建築基準法

日影の発散方式とは?裁判で負けた事があるって本当?理由は?

日影は、近隣クレームが起こりやすく、裁判が発生しやすい。

だから、裁判で負けない検討が必要。

そうなると、発散方式はオススメできない。

日影の検討方法は大きく分けて2つ。

 

閉鎖方式 か 発散方式

 

この中で、発散方式を利用する場合は以下の2点注意すべき事があります。

①特定行政庁に発散方式を利用していいかどうか聞く必要がある

②裁判が起こったときに、不利になる可能性がある

どうしてそんな事しなきゃいけないの??

だって、参考書にも発散方式書いてあるし、普通に使っていいんじゃ無いの?

いえ、実はこの発散方式、特定行政庁によっては禁止しているところがあります。

なぜなら、過去に裁判で負けた事があるから。

そうなんです。

この発散方式、国交省の資料などに出ている方式にも関わらず、

過去に裁判で負けた事があるんです。

 

それ以降、特定行政庁によっては発散方式を禁止している場合があります。

今回は、そんな発散方式の話を掘り下げていきます。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

発散方式ってなに?

まずは、キーワードになる法文を確認

 

建築基準法施行令第135条の10 日影による中高層の建築物の高さ

法第56条の2第3項の規定による同条第1項本文の規定の適用の緩和に関する措置は、次の各号に定めるところによる。

 建築物の敷地が道路、水面、線路敷その他これらに類するものに接する場合においては、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものに接する敷地境界線は、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものの幅の1/2だけ外側にあるものとみなす。ただし当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものの幅が10mを超えるときは、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものの反対側の境界線から当該敷地の側に水平距離5mの線を敷地境界線とみなす。

 

 

赤文字部分だけ読むと、

当該道路の幅が10mを超えるときは道路反対側の境界線から当該敷地の側に水平距離5mの線を隣地境界線とみなす

ですよね?

どうも、幅員が10mを超えたら緩和利用できるみたいですね。

 

具合的に、この緩和の解釈は2つになる

要は、閉鎖方式と発散方式の違いの2つに分かれます

この道路の幅を 垂直で捉える(閉鎖方式) か 斜めでも捉える(発散方式) かどちらかって事。

まずは、原則の考え方です。

このように、道路中心から5m、10mのラインを引く事。

まぁ、これは普通ですね。

閉鎖方式

まずは、閉鎖方式から。

緩和利用の場合で考えた方がわかりやすいので、道路の幅員は10m以上あるものとして検討してみましょう。

この方式の時は、道路の幅を垂直と考えます。

まぁ、これもよく見るものですね。

 

発散方式

さて、次は問題の発散方式です。

この方式の時は、道路の幅を斜めでも考えます。

少しわかりづらいので、拡大します。

わかりにくいですが、かなり有利になるのわかりますか?

垂直だけでなく、斜めに見る事によって、幅はどんどん広くなります。

解釈の違いではありますが、道路の幅を斜めでも見ていいのであれば、この考え方でもokとなりそうですね。

 

発散方式って本当に認められてる解釈なの?

何となく、理屈はわかったけど、なんか法の拡大解釈じゃ無いの?

こんなの、本当に認められている解釈なの?

そう思うのも当然!なんですが、実は認められています!

その、本当に大丈夫なの?っていう感想を持つ事は本当に素晴らしいです。

確かに、この説明だとかなり有利になるし、心配になる気持ちはよくわかります。

 

しかし、“発散方式”なんて名前が付いているくらいだから、認められている方式です。

これは、国交省が監修している書籍にも出てきますし、一般的に認められている方式といえるでしょう。

▼私は知っている中だとこちらの書籍は発散方式がわかりやすいです

 

ただし、裁判で負けているという矛盾

しかし、この発散方式、裁判で負けています。

 

ここまで読んでいただいた方であればわかると思うのですが、

道路の幅を 垂直で捉えるか 斜めで捉えるか

という論争で、垂直で捉えるという判断が正しいという結論になったという事です。

難しい内容になるので、裁判の細かい話については省きますが、要はその解釈の差です。

どうして?

国交省が認めているちゃんとした方式だったんでしょ?

それはね、国交省の資料だろうが、何だろうが

建築基準法や施工令、告示以外はただの参考書でしか無いって事

結局、信じられるのは建築基準法のみ。

他にも様々な書籍や文献がありますが、結局は建築基準法の参考書でしか無いのです。

 

そして、この事件後、特定行政庁によっては日影の発散方式を禁止しているところも出てきました。

よって、発散方式は避けるべきですが、やむを得ない場合でも特定行政庁に確認は必須です。

 

まとめ:どんな書籍や文献も、すべて建築基準法の参考書でしかない

今回の記事で、発散方式を利用する事はかなりリスクがあるという事、お分かりいただけましたか?

発散方式はオススメできません。

日影は本当に近隣クレームも多く、裁判が発生しやすいから

繰り返しにはなりますが、どうしても発散方式を利用したい場合は必ず以下2点を確認してください。

①特定行政庁に発散方式を利用していいかどうか聞く必要がある(取り扱いで禁止している場合がある)

②裁判が起こったときに、不利になる可能性がある(過去に負けた事がある)

 

日影の裁判は、建築基準法以外は信じちゃいけないんだなという事を再認識させる怖い話です。

裁判の上で、国交省の資料なんてただの参考書、何の法的根拠にもならないという事でしょうね。

恐ろしいですね。

最後までありがとうございました!

ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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