直通階段は、全ての建築物に計画しないといけないの?
直通階段は、どこに設けなきゃいけないの?
直通階段の幅・蹴上・踏面の寸法は?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
✔️直通階段は次の階段の経路が明確で、避難階まで直通している階段のこと
✔️直通階段は、全ての建築物に必要ではありません(木造2階建ての住宅などであれば不要)
✔️直通階段は、居室の各部分からの歩行距離30〜60mの部分に設ければok
✔️直通階段は通常の階段よりも階段の幅のみが厳しくなります
でも、今回の記事では、しっかりした参考書を元に、直通階段の定義や設置方法をわかりやすく解説しています。
ぜひ読んでみてください!
では、早速解説していきます!
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
直通階段とは?
✔️直通階段とは、各階で次の階段まで誤りなく通じ、避難階又は地上まで直通する階段をいう
建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)P42により
そこで、『直通階段に該当しないもの』とはどんなものなのか?確認をしていきましょう。
避難階の定義については以下の記事を確認してください。
直通階段に該当しないもの
直通階段に該当しないものをまとめると以下のようになります。
直通階段に該当しないものとは
✔️階段の途中に戸があるもの
✔️長い廊下を介するもの
✔️見通しがきかないもの
そちらで確認してみてください!
(根拠:建築物の防火避難規定の解説2016第2版P42)
Q.『直通階段』を建築基準法で確認したい
建築物の避難階以外の階(地下街におけるものを除く。次条第一項において同じ。)においては、避難階又は地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。以下同じ。)を居室の各部分からその一に至る歩行距離が次の表の数値以下となるように設けなければならない。
(表省略)
法文上では、直通階段の定義は確認出来ません。それ故にうっかり見落としてしまいがちな内容なので、注意したいですね。
Q.階段の途中ではなく、始まりと終わりの部分に扉があっても直通階段になる?
例えば、3階建て場合、3階の階段の始まりの部分。又は1階(避難階)の階段の終わりの部分。こちらには、扉を設けても直通階段の該当します。
あくまで、『階段の途中』に戸を設ける事を禁止しているので、それ以外の部分に扉を設ける事は認められています。
直通階段が必要な建築物は?
・法別表第一(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
・階数が3以上である建築物
・令116条の2第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階
・延べ面積が1000㎡を超える建築物
つまり、特殊建築物ではなく、2階建以下の無窓居室を有しない建築物であれば、直通階段は不要ということです。
3階建ての住宅などであっても、直通階段に該当させなければならないのです。住宅だから大丈夫だろう…と安易に考えてしまうのは危険です。注意しましょう。
Q.直通階段が必要な建築物を法文で確認したい
この節の規定は、法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、前条第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階又は延べ面積が千平方メートルをこえる建築物に限り適用する。
Q.『令116条の2第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室』とは?
面積(第20条の規定より計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の20分の1以上のもの
直通階段を設ける位置は?
✔️直通階段は、居室の各部分から出来るだけ短い距離に設ける事が原則
✔️建築基準法上は、下記の表の数値以下にすることが定められている
構造・居室の種類 |
主要構造部が準耐火構造、または不燃材料で造られている場合 | その他 |
||
居室及び階段・廊下の壁と天井を準不燃材料にした場合 | その他 | |||
(1) | 令116条の2第1項一号にあたる開口部を有しない居室
または 法別表第一(い)欄(四)項の特殊建築物の主たる用途に供する居室 |
40m | 30m | 30m |
(2) | 法別表第一(い)欄(二)項の特殊建築物の主たる用途に供する居室 | 60m | 50m | 30m |
(3) | (1)または(2)以外の居室 | 60m | 50m | 50m |
※15階以上の居室にあっては、表の数値-10mとなる。(令120条第2項・第3項) |
居室から階段までの距離が短い方が、円滑に避難が出来る事は想像しやすいですよね。だから、避難に使用する直通階段は、居室の各部分からの距離が明確に定められています。
忘れないようにしましょう!
Q.居室の各部分から直通階段までの距離を法文で確認したい
Q.距離の測り方が知りたい
例えば、大阪府は取扱いにより、原則として直角に取らなければならないとされています。このように、取扱いや申請先によりルールが異なる場合もあるので、注意しましょう。
直通階段の幅・蹴上・踏面の寸法は?
✔️蹴上と踏面は変わりませんが、『階段の幅』については厳しくなる可能性があります。
✔️ただし、注意しなければならないのは『屋外階段』の場合のみです。
屋外階段は、階段の幅について緩和があります。屋内階段の場合、140㎝や120㎝、75㎝必要なところ、屋外階段は最大で『60㎝』にまで緩和出来ます。
しかし、直通階段の場合、その緩和出来る寸法が『90㎝』までとなってしまいます。避難に利用する階段なので、そこまでの緩和は出来ないのでしょう。
ただの屋外階段だったら『60㎝』まで緩和していいけど、
直通階段の屋外階段だったら、『90㎝』までしか緩和出来ないってこと?
Q.直通階段の幅を法文で確認したい
階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法は、次の表によらなければならない。ただし、屋外階段の幅は、第120条又は第121条の規定による直通階段にあつては90cm以上、その他のものにあつては60cm以上、住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く。)の蹴上げは23cm以下、踏面は15cm以上とすることができる。
(表省略)
Q.法で求められている階段の幅が『75㎝』であっても、直通階段なら『90㎝』にしなければならないのか?
なぜなら、屋外階段の法の規制はあくまで緩和だからです。これらの内容は、防火避難規定の解説により明記されています。ただし、避難上の安全を考慮した場合、90㎝以上が望ましいとされています。(根拠:防火避難規定の解説P118)
まとめ
✔️直通階段とは、直通階段は次の階段下の経路が明確で、避難階まで直通している階段のこと(令120条)
✔️直通階段は、以下の建築物に必要になる。(令117条)
▶︎法別表第一(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
▶︎階数が3以上である建築物
▶︎令116条第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階
▶︎延べ面積が1000㎡を超える建築物
✔️直通階段の幅・蹴上・踏面の寸法は蹴上・踏面の寸法は直通階段だからと言って変わらないが、
屋外階段の直通階段は、通常であれば60㎝まで緩和されるところ、直通階段の場合は90㎝までしか緩和されない。(令23条第1項)