どうやら、確認申請を出さなきゃいけないみたい…。
設計事務所にお願いすると費用が高いから、自分でやりたい!
こんなお悩みに対して法的根拠を元に解説していきます。
結論からまとめると、
✔️法的には、平家で延べ面積が30㎡以内(木造の場合は2階建て以内で延べ面積が100㎡以内)であれば、無資格でも設計者となり、確認申請の提出が可能
✔️ただし、無資格者や未経験者だと現実的に申請のハードルが高い
今回の記事では、その難解な部分もご紹介します。
では、早速確認していきましょう!
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
そもそも、確認申請が必要な建築物とは?
小規模な建築物であれば、確認申請が不要になることが多いです。念の為に、再度確認しましょう。(今回、既製品のカーポート等を想定しているので四号建築物と仮定しています。細かい規定は『確認申請の有無』についてブログでまとめています)
以下のいずれか当てはまる場合、確認申請が必要
○都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区の敷地※に対して、建築物を新築する場合
○都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区の敷地※に対して、床面積10㎡を超える増築をする場合
○防火地域又は準防火地域内の敷地に対して、新築又は増築をする場合
※…都市計画区域及び準都市計画区域外であっても、知事が確認申請必要と指定していたら、確認申請が必要
増築に該当すると、床面積が10㎡以内は確認申請が不要なのね。
新築と増築って何が違うの?
更地に建築物を立てる場合は新築。
既に建築物が建っている敷地に建築物を計画するなら増築。
確認申請が必要かどうか判断する為に、『新築と増築のどちらなのか』は非常に重要なことはお分かりいただけましたよね。
『増築』となります。
増築なので、床面積が10㎡以内は確認申請が不要になる可能性が高いです。
確認申請が不要ってことで良いわよね!
もし防火地域又は準防火地域に指定されていた場合、増築であっても床面積に関係無く確認申請が必要です。
そこもしっかり確認したいですね!
都市計画法により、地域によっては防火地域、準防火地域の指定がされます。その場合、増築であっても床面積に関係無く確認申請が必要です。
都市計画の情報は市役所の窓口に行けば教えてもらます。これらの内容は必ず確認するようにしましょう。
ただし、稀に知事が確認申請必要と指定し、都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区外であっても確認申請が必要になることもあります。
その内容も確認しておきましょう!
無資格者は確認申請を提出して良いのか?
ただし、無資格者が建築物の設計者となる為には、平家で延べ面積が30㎡以内(木造の場合は2階建て以内で延べ面積が100㎡以内)でなければなりません。
『確認申請を出せる条件』と
『建築物の設計者となれる条件』は異なるのです!
まとめると、それぞれの条件は以下のように整理出来ます。
確認申請を出せる条件 | 『建築主』又は『代理者(建築士資格が必要)』 |
建築物の設計者となれる条件 | 建築士法による[無資格者が設計出来る規模は平家で延べ面積が30㎡以内(木造の場合は2階建て以内で延べ面積が100㎡以内)] |
そもそも、確認申請は本来『建築主』が出すように法文で定められています。(法第6条第1項本文)確認申請は専門的な知識が必要なので、建築士の代理人を立てる事が現実的に多いので誤解されがちですが、あくまで『建築主』が行うものです。したがって、無資格者であっても、建築主であれば確認申請を出すことは問題ありません。
一方、無資格者が設計者になるには、規模の制限があります。建築士法により、建築物の設計と工事監理は、無資格者は平家で延べ面積が30㎡以内(木造の場合は2階建て以内で延べ面積100㎡以内)であれば行う事が出来ます。
実際、設計なんてしていないけど、それでも私が設計者にならなきゃいけないの?
規制品の製造元が設計者をやってくれれば良いのですが、そんなケースは今まで聞いた事がありません…
急に不安になってきた…
設計者になるという事は、建築基準法の技術的な内容も全て確認しなくてはなりません。
これを念頭に置いて、次の項目を確認してみてください。
具体的に、何が問題になるのか?
法的に、無資格者であっても平家で延べ面積が30㎡以内であれば、問題無い事がわかったと思います。
ただし、これはあくまで法的に可能というだけで、現実的には難しい点がいくつか出てきます。
今回は『現実的には難しい点』を3つ紹介します。
問題①敷地全体の建築基準法への適合を確認しなくてはならない
建築基準法への適合確認は、建ぺい率や容積率などの規定だけで良いと思っていませんか?
設計者となった場合、今回申請する建築物だけでなく、敷地全体の敷地の法適合を確認しなくてはなりません。
具体的に確認するとしたら『母家の一戸建て住宅』です。
法律は変化するものです。建築当時は建築基準法に適合していても、その後の法改正によって、建築基準法に適合しなくなる事もあります…
建築基準法は、法改正などによって、変化していきます。当時は適合していても、『法改正』や『都市計画情報の変更』によって、現行の法律に適合しなくなる事は、残念ながらよくある事です。
確認申請を行う場合は、原則として、『敷地全体』を建築基準法に適合させなくてはなりません。つまり、既に計画されている『母家の一戸建て住宅』の法適合も、改めて確認しなくてはなりません。
申請の難易度が上がるので建築士にお願いした方が良いでしょう。
特に、既存の建築物が建てられてから時間が建っている場合、『検査済証』が取得されているか確認しておいた方が良いでしょう。
建築基準法の手続きには、図面の審査を受ける『確認申請』と、図面通りに現場が施工されているか確認する『完了検査(中間検査)』の2つの手続きがあります。完了検査が合格になると、検査済証が発行されます。
近年は、完了検査を受ける事は当たり前になっています。しかし、一昔前は、小規模な建築物は、完了検査を受けない事も多かったです。したがって、既存の建築物が『検査済証が無い建築物』の可能性があります。
その場合、手続き違反として、所管の行政庁から指導を受ける場合があります。こうなった場合は、建築士に確認申請をお願いしてしまった方が良いです。
建築士でも苦労する程、難しいからです…
問題②無資格者が確認申請を行う場合、必要図書が増える
確認済証や検査済証を受け取っている方は、合わせて確認申請書や設計図書一式も添付されているはずです。
物件によって(例えば、木造2階建ての一戸建て住宅など)は、設計図書は10枚程度しか添付されていないと思います。思ったよりも少ないですよね。
これは、小規模な建築物を計画する場合、確認申請の添付書類、記載情報を減らすことができる『特例』を受けているからです。特例によって、本来必要な書類や情報を省略しているのです。
この特例を受ける条件は、設計者が『建築士』であることです。
例えば、特例を受けている場合、構造図は添付不要です。しかし、特例を受けられない場合は、構造図が必要になります。設備図(電気、給排水等)も同様です。
特例が受けられないという事は、構造図や設備図の用意をし、確認申請に添付しなくてはなりません。したがって、建築士よりも、無資格者が確認申請を行う場合の方が、物理的に手続きが物理的に困難になります。
問題③確認申請で注意すべきは、建築基準法だけではない
確認申請で気をつけるべき法規は、『建築基準法』だけではありません。『建築基準関係規定』も気をつけなくてはなりません。
例えば、消防法、都市計画法、宅地造成規制法などです!
建築基準関係規定は、以下の記事で詳しく解説しています。
これらの手続きが完了しないと、確認申請の提出は出来ません。
したがって、確認申請以外にも、行うべき手続きがあるかもしれません。これらを事前に確認し、手続きを進めなくてはなりません。
確認申請を出すのって大変なのね…
まとめ:法的には、無資格者でも確認申請は提出できるけど…
法的には、平家で延べ面積が30㎡以内(木造の場合は2階建てで延べ面積100㎡以内)は、確認申請を提出することは可能です。
しかし、現実的には、なかなか難しい問題が多いです。
もし、今回の記事を読んでも、まだ自分で挑戦してみたい!と思う方は、『近所の指定確認検査機関』か『市役所の確認申請を担当する部署』に相談をしてみてください。
最後までありがとうございました!