単体規定

避難安全検証法とは?最低限知っておきたい情報をわかりやすく解説

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避難安全検証法ってなに?

排煙免除できるというメリットがあるって聞いたけど本当?

どんな建築物に使えるの?

緩和を使う場合の注意点は何?

避難安全検証法をとりあえず試してみたいんだけど、オススメの使い方は?

今回の記事ではこんな疑問に法的根拠を元に答えます。

ざっくりまとめると、

避難安全検証法とは、所定の計算をすることで、建築基準法の一部を適用除外することが出来る性能規定

避難安全検証法には、全館・階・区画の3つがあり、適用除外の内容も異なる

主として、排煙設備・内装制限など適用除外が可能

一部建築物には避難安全検証法の適用出来ない

面積区画や重複距離など、適用除外出来そうで出来ないものもあるので、注意は必要!

1番やりやすいのは、区画避難安全検証法で居室1室だけを区画して、排煙設備を適用除外すること

避難安全検証法は、使えると便利な性能規定です!

しかもちょっとマイナーなので詳細な内容は防災コンサルさんしか知らなかったりします…

そこで、今回は最低限知っておいて欲しい避難安全検証法の話をわかりやすく解説して行きます!sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

避難安全検証法とは?

避難安全検証法とは…

所定の計算を行うことにより、建築基準法の一部を適用除外することが出来る性能規定

建築基準法には、仕様規定と性能規定が存在しています。仕様規定は、法文に書いてある具体的な内容をそのまま適用させればok。一方、性能規定は法文に書いてある『性能』を満たしていることを検討する代わりに、建築基準法一部の規制を適用除外することが出来ます。

避難安全検証法は、性能規定です。つまり、法文に記載されている『性能』を計算等で確かめることが出来れば、建築基準法の一部、主に防火・避難規定を適用除外することが出来ます。

その性能や確かめる方法が以下の法文に記載されています。

施行令 告示
区画避難安全性能を有するもの 第128条の6 告示474号・509号
避難安全性能を有するもの 令129条 告示475号・510号
全館避難安全性能を有するもの 第129条の2 告示476号・511号
なるほどね。ところで、区画・階・全館って項目が分かれているけど、これはどういうこと?
避難安全検証法は、建築物のどこの部分で検討をするかで、区画・階・全館の3つの検討方法に分かれるのです!後ほどの適用除外の部分でも登場するので、ざっくりですがまとめておきます。
区画避難安全性能を有するもの 建築物の区画された部分のみで検討を行う
階避難安全性能を有するもの 建築物の階のみで検討を行う
全館避難安全性能を有するもの 建築物全体で検討を行う
例えば、3階建ての3階のみで階避難安全検証法を行う場合、後ほどご紹介する適用除外が受けられるのは3階のみとなります!

適用除外できる規制一覧

避難安全検証法を行なった場合、建築基準法の一部の規制を適用除外することが出来ます。その項目を、一覧にしてまとめました。

項目 規定の概要 ○:適用除外できるもの
区画避難安全性能を有するもの 階避難安全性能を有するもの 全館避難安全性能を有するもの
防火区画 112 7 11階以上の100m²区画
11 竪穴区画
12 竪穴区画
13 竪穴区画
18 異種用途区画
避難施設 119 廊下の幅
120 直通階段までの歩行距離
123 1 屋内避難階段の構造
第一号 耐火構造の壁
第六号 防火設備
2 屋外避難階段の構造
第二号 防火設備
3 特別避難階段の構造
第一号 付室の設置
第二号 排煙設備の設置
第十二号 付室などの面積
第十号 防火設備
第三号 耐火構造の壁
124 1 物品販売業を営む店舗における避難階段等の幅
第二号 階段への出口幅
第一号 避難階段等の幅
屋外への出口 125 1 屋外への出口までの歩行距離
3 物品販売業を営む店舗における屋外への出口幅
排煙設備 126の2 排煙設備の設置
126の3 排煙設備の構造
内装制限 128の5 特殊建築物等の内装(第2、6、7項および階段に係る規定を除く) 自動車車庫等、調理室等
結構色んな項目が多いのね!
そうなんです!

中でも適用除外する項目で最も多いのは『排煙設備』ですね。

排煙設備は、告示で逃げる事も出来ます。ただし、居室で床面積100㎡を超えてくると、告示で逃げることは出来ません。つまり、排煙設備の設置が必要ということです。自然排煙設備ならまだしも、機械排煙設備の施工費は結構かかります。だから、避難安全検証法で適用除外してしまうケースが多いです。

排煙設備の緩和については以下の記事を参考にしてください。

他には、一応は内装制限も適用除外出来ますが、あまり除外はされません。なぜなら、避難安全検証法の計算の中に、内装によって異なる数値があるのですが、この数値が内装を準不燃材料以上にしないと計算の足をかなり引っ張って、成立が難しくなるからです。ただし、絶対にできないというわけではなく、ルートCやルートB2の場合は内装を準不燃材料以上にしなくとも成立する可能性が高いようです。(ルートA・B・Cの違いについては、後日解説を出そうと思っています)

避難安全検証法を使うことが出来る建築物について

避難安全検証法を使うことができるのは以下2つどちらも満たす建築物

  • 主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られた建築物※1
  • 自力避難が困難と考えられる用途(病院、診療所、児童福祉施設、老人ホームなど)以外の用途であること※2

※1…ルートCの場合は例外もあり得る

※2…ルートB2やルートCの場合は自力避難が困難と考えられる用途でも可能な場合がある

まず、それぞれの避難安全検証法の施行令により『主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られた建築物』にしか適用出来ない旨が記載されています。

また、用途については自力避難が困難と考えられる用途は原則として除かれています。

一応、ルートB2やルートCであればこの条件を満たす必要が無いようにも法文に記載さてています。しかし、法文でそのように読めるだけで、実際に計画するのは困難です。実質、この条件を満たさなければ避難安全検証法は使えないと考えておいた方がいいでしょう。

思ったり、色んな建築物で避難安全検証法は使えそう!
そうですね!ただ、実際にはこの他にも共同住宅・戸建住宅・ホテルなどの用途の建築物には避難安全検証はあまり使われません!

なぜなら、共同住宅・戸建住宅・ホテルは令126条の2第1項一号等の区画をすれば簡単に排煙設備なんかは適合出来てしまうので、あまり避難安全検証法を適用するメリットがありません。また、計算上も天井高さがあまり高くない為、成立も難しいです。

避難安全検証法で注意すべき事項

避難安全検証法を使おうと思っているけど、何か注意すべきことはある?
適用除外出来そうで出来ない規制があるので、そちらは最低限把握しておいた方がいいです!

せっかく避難安全検証法を使ったのに、期待していた規制の適用除外が出来ないのはかなり痛いです。しかも、避難安全検証法には、適用除外出来そうで、出来ない紛らわしい規制があります。

そこで、今回は適用除外出来そうで出来ない規制3つをご紹介します。

重複距離

驚きなのですが、歩行距離(令120条)は適用除外出来るのですが、重複距離(令121条3項)は適用除外出来ません!

避難安全検証法では、歩行距離(令120条)の適用除外を受けることが多いです。平面的に大きな建築物だと、結構簡単に歩行距離が適合しなくなります。階段を増やせば適合するかもしれませんが、それが難しい場合は避難安全検証法はかなり有効です。

だからこそ、頭から抜けてしまうのですが、似たような規制の重複距離(令121条3項)は避難安全検証法で適用除外出来ないのです。

重複距離が避難安全検証法で適用除外できないことは、勘違いをしている方が最も多いので、特に注意が必要です…!

面積区画

防火区画の4つ(面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画)の中で唯一、面積区画だけは適用除外が出来ません。

他の区画が適用除外できるだけに、勘違いが発生しやすい規制なので注意が必要です。

避難階の歩行距離(ただし、全館避難安全検証法を除く)

避難階以外に適用される歩行距離(令120条)は階避難安全検証法で適用除外できるにも関わらず、

避難階に適用される歩行距離(令125条)は階避難安全検証法で適用除外が出来ず、全館避難安全検証法までしなくてはなりません!

同じような歩行距離についての規定にも関わらず、適用除外ができる検証法が異なるというのが紛らわしいです。

当然、階避難安全検証法より全館避難安全検証法の方が検討すべき内容が多く、成立も難しいです。階避難安全検証法で避難階の歩行距離の規制も適用除外できると勘違いしてしまうと、大変なことになります。注意するようにしましょう。

お手軽に避難安全検証法を使う方法

ちょっと避難安全検証法を使ってみたいけど、なんか難しそう…
比較的簡単に出来るのは、居室1室だけを区画して、『区画避難安全検証法』を行うことです!

これで排煙設備を適用除外しましょう!

簡単に説明すると、区画避難検証法は本来であれば『居室避難』と『区画避難』の検討が必要です。しかし、1室だけを区画した場合の検討だと、『居室避難』だけでOKとなります。(パブリックコメントより)

とにかく、検討が少なくて比較的簡単に排煙設備が適用除外できるってこと!

ルートB1の場合、面積が大きくて天井高さが高い居室は比較的成立がしやすいです。これに該当しそうなら、避難安全検証法を試してみてもいいかもしれません。

まとめ

✔️避難安全検証法とは、所定の計算をすることで、建築基準法の一部を適用除外することが出来る性能規定

✔️避難安全検証法には、全館・階・区画の3つの方法があり、それぞれ適用除外の方法が異なる

✔️避難安全検証法が適用できる建築物は以下の通り

  • 主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られた建築物
  • 自力避難が困難と考えられる用途(病院、診療所、児童福祉施設、老人ホームなど)以外の用途であること※

✔️以下の規制は避難安全検証法で適用除外出来そうで、出来ない規制なので注意が必要

  • 重複距離
  • 面積区画
  • 避難階における歩行距離(ただし、全館避難安全検証法では適用除外可能)

✔️避難安全検証法で比較的簡単に出来るものは居室1室だけを区画して、『区画避難安全検証法』を行い、排煙設備を適用除外すること

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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