建ぺい率容積率

容積率の計算・緩和について|『前面道路』が与える影響簡単に解説

容積率ってなに?

容積率の計算方法は?

容積率には前面道路の幅員が関係するって本当?

容積率の緩和は?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

容積率とは、『容積率算定用の延べ面積÷敷地面積×100』で求めることが可能

上記で求めた容積率の値が、『都市計画・用途地域で定められた容積率』と『前面道路で定められた容積率』以下であることの確認が必要

容積率の計算には、都市と建築物のバランスを保つために、前面道路の幅員が重要となる

容積率の緩和として、車庫・備蓄倉庫など一部を除くことが可能

容積率は、複雑で苦手に思う方も多いかもしれませんが…

きちんと整理ができていれば簡単です!手順通りに確認すればいいだけ!こちらの記事では、わかりやすく解説します!(X:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版

『容積率』とは?

容積率とは、敷地面積に対する建築物の容積率算定用の延べ面積の割合

容積率=容積率算定用の延べ面積÷敷地面積×100

容積率とは、敷地面積と建築物の面積の割合を示します。小さな敷地に対して、高層の建築物などを建てた場合には、容積率は高くなります。

ところで、容積率算定用の延べ面積ってなに?
通常の延べ面積から、『車庫や備蓄倉庫などの特定の部分』を除いた延べ面積のことです!除けるものについては、『緩和』の部分で詳しくご紹介します!

容積率の算定で用いる延べ面積は、通常の延べ面積とは異なります。延べ面積から、車庫・備蓄倉庫などの建築物の部分を除いた延べ面積のことです。つまり、緩和が使った後の数値で計算をすることができる、ということです。

容積率の『計算方法』とは?

建築基準法では、計算した容積率が、下記2つを下回っていることを確認しなくてはならない

  • 都市計画・用途地域で定められた容積率
  • 前面道路で定められた容積率
わかりやすく表現すると、下記の式が成り立っていることを確認すればOKです

よくあるミスは、前面道路で定められた容積率の比較を忘れてしまうことです。どちらも比較必要がありますので、必ず確認するようにしましょう。

『都市計画・用途地域で定められた容積率』『前面道路で定められた容積率』について、さらに詳しく確認していきましょう!

『都市計画・用途地域』で定められる容積率の値とは?

都市計画・用途地域によって、容積率の値が定められている

用途地域 容積率(%)
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域
田園住居地域
50、60、80、100、150、200
第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域
100、150、200、300、400、500
第1種住居地域
第2種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
100、150、200、300、400、500
商業地域 200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300
工業地域・工業専用地域 100、150、200、300、400
用途地域の指定の無い区域 50、80、100、200、300、400

ざっくり、住居系の用途地域は容積率の値が小さく、商業系の用途地域は容積率の値が大きくなります。つまり、商業系の用途地域の方が、高層の建築物などが建てやすいと言えるでしょう。

表中のどの数値が指定されているかは、インターネットのサービスや、役所に問い合わせることで教えてもらえます!

容積率算定における『前面道路』の考え方とは?

下記の式を用いて、計算を行う

前面道路の幅員×A×100(%)

用途地域 Aの値
住居系用途地域 0.4
工業系・商業系用途地域・無指定 0.6

実は、容積率の制限は前面道路の幅員が大きく影響しています。その理由は、容積率は『建築物』と『道路等の都市施設』とのバランスを取るための規定だからです。

道路が広いということは、水道などのライフラインが整っているということです。そういった道路に対しては、大きな建築物を建てられるという関係性になっています。

ところで、道路の幅員が一定じゃなかったりすることもあると思うんだけど…その場合は、その数値を用いて算定すればいいの?
その場合は、建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 2022年度版に様々なケースが記載されていますので、そちらで確認するようにしましょう!

容積率の『緩和』とは?(容積率算定用の延べ面積の求め方)

容積率は、通常の延べ面積から下記の数値を除くことができる緩和規定がある

緩和できる建築物の部分 緩和できる割合
昇降機の昇降路の部分

住宅・老人ホーム等に設ける機械室等の建築物の部分で、特定行政庁が許可したもの

共同住宅の共用廊下・共用階段

全て
地階で、天井が地盤面からの高さ1m以下にあるものの住宅・老人ホーム等の部分 当該建築物の住宅等部分の床面積の1/3まで
自動車車庫等部分 延べ面積の1/5まで
備蓄倉庫部分、蓄電池設置部分 延べ面積の1/50まで
自家発電設備設置部分、貯水槽設 置部分、宅配ボックス設置部 延べ面積の1/100まで
緩和によっては、上限があるので注意が必要です!例えば、備蓄倉庫の緩和を使う場合は、下記の図解のようになります!

備蓄倉庫等の緩和の使い方については、下記で詳細に記載されています。

その他、法文に記載がない項目や、わかりにくい項目について、容積率計算に含めるかどうかを解説していきます!

『ビルトイン車庫(駐車場)』は容積率の算定に含むか?

ビルトイン車庫(駐車場)は、延べ面積の『1/5』まで容積率の算定に含まれない

車庫が容積率緩和が使えることは、比較的有名ではないでしょうか。しかも、使える面積の上限も1/5と比較的多いので、かなり使いやすいです。

『地階』は容積率の算定に含むか?

地階は、下記2つすべて満たす場合、当該建築物の住宅等部分の床面積の『1/3』まで容積率の算定に含まれない

  • 地階の用途が住宅・老人ホーム等であること
  • 天井が地盤面からの高さ1m以下にあるもの

地階は、確かに容積率の緩和を受けることが可能です。しかし、住宅などの特定の用途に対して使える緩和です。しかも、全ての床面積を除けるわけではなく、『当該建築物の住宅等部分の床面積の1/3まで』という上限があります。

じゃあ、事務所とかで地階の容積率緩和を受けようとしても、だめってことだね?
その通りです!特定の用途に該当すれば、比較的使いやすい緩和ではあるんですけどね!

『小屋裏収納(ロフト)』は容積率の算定に含むか?

小屋裏収納(ロフト)は、容積率の算定に含まれない(そもそも、延べ面積に算入されない)

そもそも、小屋裏収納(ロフト)に関しては、容積率の算定の基礎である、『延べ面積』にも算定されません。したがって、容積率の算定には算入されません。

『バルコニー(ベランダ)』は容積率の算定に含むか?

バルコニー(ベランダ)は、

所定の開放性等を有する場合容積率の算定に含まれない(そもそも、延べ面積に算入されない)

所定の開放性等を有しない場合容積率の算定に含む

バルコニー(ベランダ)の場合には、『所定の開放性等を有するかどうか』が非常に重要になってきます。つまり、外気に開放されていない閉鎖的なバルコニー(ベランダ)については、容積率の算定に含みます。一方、開放されていれば含まれないということです。

開放性の条件については、法文ではなく、技術的助言に記載があります。下記の内容を参考にしてください。

用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規p24/学芸出版社より引用

手すりが高かったり、奥行きが広いバルコニー(ベランダ)については、容積率の算定の対象となる可能性があります!

『出窓』は容積率の算定に含むか?

出窓は、所定の条件を満たした場合、容積率の算定に含まれない

出窓については、所定の条件を満たした場合には、容積率の算定の基礎である延べ面積に含みません。(当然、容積率の算定にも含みません)ざっくり言うと、『床』に類似した形態なのか、『開口部』に類似した形態なのかで、容積率の算定に含むかどうか変わります。

開放性の条件については、法文ではなく、技術的助言に記載があります。下記の内容を参考にしてください。

用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規p25/学芸出版社より引用

出窓を計画するときは、①出窓の高さ、②突出寸法、③窓の大きさの3点は確認するようにしましょう!

『屋上への階段・ペントハウス』は容積率の算定に含むか?

屋上への階段・ペントハウスは、建築面積1/8以下の小規模なものであっても、すべて容積率の算定に含む

屋上への階段・ペントハウスなどは、建築面積の1/8以下などの場合、『階数』と『高さ』には含まないという緩和規定が存在します。しかし、容積率の算定には、同じような緩和規定はありません。

たまに、階段室で建築面積1/8以下なら『容積率の算定には含まない!』という大変な勘違いをされている方がいます…。実際の計画で致命傷になりかねないので、しっかりとこの記事で把握するようにしましょう!

『異なる容積率』をまたぐ場合は?

異なる容積率をまたぐ場合、『敷地面積の按分』で求めること

用途地域をまたぐ場合など、異なる容積率をまたぐこともあると思います。その場合は、少し面倒ですが、按分計算を行う必要があります。

この根拠は、法52条7項です。合わせて確認しておきましょう。

建築基準法52条7項

建築物の敷地が第一項及び第二項の規定による建築物の容積率に関する制限を受ける地域、地区又は区域の二以上にわたる場合においては、当該建築物の容積率は、第一項及び第二項の規定による当該各地域、地区又は区域内の建築物の容積率の限度にその敷地の当該地域、地区又は区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。

まとめ

✔️容積率とは、『容積率算定用の延べ面積÷敷地面積×100』で求めること

✔️容積率算定用の延べ面積とは、緩和を使った後の延べ面積のこと

✔️建築基準法では、計算した容積率が、『都市計画・用途地域で定められた容積率』と『前面道路で定められた容積率』の2つどちらも下回っていることを確認する

✔️異なる容積率をまたぐ場合、『敷地面積の按分』で求めること

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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