天窓は無条件で採光補正係数3倍になる訳ではありません。
あくまで、採光補正係数を取りやすいだけ!
採光
住宅などなら必ず確保しなければならない重要な条文です。
採光補正係数の算定には 窓から隣地境界線までの離れ と 上部にあるバルコニーや庇の高さ
この2点によって算定するものです。
つまり、
隣地境界線からの離れが少ない狭小地や、
高層建物の1階部分
などは採光補正係数の確保がしづらいので、法適合させにくいのです。
そこで、採光を天窓で確保しようとします。
天窓は採光補正係数3倍で検討していいなんて法文のどこにも書いてませんよ!
そうなんです、
天窓が採光補正係数3倍で見ていいですよ!なんて、法文のどこにも書いていません。
天窓は採光が少し取りやすい窓ですが、基本的には他の窓と一緒のただの窓です。
実は、採光の切り札として使えないかもしれません。
今回は、この内容について掘り下げて話をしていきます。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
天窓は“採光補正係数”×3 できるだけ
条文で天窓の算定方法について確認をしてみる
まずは、条文の表記がどうなっているのか確認してみましょう。
建築基準法施行令第20条 2項 前項の採光補正係数は、次の各号に掲げる地域又は区域の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるところにより計算した数値(天窓にあつては当該数値に3.0を乗じて得た数値、その外側に幅90cm以上の縁側(ぬれ縁を除く。)その他これに類するものがある開口部にあつては当該数値に0.7を乗じて得た数値)とする。ただし、採光補正係数が3.0を超えるときは、3.0を限度とする。
天窓にあつては当該数値に3.0を乗じて得た数値
とありますよね?
具体的にはどうやって算定するのか?
採光補正係数の算定式は用途地域によって以下のように異なっています。
第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 第一種中高層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 第一種住居地域 第二種住居地域 準住居地域 |
D/H×6-1.4 |
準工業地域 工業地域 工業専用地域 |
D/H×8-1 |
近隣商業地域 商業地域 用途地域の指定のない区域 |
D/H×10-1 |
では、天窓の採光補正係数を求めてみましょう。
例 第一種低層区域→D/H×6-1.4
(3/10×6-1.4)×3(天窓なので)=0.4×3(天窓なので)=1.2
実際の算定方法を見ての通りなのですが、採光補正係数は通常の算定に3倍する事ができますが、
必ず採光補正係数3番確保する事ができません。
天窓=採光補正係数3倍
という考え方は大変危険です。
きっちり採光補正係数を求めましょう。
追加で、算定上注意点が2点あります。
そちらも確認してみましょう。
採光補正係数を求める時の注意点2点
上に庇がかかっている部分はそもそも算定に含める事ができない
天窓の上に庇がかかっている部分については、採光補正係数0となり、
算定に含める事ができません。
以下のように、庇が上部にかかっていない部分のみで 中心からDとHの算定を行ってください。
煙突っぽくなっている場合は、別途検討が必要になる
だったら、煙突っぽくして、出来るだけ上に天窓を付ければいいんじゃ無いの?
と考える方もいるのでは?
こんな風に。
確かに、Hが短くなるので、採光補正係数の確保ができそうですよね?
しかし、この場合は追加で検討が必要になってしまうのです。
(そりゃそうですよね。煙突状だと、実際に光が入って来づらいからですから)
よって、図のようなd、hで追加検討が必要です。
つまり、DHの検討を行った上で、d hでも検討をして
数値が低い方で採光補正係数の算定を行います。
煙突状にすると、あまり採光に期待ができなくなってしまうかもしれないので注意が必要です!
採光についての内容を図書で確認する
採光でよくまとまっているのは『確認申請memo』です。
かなり有名な書籍なので、お持ちの方が多いと思います。
そちらでも確認してみてください。
まとめ:天窓は採光確保の切り札では無い、注意深く検討すべし
いかがでしたか?
天窓だったら無条件で3倍確保できる!と思ったら大間違いという記事でした。
採光確保できないと、建築物の計画に大きな影響を与えてしまいます。
天窓は確かに採光補正係数の確保はしやすいですが、あまり頼りすぎていると痛い目に合ってしまうかもしれません。
何度も言いますが、
天窓は【採光補正係数計算×3】できるただの窓
です。
今回の記事で紹介した、採光補正係数の検討を用いて慎重に検討しましょう。