施行日:2023年(令和5年)4月1日
今回、物流効率化の為に大規模なひさしの設置を促進する為、建築面積の緩和が追加されました。
簡単に緩和の内容をまとめると…
軒等は5mまで建蔽率の算定から除くことが可能
工場又は倉庫の所定の条件を満たした建築物から跳ね出したそこまで難しくないので、比較的使いやすい緩和となる
所定の条件は敷地に余裕があれば他の建築面積に係る規制では除くことが出来ない
ややこしい事に、あくまで建蔽率の算定のみの緩和で、詳しく解説していきますね!(sozooro)
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
法文で改正内容を確認する
改正前 |
令2条1項二号 建築面積 建築物(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離1m以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離1m後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離1m以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。 |
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改正後 |
令2条1項二号 建築面積 建築物(地階で地盤面上1m以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもの(以下この号において「軒等」という。)で当該中心線か ら水平距離1m以上突き出たもの(建築物の建率の算定の基礎となる建築面積を算定する場合に限り、工場又は倉庫の用途に供する建築物において専ら貨物の積卸しその他これに 類する業務のために設ける軒等でその端と敷地境界線との間の 敷地の部分に有効な空地が確保されていることその他の理由により安全上、防火上及び衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定める軒等(以下この号において「特例軒等」という。 )のうち当該中心線から突き出た距離が水平距離1m以上5m未満のものであるものを除く。)がある場合にお いては、その端から水平距離1m後退した線(建築物の建ぺい率の算定の基礎となる建築面積を算定する場合に限り、特例軒等のうち当該中心線から水平距離5m以上突き出たものにあっては、その端から水平距離5m以内で当該特例軒等の構造に応じて国土交通大臣が定める距離後退した線) )で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、当該建築物又はその部分の端から水平距離1m以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。 |
内容について補足していきます。
改正前は、外壁・柱から1m以上突き出た軒等は1mを上限に建築面積から除くことが出来ました。改正後は、倉庫・工場の用途に限りますが、5mまで建蔽率の算定における建築面積から除くことが出来るようになるというものです。
(引用:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001595195.pdf)
▼軒等が2面にわたる場合の考え方も示されています。
緩和を使う為の条件はどこに書いてあるの?
告示の本文を確認したい場合、以下のボタンを押してください。
第一 令第2条第1項第二号に規定する安全上、防火上及び衛生上支障がない軒等は、次の各号に掲げる基準に適合する軒等の全部又はその一部とする。
一 軒等の全部の端からその突き出た方向の敷地境界線までの水平距離のうち最小のものが5m以上であること。
二 軒等の全部の各部分の高さは、当該部分から当該軒等が突き出た方向の敷地境界線までの水平距離に相当する距離以下とすること。
三 軒等の全部が不燃材料で造られていること。
四 軒等の全部の上部に上階を設けないこと。ただし、令第126条の6の非常用の進入口に係る部分及び空気調和設備の室外機その他これらに類するものを設ける部分については、この限りでない。
五 第一号から第四号に掲げる基準に適合する軒等の全部又はその一部について、次のイ又はロに掲げる軒等の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める面積の合計は、敷地面積(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第五十三条の規定により建蔽率の最高限度が定められている場合においては、敷地面積に当該最高限度を乗じて得た面積)に十分の一を乗じて得た面積以下とすること。
イ 建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線から突き出た距離が水平距離1m以上5m未満の軒等 その端と当該中心線の間の部分の水平投影面積
ロ 建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線から水平距離5m以上突き出た軒等 その端とその端から第二に定める距離後退した線の間の部分の水平投影面積
緩和を受ける為の条件をまとめると…
緩和を受ける為の条件
以下5つ全ての条件を満たすこと
建築物の用途について、工場又は倉庫の用途に供する建築物において専ら貨物の積卸しその他これに類する業務のために設ける軒等※であること
不燃材料で造られていること。
軒等※の全部が軒等※からの敷地境界線までの距離について、以下2つ全てに適合させること
- 軒等の突き出た方向から敷地境界線までの水平距離のうち最小のものが5m以上であること。
- 軒等の高さは、突き出た方向の敷地境界線までの水平距離の距離以下とすること。
軒等※の全部の上部に上階を設けないこと。(ただし、非常用の進入口や室外機等の部分を除く)
軒等※の面積について、次に掲げる区分に応じて算定し、敷地面積の1/10以下とすること
- 建築物の外壁等の中心線から突き出た距離が水平距離1m以上5m未満の軒等場合⇒その端と当該中心線の間の部分の水平投影面積
- 建築物の外壁等の中心線から水平距離5m以上突き出た軒等⇒その端とその端から5m後退した線の間の部分の水平投影面積
※軒等:軒、ひさし、はね出し縁等
それぞれの条件についてパブリックコメント等のQAを参考に確認していきましょう!
『建築物の用途』に関する条件について
建築物の用途に関する条件
工場又は倉庫の用途に供する建築物において専ら貨物の積卸しその他これに類する業務のために設ける軒等であること
緩和を適用する場合、その用途について制限があります。
また、緩和の対象はらあくまで『貨物の積卸しその他これに類する業務』に該当する場合のみです。パブリックコメントにより、『通行用途』では緩和を受けることが出来ません。
さらに、一部を常時保管するために利用する場合には、その全部で緩和の対象から外れてしまうという例も挙げられています。
上記の内容に注意して、緩和の適用を受けられるか確認するようにしましょう。
『不燃材料』の条件について
不燃材料で造られていること。
軒等の全部がこちらは、単純に軒等は不燃材料を作ればOKです。不燃材料の定義等については、以下の記事で解説していましので、確認してみてください。
『軒等からの敷地境界線までの距離』に関する条件について
軒等からの敷地境界線までの距離に関する条件
軒等からの敷地境界線までの距離について、以下2つ全てに適合させること
- 軒等の突き出た方向から敷地境界線までの水平距離のうち最小のものが5m以上であること。
- 軒等の高さは、突き出た方向の敷地境界線までの水平距離の距離以下とすること。
隣地との距離についての規制がいくつかあります。
突き出た方向という表現は、今までの建築基準法の表現には出てきていません。QAにより明示があったのでこちらで確認しておきましょう。
ただ、実際には軒等の前面は車路としてある程度の寸法は確保されているはずなので、計画によっては十分にこの条件を満たすことが出来そうですね。
『上階を設けない』に関する条件について
軒等の全部の上部に上階を設けないこと。(ただし、非常用の進入口や室外機等の部分を除く)
庇の上部には上階を設けることは出来ないという単純な規制です。
『軒等の面積』に関する条件について
軒等の面積に関する条件について
軒等の面積について、次に掲げる区分に応じて算定し、敷地面積の1/10以下とすること
- 建築物の外壁等の中心線から突き出た距離が水平距離1m以上5m未満の軒等場合⇒その端と当該中心線の間の部分の水平投影面積
- 建築物の外壁等の中心線から水平距離5m以上突き出た軒等⇒その端とその端から5m後退した線の間の部分の水平投影面積
敷地に対してあまりにも大きな軒等の計画をした場合は、緩和の対象とはならないようです。
あくまで緩和の対象は、『建蔽率の計算』に係る部分のみ
注意していただきたいのは、今回の建築面積の緩和は、『建蔽率の計算』しか除かれないということです。
他の建築基準法の建築面積に係る計算では、通常通り1mの緩和で計算をしなければなりません。
建築基準法で建築面積が登場するものだと、令114条3項(小屋裏の隔壁)などがありますが、こちらについては今回の計算方法を適用しないということです。
ちょっと計算は面倒かもしれませんね…
▼申請書3面では、記載欄が2つに
まとめ
✔️所定の条件を満たす倉庫等の庇について、端から5mまでは建築面積に算入しない
✔️所定の条件とは、以下5つ全ての条件を満たすこと
①建築物の用途について、工場又は倉庫の用途に供する建築物において専ら貨物の積卸しその他これに類する業務のために設ける軒、ひさし、はね出し縁等であること
②軒等の全部が不燃材料で造られていること。
③軒等からの敷地境界線までの距離について、以下2つ全てに適合させること
- 軒等の突き出た方向から敷地境界線までの水平距離のうち最小のものが5m以上であること。
- 軒等の高さは、突き出た方向の敷地境界線までの水平距離の距離以下とすること。
④軒等の全部の上部に上階を設けないこと。(ただし、非常用の進入口や室外機等の部分を除く)
⑤軒等の面積について、次に掲げる区分に応じて算定し、敷地面積の1/10以下とすること
- 建築物の外壁等の中心線から突き出た距離が水平距離1m以上5m未満の軒等場合⇒その端と当該中心線の間の部分の水平投影面積
- 建築物の外壁等の中心線から水平距離5m以上突き出た軒等⇒その端とその端から5m後退した線の間の部分の水平投影面積
✔️緩和の対象はあくまで建蔽率の算定時の建築面積。つまり、他の規制では今まで通りの計算方法にしなければならないので注意が必要