どんな建築物が特殊建築物なのか具体的に知りたい!
『事務所』や『工場』は特殊建築物?
特殊建築物だと、建築基準法の適用はどうなるの?
こんなお悩みに対して法的根拠を元に解説していきます。
結論からまとめると、
不特定かつ多数の者が利用する用途』や『火災の危険性等が高い建築物』のこと
特殊建築物とは、『3つの法文を確認することで判断できる
特殊建築物は、他の用途よりも建築基準法の適用が厳しくなる
特殊建築物は、では、早速解説していきます!
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
特殊建築物の『定義』とは?
特殊建築物とは…
不特定かつ多数の者が利用する用途』や『火災の危険性等が高い建築物』のことです。
『特殊建築物の用語の定義は『建築基準法第2条第二号』定義されています。
建築基準法第2条第二号
特殊建築物 学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。
しかし、こちらに記載されている特殊建築物は一般的な定義に過ぎないので、実際の所は『建築基準法別表第一』と『建築基準法施行令第115条の3』を合わせて3つの法文から確認する事になります。
そして、特殊建築物は単に不特定多数の方が利用するからだけでなく、火災の危険性が高い建築物など、その指定理由によって分類があります。
特殊建築物とみなされる用途の『一覧』
区分 | 用途 |
(1)不特定・多数(集中)
施行令…未制定 |
劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 |
(2)宿泊・就寝
施行令条115条の3第一号
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病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎
児童福祉施設等 |
(3)特定・多数
施行令条115条の3第二号 |
学校、体育館
博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場 |
(4)不特定・多数
施行令条115条の3第三号 |
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場
公衆浴場、待合、料理店、飲食店又は物品販売業を営む店舗(床面積が10m2以内のものを除く。) |
(5)火災荷重大
施行令…未制定
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倉庫 |
(6)火災危険大
施行令条115条の3第四号 |
自動車車庫、自動車修理工場
映画スタジオ又はテレビスタジオ |
『事務所』や『工場』は特殊建築物か?
『事務所』は特殊建築物か?
特殊建築物にはならない』
事務所は『よくある疑問として、事務所が特殊建築物かどうかというのがありますが、事務所は特殊建築物ではありません。
『工場』は特殊建築物か?
特殊建築物になる』
(ただし、別表第1の用途には含まれていない)
工場は、原則として特殊建築物です。その理由は、特殊建築物の定義である『建築基準法第2条』の中に工場と記載があるからです。
ただし、別表第1には含まれていません。(ここが非常にややこしいところ)
だから、後ほど出てくる建築基準法の規制の中で、別表に該当すると厳しくなるものがありますが、そちらには工場は該当しないということ!(ややこしいですよね…)
特殊建築物の分類による『建築基準法の規制』の違い
避難規定(法第35条)は別表(1)〜(4)しか該当しない
避難規定は別表(1)〜(4)の用途しか規制されない事になっています。つまり、人が利用用途という事ですね。
別表(5)(6)は人の利用はあまり考えづらいので、避難規定の規制は受けない事になっています。
主要構造部の制限(法第27条)は別表によって規制される規模が異なる
要は、耐火建築物や準耐火建築物の制限についてです。こちらについては(1)〜(6)それぞれ制限されている規模が異なりますので個別に確認する事が必要です。
特殊建築物に該当したら確認すべき条文
条文の確認の前に、非常に重要なのが、確認申請の要否を大きく分ける可能性がある事。
そちらについては、以下の記事で解説しているので、確認してみてください。
特殊建築物で確認すべき条文
- 法第27条(耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない特殊建築物)
- 法第35条(特殊建築物等の避難及び消化に関する技術基準)
- 法第35条の2(特殊建築物等の内装)
- 法第87条(用途の変更に対するこの法律の準用)※用途変更の場合のみでok
上記の条文は必ず確認するようにしてください。
そして、法適合を確認する時に注意して欲しいのですが、
それは、口酸っぱく言っていますが、別表第一(1)〜(6)のどれに該当するかでそれぞれの条文の法適合が必要かどうか変わってくるからです。
まとめ:建築基準法の分類を理解して法適合を確認すべし
建築基準法を読むとすぐ気がつくのですが、この別表(1)〜(6)の分類は条文の中で多用されています。
建築基準法の適合確認において、特殊建築物かどうか?を判断する事はもちろんですが、この特殊建築物はどの中でもどの分類なのか?を判断する事も非常に重要です。
この点を意識して法適合を確認していきましょう。