どんな区画をしなくてはならないの?
防火区画に緩和はあるの?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
『面積区画』『高層区画』『竪穴区画』『異種用途区画』の4つのことを示す
防火区画とは、区画する方法』も『緩和方法』も異なる
それぞれの防火区画によって、『では、早速解説していきます。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
『防火区画』とは
火災発生時に火災拡大を防止する為に行う区画のこと。 防火区画とは、
火災が発生した場合、建築物内に区画が無ければ、遮るものが無い訳ですから、あっという間に火災が広がってしまいます。
そこで、建築物の内部で防火上有効な区画を行い、火災拡大を防止します。これが、防火区画です。
4つの防火区画
- 面積区画(令112条1項〜6項)
- 高層区画(令112条7項〜10項)
- 竪穴区画(令112条11項〜15項)
- 異種用途区画(令112条18項)
それぞれ、『区画が必要になる建築物』と『区画方法』が異なります。(この条件がなかなかわかりにくいので厄介です。)
4つ全ての防火区画において、確認をしていきましょう。
『面積区画』について
区画が必要になる建築物 | 区画面積 | 区画方法 | |
壁・床の構造 | 防火設備の種別 | ||
準耐火建築物 |
主要構造部を耐火構造とした建築物床面積≦1500㎡ | 1時間準耐火構造 | 特定防火設備※1 |
法21条・法27条・法61条・法67条により、準耐火構造を義務付けられた以下の建築物 準耐火建築物(1時間以上を除く) 準耐火建築物(ロ-1) |
床面積≦500㎡(防火上主要な間仕切壁も必要) | ||
法21条・法27条・法61条・法67条により、準耐火構造を義務付けられた以下の建築物 準耐火建築物(1時間以上) 準耐火建築物(ロ-2) |
床面積≦1000㎡ | ||
※1…以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、以下2つのいずれかと連動して自動閉鎖するもの ・煙感知器 ・熱煙複合式感知器 |
所定以上の面積を有する建築物には、面積区画が必要になります。基準となる面積は、主要構造部だけでなく、どの規制に該当するか?によっても異なっていますので、なかなか理解が難しいです。
面積区画について、詳しくは以下の記事にまとめていますので、ご確認ください。
『高層区画』について
区画が必要になる建築物 | 建築物の内装・用途 | 区画面積 | 区画方法 | |
壁・床の構造 | 防火設備の種別 | |||
建築物の11階以上の部分 | 一般の建築物 | 床面積≦100㎡ | 耐火構造 | 防火設備※1 |
内装仕上げ・下地: 準不燃材料 (床面から1.2m以上の範囲) |
床面積≦200㎡ | 特定防火設備※1 | ||
内装仕上げ・下地: 不燃材料 (床面から1.2m以上の範囲) |
床面積≦500㎡ | 特定防火設備※1 | ||
共同住宅の住戸部分 | 床面積≦200㎡ | 特定防火設備※1 | ||
※1…以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、以下2つのいずれかと連動して自動閉鎖するもの ・煙感知器 ・熱煙複合式感知器 |
高層区画は内装によって、区画面積や区画方法が異なります。階数によって違いなく、11階以上は全て同じ条件です。少し意外ですよね。
詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
『竪穴区画』について
区画が必要になる建築物 | 区画する部分 | 区画方法 | |||
壁の構造 | 床の構造 | 防火設備の種別 | |||
① | 以下の建築物で、地階又は三階以上の階に居室を有するもの 主要構造部を準耐火構造(または、耐火構造)とした建築物 令136の2-1-ロの基準適合建築物 令136の2-2-ロの基準適合建築物 |
竪穴部分とその他の部分 | 準耐火構造 | 準耐火構造 | 防火設備※2 |
② | ①以外の建築物で 病院・診療所・児童福祉施設等で階数3かつ延べ面積<200㎡ |
間仕切壁 | ー | 防火設備 ※2※3 |
|
③ | ①以外の建築物で 共同住宅・ホテル・寄宿舎で階数3かつ延べ面積<200㎡ |
間仕切壁 | ー | 戸(ふすま・障子等は不可)※2 | |
※2…遮煙性能付きで以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、煙感知器と連動して自動閉鎖するもの ※3…居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた建築物の竪穴部分については、10分間防火設備にしても良い |
竪穴区画は比較的小規模な建築物であっても対象となる防火区画です。よって、防火区画の中では一番よく出てくる規制とも言えます。
竪穴部分を守り、建築物内に煙が広がるのを防ぐ、重要な規制です。詳しくは、以下の記事を確認ください。
『異種用途区画』について
区画が必要になる建築物 | 区画方法 | |
壁・床の構造 | 防火設備の種別 | |
法27条第1項、第2項、第3項のいずれかに該当する建物 | 1時間準耐火構造 | 特定防火設備※2 |
※2…遮煙性能付きで以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、煙感知器と連動して自動閉鎖するもの |
法27条といったら、特殊建築物に対する規定です。要するに特殊建築物とその他の用途を区画しばくてはならないという規定です。詳しくは、以下の記事を確認ください。
防火区画の区画方法とは?(比較してみた)
面積 | 高層 | 竪穴 | 異種用途 | |
壁・床の構造 | 1時間準耐火構造 | 耐火構造 | 準耐火構造 | 1時間準耐火構造 |
防火設備の種別 | 特定防火設備 | 防火設備OR特定防火設備 | 防火設備 | 特定防火設備 |
区画方法は、種類によって若干の違いがありますので、整理しておきましょう。
また、防火区画は、併用などをすることも可能です。その場合は、上位の性能である区画を選択しなくてはなりせんので、注意しましょう。
防火区画の開口部の閉鎖方法とは?(比較してみた)
面積 | 高層 | 竪穴 | 異種用途 | |
開口部の閉鎖方式 | 一号扉 | 一号扉 | 二号扉 | 二号扉 |
区画に用いる開口部は、単純に防火設備などではなく、閉鎖方式に指定があります。
ちなみに、一号、二号と使い分けている理由は、令112条19項一号なのか、二号なのかの違いによるものです。
閉鎖方式についての性能は以下の通りです。
一号扉について
一号扉とは?
①常時閉鎖式
②随時閉鎖式で、以下2つのいずれかと連動して自動閉鎖するもの
・煙感知器
・熱煙複合式感知器
具体的には、以下のものです。
- 告示仕様(告示2563号)に適用していること
- 大臣認定(CAT-⚫︎⚫︎⚫︎)を取得しているものであること
二号扉について
二号扉とは?
遮煙性能付きで以下のいずれかの構造
①常時閉鎖式
②随時閉鎖式で、煙感知器と連動して自動閉鎖するもの
具体的には、以下のものです。
- 告示仕様(告示2564号)に適用していること
- 大臣認定(CAS-⚫︎⚫︎⚫︎)を取得しているものであること
防火区画の貫通部分の処理とは?
面積 | 高層 | 竪穴 | 異種用途 | |
適用の有無 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
所定の措置をしなくてはならない 防火区画に配管等を貫通する場合は、
防火区画には、原則として、貫通をしない方が良いです。しかし、やむを得ず貫通をしてしまう場合もあるかと思います。
その場合、所定の措置をしなくてはなりません。(建築基準法施行令112条20項、21項)
貫通する給水管・配電管等の措置
以下2つ全てに適合させること
①管と防火区画との隙間をモルタル等の不燃材料で埋めること
②以下3つのいずれか1つに適合させること
・貫通する部分からそれぞれ両端1m以内の距離にある管を不燃材料で造ること
・管の外径が、用途、材質その他の事項に応じて告示1422号が定める数値未満であること
・国土交通省の認定を受けたもの
貫通する換気、暖房、冷房の風道等の措置
特定防火設備(又は防火設備)であって、大臣が定めた構造又は大臣の認定したものであること
スパンドレルは必要か?
面積 | 高層 | 竪穴 | 異種用途 | |
適用の有無 | ◯ | ◯ | ◯ | × |
異種用途区画以外は、スパンドレルの計画が必要です
スパンドレルとは、建築物の内部からではなく、外部からの回り込みによる延焼を防止するための規定です。
面積区画とぶつかる外壁は、そこを含む90㎝以上の外壁を準耐火構造とするか、50㎝以上突出した庇を準耐火構造とし、開口部があった場合は防火設備としなくてはなりません。
図
防火区画の免除・緩和について
それぞれの区画によって異なる。 防火区画の免除・緩和は、
防火区画には緩和があります。しかし、その緩和については種類によって異なります。したがって、種類ごとに確認した方が良いでしょう。
『面積区画』の緩和
面積区画で使える緩和
- 以下の建築物の部分は、面積区画不要
面積区画の種類 | 緩和 |
1500㎡区画 |
|
1000㎡区画 |
以下に該当する建築物の部分で、天井・壁の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものは区画不要
|
500㎡区画 |
- スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもの(自動式)を設けた部分は、その部分の床面積の1/2を区画面積から除くことが出来る
正直、他の緩和は特定の用途にしか使えなかったりするので、用途によっては全く使えません…。
面積区画は、緩和の種類が多いように見えて、実は特定の用途にしか使えない緩和が多いので、どんな用途の建築物にも使える緩和は、スプリンクラーの設置くらいです。基本的に、緩和よりは区画することを選ぶ方が多いと思われます。
『高層区画』の緩和
高層区画で使える緩和
- 『階段室の部分若しくは昇降機の昇降路の部分』で耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画した場合、高層区画不要(令112条10項)
- 『廊下その他避難の用に供する部分』で耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画した場合、高層区画不要(令112条10項)
- スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもの(自動式)を設けた部分は、その部分の床面積の1/2を区画面積から除くことが出来る(令112条1項)
区画することで避難上支障となる避難部分は緩和の対象となります。しかし、他にはスプリンクラーの緩和以外、使えるものがありません。
『竪穴区画』の緩和
竪穴区画で使える緩和
以下に該当する竪穴部分は、竪穴区画不要
- 避難階からその直上階・直下階に通ずる竪穴部分(仕上げを不燃材料とし、下地を不燃材料で造った場合に限る)(令112条9項一号)
- 階数が3以下かつ延べ面積200㎡以内の一戸建て住宅の竪穴部分(令112条9項二号)
- 階数が3以下かつ床面積の合計が200㎡以内の長屋・共同住宅の竪穴部分(令112条9項二号)
以下に該当する竪穴部分は、一の竪穴区画とみなして適用される
- 竪穴部分と他の竪穴部分が隣接している場合、同一の竪穴区画とみなすことが出来る(仕上げを準不燃材料とし、下地を準不燃材料で造った場合に限る)(令112条14項一号)
- 竪穴部分と他の竪穴部分が用途上区画することが出来ない場合、同一の竪穴区画とみなすことが出来る(令112条14項二号)
竪穴区画は、比較的使いやすい緩和が多いです。詳しくは、以下の記事を確認してみてください。
これに加えて、竪穴区画はロ耐火だったら区画が不要になったりするので、合わせて確認してみてください。
『異種用途区画』の緩和
異種用途区画で使える緩和
特定の条件を満たす場合
同一事業者が管理するなど、異種用途であっても、物品販売業を営む店舗の一角にある喫茶店・食堂・ホテルのレストラン等で、下記の要件を満たす場合には、区画は不要とすることができる
- 管理者が同一であること
- 利用者が一体施設として利用するものであること
- 利用時間がほぼ同一であること
- 自動車車庫・倉庫等以外の用途であること
国土交通省が定める基準を満たす場合
- 異種用途区画が発生する原因が、特定の用途である事
- 床部分は必ず区画する事(緩和できるのは同一階の部分のみ)
- 隣接する部分には一部用途は設けない事
- 警報設備(自動火災報知器)を両者の用途どちらにも設ける事
最近になって、緩和が追加されました!条件は複雑ですが、比較的使いやすい緩和になっています!
異種用途区画は、数年前まで法文上で定められた緩和がない規定でしたが…
最近、緩和が追加されました。ぜひ、以下の記事で詳細な内容を確認してみてください。
まとめ
✔️防火区画は、火災発生時に火災拡大を防止する為に行う区画のこと。以下の4つがある
- 面積区画(令112条1項〜6項)
- 高層区画(令112条7項〜10項)
- 竪穴区画(令112条11項〜15項)
- 異種用途区画(令112条18項)
✔️防火区画に配管を貫通させる場合は、所定の処置が必要となる
✔️防火区画の緩和は、緩和も区画方法も異なるので、それぞれの規制に応じて、規制内容を確認する必要がある