竪穴区画が不要な場合ってあるの?
面積区画にがどんな緩和があるの?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
火災で発生した煙を特定の階に留めておくための規制
竪穴区画とは、防火区画の1つで、主要構造部が耐火構造又は準耐火構造で、3階又は地階に居室がある場合に必要になる
竪穴区画は、ロ準耐火建築物には不要
竪穴区画は、住宅用途や避難階とその直上階・直下階に使える緩和が存在する
竪穴区画には、法文を読みこなすのは難しいので、記事の中でわかりやすく解説していきます!twitter:sozooro)
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書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
『竪穴区画』とは
4つある防火区画の1つ 竪穴区画とは、
建築基準法施行令112条により、建築基準法には防火区画が定められています。防火区画には4種類存在していて、
です。
この中に、竪穴区画があります。竪穴区画は、簡単に言うと火災発生時に煙を広げないための規制です。煙は、水平方向の移動はゆっくりですが、鉛直方向の移動は早いです。よって、階段室などの他の階と繋がっている空間(竪穴部分)では、あっという間に煙が広がってしまいます。
そこで、『竪穴部分』と『その他の部分』を区画して、煙をその階に留めるようにしています。これが竪穴区画です。
Q.竪穴区画が必要となる『竪穴部分』とは?
『竪穴部分』ってどんな部分?
具体的には、建築基準法施行令112条11項に記載されています!
竪穴部分とは?
- 吹抜きとなっている部分
- 階段の部分
- 昇降機の昇降路の部分
- 長屋又は共同住宅の住戸でその階数が2以上であるもの
- ダクトスペースの部分その他これらに類する部分
見落としがちなのが『長屋又は共同住宅の住戸でその階数が2以上であるもの』です。これは要するにメゾネット住戸のことです。メゾネット住戸も竪穴部分として、区画が必要なので、注意が必要です。ただし、住戸自体は竪穴区画が必要ですが、メゾネット住戸内の階段については、竪穴区画の緩和があります。こちらについては、緩和の部分で図解にて詳しく説明します。
竪穴区画が『必要になる建築物』とは?
大きく分けて3つの区分がある 竪穴区画が必要になる建築物は、
それぞれの区分に応じて、区画の方法が異なります。まとめると、以下のようになります。
区画が必要になる建築物 | 区画する部分 | 区画方法 | |||
壁の構造 | 床の構造 | 防火設備の種別 | |||
① | 以下の建築物で、地階又は三階以上の階に居室を有するもの 主要構造部を準耐火構造(または、耐火構造)とした建築物 令136の2-1-ロの基準適合建築物 令136の2-2-ロの基準適合建築物 |
竪穴部分とその他の部分 | 準耐火構造 | 準耐火構造 | 防火設備※2 |
② | ①以外の建築物で 病院・診療所・児童福祉施設等で階数3かつ延べ面積<200㎡ |
間仕切壁 | ー | 防火設備 ※2※3 |
|
③ | ①以外の建築物で 共同住宅・ホテル・寄宿舎で階数3かつ延べ面積<200㎡ |
間仕切壁 | ー | 戸(ふすま・障子等は不可)※2 | |
※2…遮煙性能付きで以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、煙感知器と連動して自動閉鎖するもの ※3…居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた建築物の竪穴部分については、10分間防火設備にしても良い |
ほとんどの建築物は、①の『主要構造部を耐火構造又は準耐火構造にした場合』に該当し、竪穴区画が必要になります。
主要構造部がその他であっても、②③であれば竪穴区画が必要になりますので、こちらも忘れないでおきたいですね。
配管の貫通について
所定の措置をしなくてはならない 防火区画に配管等を貫通する場合は、
防火区画には、原則として、配管等をは貫通させない方が良いです。しかし、やむを得ず貫通が必要な場合もあるかと思います。
その場合、所定の措置をしなくてはなりません。(建築基準法施行令112条20項、21項)
貫通する給水管・配電管等の措置
以下2つ全てに適合させること
①管と防火区画との隙間をモルタル等の不燃材料で埋めること
②以下3つのいずれか1つに適合させること
・貫通する部分からそれぞれ両端1m以内の距離にある管を不燃材料で造ること
・管の外径が、用途、材質その他の事項に応じて告示1422号が定める数値未満であること
・国土交通省の認定を受けたもの
貫通する換気、暖房、冷房の風道等の措置
特定防火設備であって、大臣が定めた構造又は大臣の認定したものであること
スパンドレルについて
スパンドレルの計画が必要です 面積区画を計画する場合、
スパンドレルとは、建築物の内部からではなく、外部からの回り込みによる延焼を防止するための規定です。
面積区画とぶつかる外壁は、そこを含む90㎝以上の外壁を準耐火構造とするか、50㎝以上突出した庇を準耐火構造とし、開口部があった場合は防火設備としなくてはなりません。
図
Q.『任意』で主要構造部を耐火構造又は準耐火構造にした場合、竪穴区画必要?
竪穴区画は必要です。
任意で主要構造部を耐火構造又は準耐火構造にした場合であっても、この疑問を持つ方は、面積区画の勉強をされている方に多いです。面積区画は『①何の規制によって』『②主要構造部を耐火構造or準耐火建築物にしたか』の2つが重要となります。任意で主要構造部を耐火構造又は準耐火構造にした場合、それ以外の場合で規制が変わってくるのです。詳しくは、以下の記事で解説しています。
しかし、竪穴区画の場合はそのようなややこしいことは無く、任意かどうかは関係無く、主要構造部を耐火構造又は準耐火構造にしたら竪穴区画が必要です。
書籍の方でも、その旨が以下のように記載されているので、合わせて確認ください。
自主的に主要構造部を準耐火構造とした建築物又は令第136条の2第二号ロに掲げる建築物(準延焼防止建築物)とした場合も同様に取り扱うこととする。
(建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)p123より引用)
Q.『居室』が無い建築物に竪穴区画必要?
竪穴区画は不要です。
3階以上・地階に居室が無い建築物なら、あくまで、3階以上・地階に居室がある場合に必要になる規制なので、無いのであれば当然、竪穴区画をする必要はありません。
3階部分を倉庫として利用している建築物などは、居室が無いので、竪穴区画がされていないことがあります。
Q.『ロ準耐火』の建築物に竪穴区画必要?
竪穴区画は不要です。なぜなら、主要構造部を準耐火構造にしているわけでは無いからです。
ロ準耐火建築物の場合、竪穴区画が必要になる建築物は、あくまで『主要構造部を耐火構造又は準耐火構造にした場合』です。ややこしいですが、ロ準耐火建築物の場合は、この条件に該当しません。したがって、竪穴区画は不要となります。詳しくは、以下の記事で詳しく記載しています。
屋外階段でも、竪穴区画をしなくてはならないのか?
竪穴区画は必要です
屋外階段であっても、竪穴部分に該当するので、法文を確認すると、『竪穴部分(階段)』と『その他の部分』を区画すること、しか書かれていません。屋外階段だから除かれるような記載にはなっていないので、竪穴区画は必要になります。
実際、この屋外階段の竪穴区画しないまま確認済証を交付した指定確認確認検査機関が、国土交通省から指摘を受け、業務停止されています。国としても、必要という見解ということです。屋外階段であっても竪穴区画が必要なことは覚えておきましょう。
竪穴区画の『緩和』とは?
竪穴区画で使える緩和
以下に該当する竪穴部分は、竪穴区画不要
- 避難階からその直上階・直下階に通ずる竪穴部分(仕上げを不燃材料とし、下地を不燃材料で造った場合に限る)(令112条9項一号)
- 階数が3以下かつ延べ面積200㎡以内の一戸建て住宅の竪穴部分(令112条9項二号)
- 階数が3以下かつ床面積の合計が200㎡以内の長屋・共同住宅の竪穴部分(令112条9項二号)
以下に該当する竪穴部分は、一の竪穴区画とみなして適用される
- 竪穴部分と他の竪穴部分が隣接している場合、同一の竪穴区画とみなすことが出来る(仕上げを準不燃材料とし、下地を準不燃材料で造った場合に限る)(令112条14項一号)
- 竪穴部分と他の竪穴部分が用途上区画することが出来ない場合、同一の竪穴区画とみなすことが出来る(令112条14項二号)
竪穴区画の緩和は、大きく分けて2つあります。
一つは、単純に、竪穴区画が不要になるものです。もう一つは、同一の竪穴区画をしてみなされる緩和です。
竪穴区画が不要になる緩和は、よく使われるので、詳しく解説していきます。
避難階からその直上階・直下階に通ずる竪穴部分
避難階からその直上階・直下階に通ずる竪穴部分は、竪穴区画をする必要がありません。あくまでも、避難階とその直上階・直下階の2層の竪穴部分に限るというのがポイントです。避難階の定義については以下の記事を確認してください。
見落とされがちなのですが、内装制限とその下地についての制限があります。木造建築物の場合、下地を不燃材料にすることが原則として出来ないので、使いにくい緩和になっています。
内装制限の範囲については、以下の記事か防火避難規定の解説で記載されているので、確認して見てください。
階数が3以下かつ延べ面積200㎡以内の一戸建て住宅の竪穴部分
例え、住宅であっても、主要構造部が準耐火構造で、3階部分に居室がある場合は、竪穴区画が必要になります。しかし、3階以下かつ200㎡以内の一戸建て住宅に限り、竪穴区画は不要となります。
しかし、これに関しては、竪穴区画をしなくても済むような方法もあります。詳しくは、以下の記事で解説しています。
階数が3以下かつ床面積の合計が200㎡以内の長屋・共同住宅の竪穴部分
一戸建て住宅だけでなく、長屋・共同住宅も竪穴区画の緩和があります。共同住宅は、住戸内に階段がある、いわゆるメゾネット住戸が対象です。
条件が似ているようですが、長屋・共同住宅の緩和はあくまで『住戸内』に関する緩和です。つまり、共同住宅の場合は、共用階段には竪穴区画の緩和はありませんので、勘違いしないようにしましょう。
法文で竪穴区画を確認する
建築基準法施行令112条
まとめ
✔️竪穴区画とは、『竪穴部分』と『その他の部分』を区画して、煙をその階に留めるようするための防火区画
区画が必要になる建築物 | 区画する部分 | 区画方法 | |||
壁の構造 | 床の構造 | 防火設備の種別 | |||
① | 以下の建築物で、地階又は三階以上の階に居室を有するもの 主要構造部を準耐火構造(または、耐火構造)とした建築物 令136の2-1-ロの基準適合建築物 令136の2-2-ロの基準適合建築物 |
竪穴部分とその他の部分 | 準耐火構造 | 準耐火構造 | 防火設備※2 |
② | ①以外の建築物で 病院・診療所・児童福祉施設等で階数3かつ延べ面積<200㎡ |
間仕切壁 | ー | 防火設備 ※2※3 |
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③ | ①以外の建築物で 共同住宅・ホテル・寄宿舎で階数3かつ延べ面積<200㎡ |
間仕切壁 | ー | 戸(ふすま・障子等は不可)※2 | |
※2…遮煙性能付きで以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、煙感知器と連動して自動閉鎖するもの ※3…居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた建築物の竪穴部分については、10分間防火設備にしても良い |
✔️竪穴区画には、以下の緩和を使うことができる
竪穴区画不要 |
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一の竪穴区画とみなして適用される |
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