単体規定

【大規模木造の敷地内通路】1000㎡超(2棟以上は合計)の悲劇

今回はあまり聞きなれないかもしれませんが、『大規模な木造等の建築物の敷地内における通路』についてです。

法文で言うと、建築基準法施行令第128条の2ですね。

 

私はこの条文を『悲劇の条文』だと思っています(笑)

なぜかと言うと、

見落とす設計者さんが多く、見落とした代償が大きいから。

敷地内通路1.5mで馴染みの施行令第128条と同じと思ったら大間違いです。

もっとずっと厳しい法規制がかかります。

 

今回はあまり関わらない条文だと思うので、その内容の解説と、

なぜそんなに見落としが多いのか解説していきます。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

法適合が必要な建築物とは?

この条文がかかる建築物は大きく分けて2つです。

〈大規模な木造等の建築物の敷地内における通路〉
①主要構造部が木造(耐火建築物を除く)または一部主要構造部が木造で 1棟の 床面積が1000㎡を超える
②敷地内の2以上の建築物(耐火建築物、準耐火建築物を除く)で、 合計の 床面積が1000㎡超える

先程、この条文は見落とす設計者さんが多いとお話しましたが、

それは圧倒的に②の場合です。

 

①は、1棟で1000㎡超えなので、何かやばい法文がかかるんじゃないか?とアンテナを貼っている事が多いので、この条文を見つける事が出来ているようです。

しかし、問題は②なんです。これは、非常に見落としがちです。

どうして、②は見落としがちになってしまうのでしょうか?

 

そもそも、1000㎡という点が罠

そんな、1000㎡超の案件なんてやらないし、私には関係無い!

ですよねぇ…。でも、こんな方こそ、ノーチェックで進んでしまう法文なんです

1000㎡なんて関係無い!という方こそ、この法文に引っかかってしまうのです。

なぜなら、

この1000㎡超えるかどうかは、敷地の全ての建築物の合算だからです。

 

たとえば、300㎡の建築物が敷地内に4つ(300㎡×4=1200㎡)とか。

こんなのでも法適合が必要な可能性があります。

 

よく発生する事故事例は、増築の計画をする時。

増築する建築物の床面積が小さくても、増築後の敷地全体の建築物の床面積が1000㎡を超えてしまうというのはよくある話なのです。

だから、1000㎡なんてそんな大きな物件やらないから大丈夫!なんて思って計画したら、うっかり見落としてしまうかもしれません。

 

1棟で1000㎡を超える場合の解説

では、まずは①の主要構造部が木造(耐火建築物を除く)または一部主要構造部が木造で 1棟の 床面積が1000㎡を超える時の解説です。

もちろん、耐火建築物であれば1000㎡を超えても敷地内通路を設ける必要はありません。

そして、鉄骨造なども。(主要構造部が木造ではないので)

しかし、準耐火建築物は敷地内通路を設ける必要があります。(ここも落とし穴ですね)

 

ずばり、

建築物の周囲に1.5mの空地を設ける事(もし床面積3000㎡を超えたら1.5m→3mになる)

そう、周囲です。つまり、こういう事。

複数棟で1000㎡を超える場合の解説

では、次は問題の②敷地内の2以上の建築物(耐火建築物、準耐火建築物、延べ面積が1000㎡を超えるものを除く)で、 合計の 床面積が1000㎡超える時の解説です。

耐火建築物、準耐火建築物、延べ面積が1000㎡を超えるものは除くとありますが、これはとりあえず置いといてください。(ちょっと複雑なので)

 

法規制の内容は、

建築物の1000㎡のグループの周囲に3mの空地を設ける事

もう、こちらは3mです。

これが見落とすと、本当に辛いです。3mは簡単に設けられません。

そして、注目していただきたいのは、『建築物の1000㎡のグループ』というところ。

1000㎡のグループってなんなの?
それは、3m空地とれていない建築物同士でグループを作るって事

これが、実は法適合させるポイントなんです!

そう、3m空地とれていない部分でグループを作って検討する事がポイント。

こんな感じで。

このように、床面積1000㎡以下のグループを作って、そのグループの間に3m空地を設けるように計画すればok!

この中で、その他に2点程抑えてほしいポイントがあります。

ポイント①準耐火建築物、耐火建築物、延べ面積が1000㎡を超えるものはグループ分けからは除外

さて、ここで注目していただいたいのは、グループAの部分

準耐火建築物がグループ内に入ってきており、いいの??と思うかもしれません。

この準耐火建築物を含めると、1000㎡超えますからね。

 

これが、()書きの耐火建築物、準耐火建築物、延べ面積が1000㎡を超えるものは除くの部分なんです。

つまり、耐火建築物、準耐火建築物、延べ面積が1000㎡を超えるものはこのグループ分けでは無いものとして考えてokなんです。

検討からは無視してください。

 

ポイント②隣地境界線、道路境界線からの離れは3m確保不要

隣地境界線や、道路境界線との空地の3mは、先ほどの1棟で1000㎡超と異なり、

境界線からの離れは、制限がありません。

あくまで、他のグループと3m離れていればokです。

 

まとめ:敷地全体の建築物の床面積の合計が1000㎡を超えたら疑うべし

いかがでしたか?

こちらの法規制が出てくる建築物はそんなに多くないかもしれませんが、冒頭にお伝えした

見落としやすく、見落とした代償が大きい

という『悲劇の法文』なので、1000㎡を超えたら、この法文の事を思い出してください。

 

また、ブログの内容だけだと不安だなぁという方は、以下の図書がほんとにわかりやすいです。

合わせて確認してみましょう。

ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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