強化天井は、建築基準法の何条に記載されているの?
強化天井は、防火区画・界壁の緩和が受けられるって本当?
強化天井の認定番号は?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
天井のうち、下階から上階への延焼を防止できるものであること(似たキーワードの特定天井とは全くの別物) 強化天井とは、
建築基準法施行令112条4項一号で定義され、他の規制でも多く登場する 強化天井は、
一部の防火区画(面積区画)』・『界壁』・『防火上主要な間仕切壁』の規制を適用除外が可能。ただし、かなり限定的なので、注意が必要 強化天井にすることで、『
『CE』を含む番号のこと 強化天井の認定番号は、
どんな法規制に出てくるのか、どんな構造なのか、この記事ではわかりやすく解説していきます!(X:sozooro)
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
『強化天井』とは?
強化天井とは
天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、下記いずれかに該当するもの
- 国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの
- 国土交通大臣の認定を受けたもの
強化天井とは、要するに、延焼に対して強い天井のことです。火災は、小屋裏部分を通じて延焼してしまうこともあります。しかし、強化天井とすることで、小屋裏部分に火災がまわってしまうことを防ぎ、火災の延焼を防ぐことができます。
それぞれの方法を確認してみましょう!
大臣が定めた『構造方法』にする
『告示694号』に定める構造方法とすること
告示の内容については、下記に記載していますので、該当するように計画をしてください。
告示694号
建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十二条第四項第一号に規定する強化天井の構造方法は、次に掲げる基準に適合するものとする。
一 強化せっこうボード(ボード用原紙を除いた部分のせっこうの含有率を九十五パーセント以上、ガラス繊維の含有率を〇・四パーセント以上とし、かつ、ひる石の含有率を二・五パーセント以上としたものに限る。)を二枚以上張ったもので、その厚さの合計が三十六ミリメートル以上のものが設けられていること。
構造
二 給水管、配電管その他の管が強化天井を貫通する場合においては、当該管と強化天井との隙間をロックウールその他の不燃材料で埋めるとともに、当該管の構造を令第百二十九条の二の四第一項第七号イからハまでのいずれかに適合するものとすること。この場合において、同号ハ中「二十分間(第百十二条第一項若しくは第四項から第六項まで、同条第七項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)、同条第十項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)若しくは同条第十八項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床にあつては一時間、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁にあつては四十五分間)」とあるのは、「一時間」と読み替えるものとする。ただし、一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で建築物の他の部分と区画されたパイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中にある部分については、この限りでない。
三 換気、暖房又は冷房の設備の風道が強化天井を貫通する場合においては、当該風道の強化天井を貫通する部分又はこれに近接する部分に令第百十二条第二十一項に規定する構造の特定防火設備を設けていること。
構造
四 防火被覆の取合いの部分、目地の部分その他これらに類する部分が、当該部分の裏面に当て木が設けられている等天井裏への炎の侵入を有効に防止することができる構造であること
大臣から『認定』を受ける
『CE』を含む認定番号であることを確認すること
強化天井は、大臣からの認定を受けた場合でも認められています。実際の認定品を検索で見つけることはできませんでしたが、認定の番号に関しては、『CE』を含む番号であることを確認すればOKです。(認定番号の根拠については、こちらから確認してください)
法文で確認する【建築基準法施行令112条4項一号】
強化天井は、『建築基準法施行令112条4項一号』に記載されています。
建築基準法施行令112条4項一号
一 天井の全部が強化天井(天井のうち、その下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。次号及び第百十四条第三項において同じ。)である階
合わせて確認しておきたい『特定天井』について
建築士試験では、特定天井と強化天井を入れ替えた問題が出題されています。合わせて、特定天井についても確認しておきましょう。
強化天井は、防火方面の規制で登場する天井です。一方、特定天井は、構造方面の規制で登場する天井です。
特定天井は、『建築基準法施行令39条3項』に記載されています。
建築基準法施行令39条3項
特定天井(脱落によつて重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。以下同じ。)の構造は、構造耐力上安全なものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
強化天井が登場する『規制』
強化天井は、下記の規制の『緩和措置』として登場する
- 防火区画(ただし、面積区画で500㎡区画に限る)
- 界壁
- 防火上主要な間仕切壁
強化天井にしたとしても、緩和の内容は限定的ですので、区画を無くすことができません!
すでにご説明しましたが、火災というのは小屋裏を伝って延焼します。だから、区画系の規制は、原則として、小屋裏・天井裏に達せしめる必要があります。しかし、壁を小屋裏・天井裏に達せしめるというのは、施工的に難しいというケースもあります。だから、強化天井で緩和をするのです。
では、それぞれの規制について確認してみましょう。
防火区画(面積区画で500㎡区画に限る)
区画だけでなく、防火上主要な間仕切壁の設置も必要となる
防火区画(面積区画で500㎡区画)を行う場合には、ただし、強化天井とすることで、防火上主要な間仕切壁を小屋裏・天井裏に達せしめる必要がなくなる
建築基準法施行令112条により、建築基準法には防火区画が定められています。防火区画には4種類存在していて、①面積区画、②高層区画、③竪穴区画、④異種用途区画です。
その、面積区画の中でも、建築物によって『1500㎡以内』『1000㎡以内』『500㎡以内』の3つに区分されており、その面積以下に区画が必要になりますい。そして、500㎡区画についてのみ、区画するだけでなく、防火上主要な間仕切壁の計画が必要となります。
詳しくは、下記の記事で解説しています。
界壁
界壁を計画する場合、小屋裏・天井裏に達せしめる必要がある
ただし、強化天井とすることで、界壁を小屋裏・天井裏に達せしめる必要がなくなる(※法30条の遮音界壁については、この緩和は使えない)
そして、強化天井にすることで、防火(令114条1項)を目的とする規制では小屋裏・天井裏に達せしめる必要はなくなります。しかし、遮音(法30条)を目的とする規制では、強化天井にしても意味がないのです…
実は、界壁とは2つの規制を受けるのです。そして、ひとつは防火に関する規制ですが、もう一つは遮音に関する規制です。強化天井は、防火上優れていますが、遮音に優れているわけではありません。
だから、強化天井+遮音性能に優れた天井として計画しないと、結局、界壁を小屋裏・天井裏に達せしめる必要があるということです。
界壁については、下記の記事を参考にしてください。
防火上主要な間仕切壁
を計画する場合、小屋裏・天井裏に達せしめる必要がある
防火上主要な間仕切壁ただし、強化天井とすることで、防火上主要な間仕切壁を小屋裏・天井裏に達せしめる必要がなくなる
防火上主要な間仕切壁も、計画する上で小屋裏・天井裏に達せしめる必要があります。しかし、強化天井とすることで、適用除外することができます。
防火上主要な間仕切壁については、下記の記事を参考にしてください。
まとめ
✔️強化天井とは、天井のうちその下方からの通常の火災時の加熱に対してその上方への延焼を有効に防止することができるものとして、下記いずれかに該当するもの
- 国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの(『告示694号』に定める構造方法)
- 国土交通大臣の認定を受けたもの(『CE』を含む認定番号)
✔️強化天井は、令112条4項一号に定義されている
✔️強化天井は、下記3つの規制に対して、『小屋裏・天井裏に達せしめる』という条件を適用除外することができる
- 面積区画(500㎡区画)
- 界壁
- 防火上主要な間仕切壁