界壁(かいへき)ってなに?
界壁は、建築基準法でどんな規制がされているの?
界壁の仕様はどんなもの?
界壁に区画貫通する場合、どんな処置が必要?
界壁を緩和する方法はある?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
界壁とは、共同住宅・長屋の各住戸間を区切る壁のこと
界壁は、建築基準法により、所定以上の『遮音性能』と『防火性能』を満たす必要がある
界壁の仕様は、大臣は定めた構造とするか、大臣から認定をうけた『壁』とした上で、小屋裏・天井裏に達せしめる必要がある
界壁の壁に配管等を通す場合、区画貫通処理を行う必要がある
界壁の緩和は存在するが、完全に界壁を無くすことはできない
界壁は、共同住宅や長屋の規制では欠かせない存在です!しかし、内容については意外にも複雑で読みにくいです…
そこで、今回の記事では建築基準法の内容や緩和について、わかりやすく解説していきます!(X:sozooro)
 そぞろ
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元・指定確認検査機関員 5,000件超の審査実績。著書2冊(学芸出版社)は累計1.9万部、SNSフォロワー4万人超。実務者目線で建築法規を解説。 [▶︎詳細プロフィール] |
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『界壁』とは?
界壁とは…
共同住宅・長屋の各住戸間を区切る壁のことで、建築基準法の規制を受ける
共同住宅や長屋は、基本的に隣の住戸と壁を共有しています。この壁について、建築基準法では所定の基準を満たす必要があります。
Q.長屋・共同住宅以外に、界壁を有する建築物はないか?
長屋・共同住宅が界壁を有することはわかったけど…他の用途では不要ってこと?
A建築基準法では、長屋・共同住宅以外の用途では不要
つまり、寄宿舎やホテルのような用途については、界壁は存在しない
界壁として定義されているのは、あくまで、長屋・共同住宅のみです。他の用途については界壁には該当しないため、規制を受けることはないです。
ただし、条例で、ホテルに界壁と同じような規制が適用される…ということはあります!(東京都安全条例では、ホテルに遮音性能を求めています)念のため、注意しておきましょう!
Q.住戸と廊下等の壁は、界壁には該当しないか?
共同住宅・長屋の住戸間ってことは…住戸と廊下等の間の壁は、界壁ではないから規制は受けないってことでいいのかな?
A基本的には、該当しない。
ただし、住戸と廊下等の小屋裏部分については、住戸間の延焼等を防止するため、界壁として所定の基準に適合させることが望ましい
上記回答の根拠は、 『建築物の防火避難規定の解説2023』です。
各戸の界壁とは、住戸間の壁をいい、住戸と廊下等の境の壁は該当しない。ただし、共同住宅における廊下部分の小屋裏については、住戸間の延焼を防止するため、下図の①及び②のように界壁と同等の措置を講ずることが望ましい。
引用:建築物の防火避難規定の解説2023p134
書籍には図解なども記載されて解説されていますので、詳細は書籍で確認をしてください!
界壁ではなく、『界床(かいしょう)』とは?
A建築基準法で定められているのは、界壁のみ。
界床という用語は存在しない。
ただし、建築基準法にないだけで、性能評価では界床という用語が存在します!
出てきた時は、動揺しないようにしましょう!
界壁の『建築基準法を満たす仕様』とは?
界壁は、下記2つのすべてを満たす必要がある
- 所定の『遮音性能』を有する壁とし、小屋裏・天井裏に達せしめる(法30条)
- 所定の『防火性能』を有する壁とし、小屋裏・天井裏に達せしめる(令114条1項)
界壁は、遮音性能と防火性能、どっちも満たす必要があるんだね!
そうです!さらに、2つの性能を有する壁を、小屋裏・天井裏に達せしめる必要があります!これも界壁に大きなポイントです!
引用:建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)について
界壁とは、簡単に言うと、住戸間の騒音・火災の延焼を防ぐことを目的としています。そして、騒音や火災は、小屋裏・天井裏を伝って住戸間に伝わってしまうこともあります。だから、小屋裏・天井裏に達せしめる必要があるのです。
続けて、満たすべき『遮音性能』と『防火性能』について詳しく解説していきます。
界壁が満たすべき仕様①『遮音性能』について
界壁に求められる『遮音性能』とは
隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、下記いずれかに該当するもの(法30条)
- 国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの
- 国土交通大臣の認定を受けたもの
要するに、大臣が定めた構造方法とするか、大臣から認定を受けたものとする必要があります。それぞれ、どうやって確認すればいいのか、解説していきます。
ちなみに、具体的な性能を定めている技術的基準については、令22条の3に記載されているので、確認してみてください
クリックで令22条の3を確認
令22条の3
法第三十条第一項第一号(法第八十七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、次の表の上欄に掲げる振動数の音に対する透過損失がそれぞれ同表の下欄に掲げる数値以上であることとする。
| 振動数(単位 ヘルツ) |
透過損失(単位 デシベル) |
| 一二五 |
二五 |
| 五〇〇 |
四〇 |
| 二、〇〇〇 |
五〇 |
2 法第三十条第二項(法第八十七条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、前項に規定する基準とする。
大臣が定めた『構造方法』にする
告示の内容については、下記に記載していますので、該当するように計画をしてください。
クリックで告示1827号を確認
告示1827号
第一 下地等を有しない界壁の構造方法
建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号。以下「令」という。)第二十二条の三第一項に規定する技術的基準に適合する間柱及び胴縁その他の下地(堅固な構造としたものに限る。以下「下地等」という。)を有しない界壁の構造方法は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
一 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄骨コンクリート造で厚さが十センチメートル以上のもの
二 コンクリートブロック造、無筋コンクリート造、れんが造又は石造で肉厚及び仕上げ材料の厚さの合計が十センチメートル以上のもの
四 厚さが十センチメートル以上の気泡コンクリートの両面に厚さが一・五センチメートル以上のモルタル、プラスター又はしつくいを塗つたもの
五 肉厚が五センチメートル以上の軽量コンクリートブロツクの両面に厚さが一・五センチメートル以上のモルタル、プラスター又はしつくいを塗つたもの
六 厚さが八センチメートル以上の木片セメント板(かさ比重が〇・六以上のものに限る。)の両面に厚さが一・五センチメートル以上のモルタル、プラスター又はしつくいを塗つたもの
七 鉄筋コンクリート製パネルで厚さが四センチメートル以上のもの(一平方メートル当たりの質量が百十キログラム以上のものに限る。)の両面に木製パネル(一平方メートル当たりの質量が五キログラム以上のものに限る。)を堅固に取り付けたもの
八 厚さが七センチメートル以上の土塗真壁造(真壁の四周に空隙のないものに限る。)
第二 下地等を有する界壁の構造方法
令第二十二条の三第一項に規定する技術的基準に適合する下地等を有する界壁の構造方法は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
一 下地等の両面を次のイからニまでのいずれかに該当する仕上げとした厚さが十三センチメートル以上の大壁造であるもの
イ 鉄網モルタル塗又は木ずりしつくい塗で塗厚さが二センチメートル以上のもの
ロ 木毛セメント板張又はせつこうボード張の上に厚さ一・五センチメートル以上のモルタル又はしつくいを塗つたもの
ハ モルタル塗の上にタイルを張つたものでその厚さの合計が二・五センチメートル以上のもの
ニ セメント板張又は瓦張の上にモルタルを塗つたものでその厚さの合計が二・五センチメートル以上のもの
二 次のイ及びロに該当するもの
イ 界壁の厚さ(仕上材料の厚さを含まないものとする。)が十センチメートル以上であり、その内部に厚さが二・五センチメートル以上のグラスウール(かさ比重が〇・〇二以上のものに限る。)又はロックウール(かさ比重が〇・〇四以上のものに限る。)を張つたもの
ロ 界壁の両面を次の(1)又は(2)のいずれかに該当する仕上材料で覆つたもの
(1) 厚さが一・二センチメートル以上のせつこうボード、厚さが二・五センチメートル以上の岩綿保温板又は厚さが一・八センチメートル以上の木毛セメント板の上に厚さが〇・〇九センチメートル以上の亜鉛めつき鋼板を張つたもの
(2) 厚さが一・二センチメートル以上のせつこうボードを二枚以上張つたもの
大臣から『認定』を受ける
界壁は、大臣からの認定を受けた場合でも認められています。認定の番号に関しては、『SOI』からはじめる認定番号であることを確認すればOKです。
界壁が満たすべき仕様②『防火性能』について
界壁に求められる『防火性能』とは
準耐火構造とすること
遮音性能と比較して、防火性能については比較的簡単です。シンプルに、準耐火構造で計画するだけでOKです。
準耐火構造についても、大臣が定めた構造方法とするか、大臣から認定を受けたものとする必要があります。詳しくは、下記の記事で確認してください
Q.界壁に区画貫通処理は必要になる?
界壁に対して設備配管等を貫通するんだけど、処置は必要になる?
A法文にも明記されているため、必要(令114条5項)
内容としては、下記に定めるもの(防火区画と同じです)
貫通する給水管・配電管等の措置
以下2つ全てに適合させること
①管と防火区画との隙間をモルタル等の不燃材料で埋めること
②以下3つのいずれか1つに適合させること
・貫通する部分からそれぞれ両端1m以内の距離にある管を不燃材料で造ること
・管の外径が、用途、材質その他の事項に応じて告示1422号が定める数値未満であること
・国土交通省の認定を受けたもの
貫通する換気、暖房、冷房の風道等の措置
特定防火設備であって、大臣が定めた構造又は大臣の認定したものであること
界壁には区画貫通しないことが1番なんでしょうけど…やむを得なく貫通する場合には、処理が必要になります!
界壁の『緩和』について
界壁の緩和は、『遮音性能』と『防火性能』について、個別に定められている
結論として、界壁の規制を完全に無くすことは出来ない
界壁には法30条の遮音性能に関する規制と、令114条1項による防火性能の2つを満たす必要があると説明しました。そして、緩和はそれぞれ個別に用意されています。
つまり、遮音性能と防火性能の2つの緩和を確認しなくてはなりません!
そして、防火性能の方は規制を適用除外することが出来ますが…遮音性能の方は完全に適用除外することは出来ないという内容になっています。
では、それぞれの規制内容を確認してみましょう。
界壁の緩和①小屋裏・天井裏に達せしめる必要がなくなる
下記の対策を行うことで、界壁を小屋裏・天井裏に達せしめる必要がなくなる
| 遮音性能(法30条) |
天井を告示(1827号)または大臣認定に適合した構造にする |
| 防火性能(令114条1項) |
天井を強化天井にする |
どちらの界壁も、原則として、小屋裏・天井裏に達せしめる必要があります。これは、小屋裏・天井裏で音が伝わったり、火災が延焼することを防ぐためです。
だから、小屋裏・天井裏に音や火災が届かないように、天井を強化すればOKということです。
引用:住宅設計のための建築法規
ただし、あくまでも小屋裏・天井裏に達せしめる必要がないためで、壁部分の性能は満たす必要がありますので、注意しましょう。
界壁の緩和②界壁の規制を無くす
所定の措置を行うことで、界壁の規制が適用除外される
| 遮音性能(法30条) |
緩和なし |
| 防火性能(令114条1項) |
床面積200㎡以内ごとに準耐火構造の壁及び 20分防火設備で区画し、自動式スプリンクラー を設置する |
そうなんですよ!だから、界壁の防火性能は無くすことが出来ても、結局、遮音性能については無くすことができないということです…
言われてみれば当然ですが、スプリンクラーなどを設置することで、防火性能が無くせるというのは納得ができます。しかし、遮音性能については、いくら建築設備をも受けたところで、騒音を軽減させることは出来ません。
だから、界壁の遮音性能を無くすことは出来ないということになります。
法文で確認する【建築基準法30条、施行令114条1項】
界壁は、『建築基準法30条、建築基準法施行令114条1項』に記載されています。
建築基準法30条
長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
一 その構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
二 小屋裏又は天井裏に達するものであること。
2 前項第二号の規定は、長屋又は共同住宅の天井の構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために天井に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、適用しない。
建築基準法施行令114条1項
長屋又は共同住宅の各戸の界壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁を除く。)は、準耐火構造とし、第百十二条第四項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。
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まとめ
✔️界壁とは、共同住宅・長屋の各住戸間を区切る壁のことで(住戸と廊下等の間の壁は、原則として、該当しない)
✔️界壁は、下記2つの性能を有する必要がある
- 所定の『遮音性能』を有する壁とし、小屋裏・天井裏に達せしめる(法30条)
- 所定の『防火性能』を有する壁とし、小屋裏・天井裏に達せしめる(令114条1項)
✔️界壁には、緩和が存在する。ただし、小屋裏・天井裏に達せしめることは緩和しやすいが、界壁の規制自体を適用除外することは難しい
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この記事を書いた人
元・指定確認検査機関員
5,000件超の審査実績。著書2冊(学芸出版社)は累計1.9万部、SNSフォロワー4万人超。実務者目線で建築法規を解説。