に適合させた建築物の部分は、内装制限の適用を受けない

という事になります。

よって、大事なのは告示ですね。早速告示を確認してみましょう。

 

告示の内容について

 

告示第251号 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにすることを要しない火災が 発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める

建築基準法施行令(以下「令」という。)第128条の5第7項に規定する火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分は、次の各号のいずれかに該当するもの(第一号又は第二号に該当するものにあっては、建築基準法別表第一 欄 項に掲げる用途又は病院、診療所(患者の収容施設がある ものに限る。)若しくは児童福祉施設等(令第115条の3第一号に規定する児童福祉施設等をいい 、通所のみにより利用されるものを除く。)の用途に供するもの並びに令第128条の3の2に規 定する居室、令第128条の4第一項第二号又は第三号に掲げる特殊建築物の部分及び同条第四項に規定する内装の制限を受ける調理室等を除く。)とする。

次のイ及びロに掲げる基準に適合する居室(当該居室以外の部分と間仕切壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(当該居室にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた 場合にあっては、令第百十二条第十二項に規定する十分間防火設備)で同条第十九項第二号に規 定する構造であるもので区画されているものに限る。)

イ 床面積が100平方メートル以内であること。

ロ 天井(天井のない場合においては、屋根。以下同じ。)の高さが3メートル以上であること。

次のイ及びロに掲げる基準に適合する建築物の部分(避難階又は避難階の直上階にある部分で あって、令第110条の5に規定する基準に従って警報設備(自動火災報知設備に限る。)を設け た建築物の部分であり、かつ、屋外への出口等(屋外への出口、バルコニー又は屋外への出口に 近接した出口をいい、当該部分の各部分から当該屋外への出口等まで及び当該屋外への出口等か ら道までの避難上支障がないものに限る。)その他当該部分に存する者が容易に道に避難することができる出口を設けたものに限る。)

イ 延べ面積が500平方メートル以内の建築物の部分であること。

ロ スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のもの(以下「スプリンクラー設備等」という。)を設けていること。

スプリンクラー設備等を設けた建築物の部分(天井の室内に面する部分(回り縁、窓台その他 これらに類する部分を除く。)の仕上げを準不燃材料でしたものに限り、令第128条の3の2に規定する居室、令第128条の4第1項第二号又は第三号に掲げる特殊建築物の部分及び 同条第四項に規定する内装の制限を受ける調理室等を除く。)

スプリンクラー設備等及び令第126条の3の規定に適合する排煙設備を設けた建築物の部分

 

 

告示によると、第一号〜第四号いずれかに適合させればokなので、内装制限の緩和を受ける事のできる作戦は全部4つあると言えます。

 

内装制限を緩和する4つの作戦

4つ中から1つの作戦を選択して、適合させてください。

作戦①天井の高い建築物の居室部分

告示の第一号の部分です。

作戦①で緩和をする条件5つ

条件①緩和が使える※1である事

条件②居室である事(避難経路は×)

条件③100㎡以内区画をする事

条件④区画方法は間仕切壁又は防火設備(常時閉鎖or随時閉鎖 かつ 遮煙性能のもの)で行う事。ただし、居室にスプリンクラー設置で10分防火設備でok

条件⑤天井の高さが3m以上である事

ここで、注意して頂きたいのが本文に記載がありますが、この作戦①と次の作戦②には、一部の内装制限でしか使えないという条件があります。

要約すると、令第128条の4第1項第一号、第2項、第3項で定義されている内装制限のみで使えます。

※1作戦①②の緩和が使える最初の条件は?(要チェック)

1、令第128条の4第1項第一号:一定規模以上の特殊建築物(法文の表参照)

2、令第128条の4第2項:階数が3以上である建築物で、延べ面積が500m2を超えるもの

3、令第128条の4第3項:階数が2で延べ面積が1,000m2を超えるもの又は階数が1で延べ面積が3,000m2を超えるもの学校等の用途に供するものを除く。

ただし建築基準法別表第一欄項に掲げる用途又は病院、診療所(患者の収容施設がある ものに限る。)若しくは児童福祉施設等(令第115条の3第一号に規定する児童福祉施設等をいい 、通所のみにより利用されるものを除く。)については使えない。

ということで火気使用室などは緩和出来ません。(令第128条の4第4項なので)また、病院などの用途についても★部分で除かれているので使えません。

このように、場合によって使えないことがあります。なかなかややこしいですね。

 

作戦②警報設備とスプリンクラーを設けた建築物の部分

次は、告示第二号の部分です。こちらについても、作戦①と同様に、一部の内装制限でしか使えないという条件があります。

そちらを加味して条件をまとめると

作戦②で緩和をする条件6つ

条件①緩和が使える※1である事(作戦①と同じ条件)

条件②避難階又は避難階の直上階にある部分

条件③延べ面積が500平方メートル以内の建築物の部分(居室も避難経路も○)

条件④令第110条の5に規定する基準に従って警報設備(自動火災報知設備に限る。)を設け た建築物の部分

条件⑤屋外への出口等その他当該部分に存する者が容易に道に避難することができる出口を設ける事※3

条件⑥スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けている事

作戦①と異なり、区画などの条件は無いようです。しかし、条件⑤の容易に避難できるというものが、参考という事で国交省が技術的助言で紹介していますが、こちらの条件が追加になっています。

※3条件⑤屋外への出口等その他当該部分に存する者が容易に道に避難することができる出口を設ける事の内容について

当該部分の各部分から屋外への出口まで及び屋外への出口から道までの避難上支 障がないものとして必要な要件

(i) 当該部分の各部分から屋外への出口までの歩行距離が 20 メートル以下である こと

(ii) 戸や掃き出し窓である等当該部分の在館者が開口部を通じ屋外へ支障なく出ら れること

(iii) 屋外への出口から道に直接通ずるか、道に通ずる幅員(当該幅員は有効幅員) 50 センチメートル以上の通路その他の空地が設けられていること

(iv) 他の火災のおそれのある建築物の部分の前を通らずに避難できること

当該部分の各部分からバルコニーまで及びバルコニーから道までの避難上支障がないものとして必要な要件

(i) 当該部分の各部分からバルコニーへの出口までの歩行距離が 10 メートル以下であること
(ii) 在館者が開口部を通じバルコニーへ支障なく出られること
(iii) バルコニーが十分に外気に開放されていること
(iv) バルコニーから地上へ屋外階段、すべり台、タラップ等の当該部分に存する者の特性を踏まえた避難経路等が確保されており、バルコニーから地上までの避難経 路等について、バルコニーに通ずる各出口から地上までの二方向避難が確保されて いること又は他の火災のおそれのある建築物の部分の前を通らずに避難できること

(v) 車いすを利用する者の利用が想定される施設にあっては、バルコニーと同一階 にある屋上等の安全な一時退避場所を確保すること

(vi) 地上に通ずる部分から道に直接通ずるか、道に通ずる幅員(当該幅員は有効幅 員)50 センチメートル以上の通路その他の空地が設けられていること

③当該部分の各部分から屋外への出口に近接した出口まで及び屋外への出口に近接 した出口から道までの避難上支障がないものとして必要な要件

(i) 当該部分の各部分から屋外への出口に近接した出口までの歩行距離が 20 メー トル以下であること

(ii) 1(ii)と同じ

(iii) 縁側を通じた屋外への避難のように、当該部分の出口から屋外への出口が容易に把握でき、当該部分の出口から屋外への出口まで安全かつ容易に到達できる距離 にあること
(iv) 屋外への出口から道に直接通ずるか、道に通ずる幅員(当該幅員は有効幅員)50 センチメートル以上の通路その他の空地が設けられていること
(v) 他の火災のおそれのある建築物の部分の前を通らずに避難できること

技術的助言より

 

作戦③スプリンクラー設備と天井のみの内装制限をした建築物の部分

次は、告示第三号の部分です。

作戦③で緩和をする条件3つ

条件①緩和が使える※2である事

条件②緩和する建築物の部分の天井は準不燃材料にする事(壁だけ緩和可能)

条件③スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けている事

ここでのポイントは、天井は準不燃材料にしなければならないという事です。あくまで、壁だけ内装制限の緩和が可能な作戦ですね。

実はこの条件③についても①②と同様に一部の内装制限しか使えません。しかし、①②よりかは条件が緩いです。だから、使える条件では無く、使えない条件を紹介します。

※2作戦③の緩和が使えない条件の条文は?

1、令第128条の3の2に規定する居室:無窓居室

2、令第128条の4第1項第二号に掲げる特殊建築物の部分:自動車車庫又は自動車修理工場の用途に供する特殊建築物

3、令第128条の4第1項第三号に掲げる特殊建築物の部分:地階又は地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室で法別表第1(い)欄(1)項、(2)項又は(4)項に掲げる用途に供するものを有する特殊建築物

4、令第128条の4第4項に掲げる建築物の部分:火気使用室

またまた、自動車車庫や火気使用室は使えないですね。

 

作戦④スプリンクラーと排煙設備を設けた建築物

最後、告示第四号作戦です。

正直、圧倒的にわかりやすく、使いやすいように感じます。(前からあった緩和ですが)こちらの作戦については、難しい条件などは少なく、たった二つのみ。

作戦④で緩和をする条件2つ

条件①スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けている事

②令第126条の3の規定に適合する排煙設備を設けた建築物の部分

たったのこれだけ。難しい用途の制限も無いので、車庫だろうが、火気使用室であろうが、使えます。

 

まとめ:内装制限の緩和作戦は4つ

かなりごちゃごちゃしましたが、法改正によって追加された緩和の作戦は4つあり、

作戦①天井の高い建築物の居室部分(条件5つ)

作戦②警報設備とスプリンクラーを設けた建築物の部分(条件6つ)

作戦③スプリンクラー設備と天井のみの内装制限をした建築物の部分(条件3つ)

作戦④スプリンクラーと排煙設備を設けた建築物(条件2つ)

複雑な条文だったので、長くなってしましました。最後まで読んできただき、ありがとうございました。

 

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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