突然ですが、『建築』というと、どんなイメージを思い浮かべますか?
新しく建物を建てる、というイメージの方が多いとは思いますが、実は建築基準法では『建築』というのはその中でも4つに分かれています。
4つもあるなんてややこしいですね。
今回は4つの違いを法文も含めて整理してみたいと思います。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
建築についての定義
建築の定義は建築基準法第2条第1項第十三号に記載があり、全部で4つです。
①新築
②増築
③改築
④移転
(用語の定義)
第二条 十三 建築 建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう。
だから、建築基準法上に『建築』という文章で出てきた場合は、新築、増築、改築、移転、全てに該当するという事です。
建築の中の『新築』とは?
新築とは、更地の敷地に建築物を建てること
建築の中の『増築』とは?
増築とは、同一敷地内で建築物の床面積が増加すること
『敷地内で床面積が増加すること』という言葉から、増築というのは2つのケースが考えられます。
①敷地内の既存建物物と別棟で増築する(別棟増築)
②敷地内の既存建築物と一体で増築する(一体増築)
どちらもケースも、法文上は増築になります。
建築の中の『改築』とは?
改築とは、建築物の全部又は一部を取り壊した後、従前の建築物の用途、構造、規模に大きな変更がないこと
4つの中で一番改築がわかりづらいです。よって、改築については国土交通省から住指発第1400号で明確に回答しています。
(照会)
改築の定義をされたい。
(回答)
改築とは、建築物の全部若しくは一部を除却し、又はこれらの部分が災害等によつて滅失した後引続きこれと用途、規模、構造の著しく異ならない建築物を建てることをいう。従前のものと著しく異なるときは、新築又は増築となる。なお、使用材料の新旧を問わない。
新築、増築との違いが難しいですが、ポイントとなるのは。『従前の建築物から変更が無いこと』という部分です。
例えば、木造建築物を壊して同じ規模の木造建築物を建てるのは『改築』ですが、木造建築物を壊して鉄骨建築物を建てるのは『新築』です。
建築の中の『移転』とは?
移転とは、原則として同一敷地内で建築物を移転すること
なにか法的に違いが出てくるのか?
①確認申請の有無
一つ目の違いは、ズバリ確認申請の有無についてです。
増築、改築、移築の部分の床面積10㎡以下は確認申請が不要になる(ただし、防火地域、準防火地域以外に限る)
そちらについては以下の記事で確認してみてください。
②既存不適格の継続について
2つ目は既存不適格の継続についてです。
移転は既存不適格の継続が使いやすい
簡単に内容をご説明すると、建築基準法第86条の7より、移転だけ既存不適格の継続のハードルがめちゃくちゃ低いです。
(既存の建築物に対する制限の緩和)第86条の7
4 第三条第二項の規定により建築基準法令の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において移転をする場合においては、同条第三項第三号及び第四号の規定にかかわらず、建築基準法令の規定は、適用しない。
そちらについては既存不適格の記事でまた詳しく解説します。
まとめ:建築には、新築、増築、改築、移転がある
最後にこの4つの違いをまとめると、
新築 | 更地の敷地に建築物を建てること |
増築 | 同一敷地内で建築物の床面積が増加すること |
改築 | 建築物の全部又は一部を取り壊した後、従前の建築物の用途、構造、規模に大きな変更がないこと |
移転 | 原則として同一敷地内で建築物を移転すること |