どんな建築物で、建築基準法上どんな存在なの?
今回の記事ではこんな疑問に法的根拠を元に答えます。
結論からお伝えしますと、
✔︎四号建築物とは、建築基準法第6条第1項第四号に定義される小規模建築物
✔︎建築基準法の中でも超超超特別扱いされるちょっとずるい建築物
小規模建築物とはどの位の規模の建築物なのか?どんな特別扱いを受けるのか?詳しく解説していきたいと思います。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
四号建築物とはどんな建築物?
建築基準法第6条第1項第四号に定義されている小規模建築物の事を『四号建築物』と呼びます。
四号建築物を判断する為に確認すべき事は2つあります。それは、用途と規模です。
以下2つ全て満たすもの
①用途が原則、特殊建築物ではない事
(特殊建築物だった場合、200㎡以下である事)
②規模が以下のいずれかに該当する事
◆木造建築物で階数2以下、延べ面積500㎡以下、最高高さ13m以下、軒高9m以下(全て満たす)
◆木造以外の建築物で階数1階、延べ面積200㎡以下(全て満たす)
法文の読み方についても軽く触れておきます。四号建築物の元となる法文、建築基準法第6条第1項を確認してみましょう。
(本文省略)
一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるもの
二 木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500㎡、高さが13m若しくは軒の高さが9mを超えるもの
三 木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が200㎡を超えるもの
四 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法 第74条第1項 の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
四号建築物は、第一号〜第三号の定義されている以外の建築物という書き方になっています。
建築基準法第6条第1項は第一号、第二号、第三号、第四号の4種類があります。
この中でも『第四号』だけは超超超特別なので、『四号建築物』というニックネームが付いているというイメージです。
どんな特別扱いがあるのか、続けて解説していきます。
四号建築物はどんな規定で特別扱いを受けるか?
四号建築物が特別扱いされる規定はなんと4つもあります。
◆確認申請の有無(建築基準法第6条)
◆確認申請の特例(建築基準法第6条の4)
◆検査の特例(建築基準法第7条の5)
◆建物使用制限の特例
実は、手続き関係で超超超特別扱いされていますが、建築基準法の実際の規定が緩くなるわけじゃないんです。
四号建築物といったら、構造が不要になるってみんな言ってるわよ
②の確認申請の特例で添付不要だから勘違いされる事が多いけど、構造の規定である法第20条が緩和になるという事はありません!
法第20条は複雑な法文ですが、当サイトでわかりやすく解説しているので合わせて確認してみてください。読んでみればわかりますが、四号建築物の規模だと仕様規定(令第36条)だけかかって、構造計算(令第81条)が不要という事はあり得ると思います。
でも、法第20条の規定がかからないとか、そんな事は一切ありません!
では、それぞれの特別扱いを見ていきましょう。
確認申請の要否の特別扱い
四号建築物は、一号〜三号建築物よりも確認申請が必要なケースが少ないです
もうこの時点でかなり特別扱いですよね。具体的には、以下のようなケースで確認申請が不要になります。
①都市計画区域、準都市計画区域、準計画区域、知事が定めた区域 以外に建築※する場合
②大規模な修繕、大規模な模様替
③用途変更
※建築…新築、増築、改築、移転のこと
例えば、都市計画区域外で四号建築物の新築をする場合、そもそも確認申請は不要という事になるんです。でも、都市計画区域外で一号〜三号建築物の新築だったら必要になります。
以下の記事で詳しく解説しているので合わせて確認してみてください。
確認申請の特例があるという特別扱い
四号建築物には、確認申請で『審査される図書が少なくなる』という特例を受ける事が出来ます(建築士が設計したものに限る)
要は、確認申請に一部図書は添付不要になります。これも、一号〜三号建築物には無い決まりなので、特別扱いです。
ただし、特例を受ける事が出来て、添付不要になったとしても設計者がしっかり建築基準法の適合は確認しなければならないので、注意してください。あくまで、『確認申請に添付が不要』なだけです。
確認申請の特例については、どんな規定が特例対象か?などは、以下の記事で詳しく解説しているので確認してみてください。
検査の特例があるという特別扱い
検査も確認申請と同様に、四号建築物の特例を受ける事が出来ます
(ただし、条件付き)
四号建築物は、確認申請の同様に検査の特例も受ける事ができます。どんな特例かというと、『特例で審査した内容だけを検査すればok』という特例です。
もし検査の特例を受けなかった場合、確認申請で特例を受けた部分も検査で全部確認をするという事になります。だから、検査の特例は基本的に受けるべきでしょう。
ただし!条件付きで特例を受ける為には『特例写真の提出が必要』です。それは、規則第4条第1項第二号の写真です。だから、うっかり写真を忘れると特例が受けられなくなる可能性があります。
屋根の小屋組の工事終了時構造耐力上主要な軸組若しくは耐力壁の工事終了時、基礎の配筋(鉄筋コンクリート造の基礎の場合に限る。)の工事終了時その他特定行政庁が必要と認めて指定する工程の終了時における
①当該建築物に係る構造耐力上主要な部分の軸組の写真
②仕口その他の接合部の写真
③鉄筋部分等を写した写真
検査済証交付前でも使用出来るという特別扱い
実は四号建築物は検査済証交付前でも使用出来る事になっています
正直、これは記事の内容に含めるか迷ったのですが、法文に書いてある事実なので解説に含めました。
実は、四号建築物は検査済証の交付前でも、 法文上は建築物を使用することが可能です。これもかなりの特別扱いですよね。 では、法文で確認してみましょう。
第6条第1項第一号から第三号までの建築物を新築する場合又はこれらの建築物(共同住宅以外の住宅及び居室を有しない建築物を除く。)の増築、改築、移転、大規模の修繕若しくは大規模の模様替の工事で、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラーその他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置、非常用の昇降機若しくは防火区画で政令で定めるものに関する工事(政令で定める軽易な工事を除く。以下この項、第十八条第二十四項及び第九十条の三において「避難施設等に関する工事」という。)を含むものをする場合においては、当該建築物の建築主は、第7条第5項の検査済証の交付を受けた後でなければ、当該新築に係る建築物又は当該避難施設等に関する工事に係る建築物若しくは建築物の部分を使用し、又は使用させてはならない。
建物使えるなら、全然いいし!
そんな都合がいい話、ある訳が無いのです。それは、建築基準法には『工事が完了してから4日以内の検査の申請をしなけれならない』という決まりがあるからです。(建築基準法第7条第1項、第2項)
だから、検査を受けないで建物を使うというのは法文に定めがあったとしても、やらない方が良いです。
他にも理由があります。もし住宅などでガッツリ引っ越しなどをして家具を設置しまった場合、検査で見るべき部分が隠れてしまい、合格にならない可能性もあります。
話を戻してまして。これも四号建築物にだけ認められる特別扱いなので、第一号〜第三号建築物だった場合は使用した時点で違反となります。(その為に、第一号〜第三号建築物には仮使用という規定があるわけなのですが!)
まとめ:四号建築物は手続き関係で特別扱いされる
四号建築物は建築基準法の中でもかなり特別扱いをされているという事を解説しました。
重要なポイントとしては、四号建築物が特別扱いされるのは『手続き関係』の規定のみで、建築基準法の具体的な規制を定めている『集団規定』『単体規定』を緩和している訳では無いという事です。
四号建築物は確かに確認申請で添付する図書は少なくて済みますが、集団規定と単体規定はキッチリかかってくるので、油断せずに法適合を確認していきましょう!
最後までありがとうございました!