抜け道や裏技はあるかな?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
採光上有効な開口部が必要
住宅の居室には、しかし、以下の3つの方法で対応することも可能
- 居室ではなく、非居室として利用する(有名な方法)
- 照明設備で、数値の緩和を受ける(法改正で追加になった内容)
- 用途上やむを得ない居室として計画する(難易度MAX!)
しかし、対応する手段がないことはないので、確認してみてください!twitter:sozooro)
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書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
住宅の居室には、採光上有効な開口部が必要
『居室の床面積×1/7』以上の採光上有効な開口部が必要 法28条により、住宅の居室には、原則として
住宅の居室には、採光上有効な開口部が必要になります。
採光上有効な開口部の求め方は、以下の通りです。
採光上有効な開口部=窓の開口面積×採光補正係数
採光補正係数については、以下の記事を確認してみてください。
採光が取れない…抜け道はあるの?
何か、抜け道や裏技はないかな?
無いことはないですが、万能で使える抜け道はないです!
原則として、住宅の居室であれば、採光上有効な開口部は確保するしかないです。居住者の方が、窓はいらない!と主張されても、住宅の居室であれば必要です。これは法律で定れていることですから、遵守しなくてはなりません。
ただし、全く方法が無いということではありません。抜け道や裏技と言えるものではありませんが、手段はあります。
住宅居室の採光規定に対する手段
- 居室は諦めて、納戸などの『非居室』とする
- 『照明設備』を設置して、必要面積の緩和を受ける
- 『用途上やむを得ない居室』として、採光義務を適用除外する
居室は諦めて、納戸などの『非居室』とする
非居室には適用されない そもそも、『居室』に対する規制であるため、
こちらは、採光無窓に対して最も一般的な対応かもしれませんね。居室だったものを、非居室にした場合は、そもそも採光の規定は全く受けません。
一般的に、非居室とは?
- 納戸
- サービスルーム
- 物入れ
ただし、室名を上記したからOKではなく、非居室としての使用をしなくてはなりません。こちらについては、以下の記事で詳しく解説しています。
『照明設備』を設置して、必要面積の緩和を受ける
床面積×1/7以上の面積を有する採光上有効な開口部が必要。 住宅の居室には、
ただし、床面において50lx以上の照度を確保する照明設備を設けることで、
床面積×1/10まで必要となる面積を低減することが可能となる
こちらは、最近追加になった緩和規定です。照明設備を設けるだけで、緩和の対象となります。詳しくは、以下の記事を確認してみてください。
でも、必要となる面積を低減するだけなので、採光補正係数が0になるような居室でこの緩和を使っても、無意味です。
『用途上やむを得ない居室』として、採光義務を適用除外する
採光義務に適合させる必要はない 用途上やむを得ない居室は、
こちらの条件を満たせば、採光上有効な開口部がない住宅の居室を作ることも、可能といえば可能です。
しかし、居室から採光上有効な開口部を無くす、というのは本当に大変なことなのです。
今からご紹介する内容は、抜け道でも裏技でもなく、法文にしっかりと記載されている内容です。だから、やるかどうかは置いといて、知っておけば勉強にはなると思います。流し読みでもいいので、目を通してみてください。
まず、採光義務(法28条)では、『地階』や『用途上やむを得ない居室』については、適用除外されることが明記されています。
建築基準法28条
- 住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
地階はともかくとして、用途上やむを得ない居室とは具体的にどんな居室なのでしょうか。そちらについては、建設省住指発第153号が参考になります。長いので、見たい方はクリックしてください。
建設省住指発第153号
1 温湿度調整を必要とする作業を行う作業室
次に掲げる居室は、法第二八条第一項ただし書に規定する「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室」に該当するものとする。
(1) 大学、病院等の実験室、研究室、調剤室等温湿度調整を必要とする実験、研究、調剤等を行う居室(小学校、中学校又は高等学校の生徒用の実験室を除く。)
(2) 手術室
(3) エックス線撮影室等精密機器による検査、治療等を行う居室
(4) 厳密な温湿度調整を要する治療室、新生児室等
2 その他用途上やむを得ない居室
次に掲げる居室は、法第二八条第一項ただし書に規定する「用途上やむを得ない居室」に該当するものとする。
(1) 開口部を設けることが用途上望ましくない居室
1) 大音量の発生その他音響上の理由から防音措置を講ずることが望ましい居室
ア 住宅の音楽練習室、リスニングルーム等(遮音板を積み重ねた浮き床を設ける等遮音構造であること並びに当該住宅の室数及び床面積を勘案し、付加的な居室であることが明らかなものに限る。)
イ 放送室(スタジオ、機械室、前室等で構成されるものをいう。)
ウ 聴覚検査室等外部からの震動・騒音が診察、検査等の障害となる居室
2) 暗室、プラネタリウム等現像、映写等を行うため自然光を防ぐ必要のある居室(小学校、中学校又は高等学校の視聴覚教室を除く。)
3) 大学、病院等の実験室、研究室、消毒室、クリーンルーム等放射性物質等の危険物を取り扱うため、又は遺伝子操作実験、病原菌の取扱い、滅菌作業、清浄な環境の下での検査、治療等を行う上で細菌若しくはほこりの侵入を防ぐため、開口部の面積を必要最小限とすることが望ましい居室
4) 自然光が診察、検査等の障害となる居室
ア 眼科の診察室、検査室等自然光が障害となる機器を使用する居室
イ 歯科又は耳鼻咽喉科の診察室、検査室等人工照明により診察、検査等を行う居室
(2) 未成年者、罹病者、妊産婦、障害者、高齢者等以外の者が専ら利用する居室で法第二八条第一項の規定の適用を受けない建築物の居室に類する用途に供するもの
1) 事務室(オフィス・オートメーション室を含む。)、会議室、応接室、職員室、校長室、院長室、看護婦詰所(いわゆるナース・ステーション)等事務所における事務室その他執務を行う居室に類する用途に供する居室
2) 調理室、印刷室等飲食店等の厨房、事務所等の印刷室その他作業を行う居室に類する用途に供する居室(住宅の調理室で食事室と兼用されるものを除く。)
3) 舞台及び固定された客席を有し、かつ、不特定多数の者が利用する用途に供する講堂等劇場、演芸場、観覧場、公会堂、集会場等に類する用途に供する居室
4) 管理事務室、守衛室、受付室、宿直室、当直室等事務所等の管理室に類する用途に供する居室
5) 売店等物品販売業を営む店舗の売場に類する用途に供する居室
具体的に、住宅の場合用途上やむを得ない居室に該当するのは、住宅の音楽練習室です。ただし、『遮音板を積み重ねた浮き床を設ける等遮音構造であること並びに当該住宅の室数及び床面積を勘案し、付加的な居室であることが明らかなものに限る。』との補足がされています。
採光上有効な開口部に関わる規定は、3つあり、採光義務(法28条)と避難規定(法35条)と不燃区画(法35条の3)です。
住宅の音楽室にすれば、採光義務は適用を受けません。しかし、避難規定(法35条)と不燃区画(法35条の3)はまた別の問題。改めて検討しなくてはなりません。
採光については、以下の記事で詳しく解説しています。
採光上有効な開口部がない居室を作る方法は?
対策 | |
採光義務(法28条) | 『地階』又は『住宅の音楽練習室などの用途上やむを得ない居室』で計画 |
避難規定(法35条) | 以下の規定が適用される ・直通階段の設置 ・屋外階段 ・手すり高さ ・敷地内通路 ・非常用の照明装置 所定の規模以上の場合は、以下の規定も適用される ・廊下の幅 ・2以上の直通階段 |
不燃区画(法35条の3) | 居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない(不燃区画は、採光上有効な開口部の代わりに、避難上有効な開口部の設置でもOK) |
内装制限(法35条の2) | 壁・天井の内装を準不燃材料以上(法28条1項の適用除外を受けているので) |
まとめ
✔️住宅の居室には、採光上有効な開口部が必要
✔️ただし、以下のいずれかにより、対応することも可能
- 居室は諦めて、納戸などの『非居室』とする
- 『照明設備』を設置して、必要面積の緩和を受ける
- 『用途上やむを得ない居室』として、採光義務を適用除外する(最も難しい!!)
✔️結論…住宅の居室から採光上有効な開口部を無くすことはできないことはないけど、難しい