「階数」と「階」の違いと言われても、ピンと来ない方は多いはずです。
それもそのはず、「階数」は建築基準法に定義がありますが、
「階」の定義については建築基準法に定義の明記が無いから。
「階数」と「階」の取り扱いは似ているようで全く異なってくるのでよく理解し、使い分けをして法適合を確認しなければなりません。
今回は、「階」の定義を解説、具体例をご説明していきます。
そもそも、「階」と「階数」の定義について
「階」は建築基準法に定義が無い
先ほど、「階」には建築基準法の定義は無いとご説明しましたが一般的には以下の要件を満たしていれば「階」の取り扱いとなります。
①一般的に人が立ち入る事ができる空間を有している事。 ②高さが1.4mを超えている事。 ③原則、屋根または床を有している事。
これだけだと、「階数」と同じだと思いますよね?ややこしいですが少し違います。
「階数」は法文に定義がある
「階数」の法的な定義は以下になります。
施行令第1項八号 階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の八分の一以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなつている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によつて階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。

「階数」は建築物の部分ごとに地上及び地下の階数を合計した数値です。
地上に限定する場合は「地上を除く」と法文で表現されています。
階数のカウント方法はわかりましたが、結局「階」との違いは法文を読んでもまだよくわかりません。
「階」と「階数」の違いは?

階という大枠の中に、階数があります。「階」とは、「階数」の定義から外されている余り物の事を指します。
では、「階数」の定義から外された「階」とは何でしょうか?
もう一度、階数の法文を確認してみましょう。
施行令第1項八号 階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の八分の一以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなつている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によつて階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。
つまり「階数」にならない「階」とは、赤マーカーしている建築面積1/8に抑えられた、昇降機塔などの事です。
もっとわかりやすい説明で言うと、一戸建て住宅でよく計画されるペントハウスです。ペントハウスは基準法の階数にはカウントしませんが、「階」の定義に該当しますよね?
「階」と「階数」の違いはわかったけど違いはあるの?
もちろん、あります。
ここで、階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の八分の一以下のもの、つまり階に該当させない定義に合致する法文について確認します。
まず、第一に階数には入らない事は先ほどの説明でわかったと思います。 次は高さの問題です。こちらの法文を確認しましょう。
施行令第1項六号 建築物の高さ 地盤面からの高さによる。ただし、次のイ、ロ又はハのいずれかに該当する場合においては、それぞれイ、ロ又はハに定めるところによる。 イ (抜粋) ロ 法第三十三条及び法第五十六条第一項第三号に規定する高さ並びに法第五十七条の四第一項、法第五十八条及び法第六十条の三第二項に規定する高さ(北側の前面道路又は隣地との関係についての建築物の各部分の高さの最高限度が定められている場合におけるその高さに限る。)を算定する場合を除き、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の八分の一以内の場合においては、その部分の高さは、十二メートル(法第五十五条第一項及び第二項、法第五十六条の二第四項、法第五十九条の二第一項(法第五十五条第一項に係る部分に限る。)並びに法別表第四(ろ)欄二の項、三の項及び四の項ロの場合には、五メートル)までは、当該建築物の高さに算入しない。 ハ (抜粋)
ところが、床面積については以上のような除かれる規定は無いので、算入されるのです。
基準法の階数 | 高さ | 床面積 | |
「階数」 | 算入する | 算入する | 算入する |
「階」 | 算入しない | 算入しない(※1) | 算入する |
※1 全ての高さに算入しなくていいわけでは無い。道路斜線、隣地斜線、最高高さ等からは12mを限度に算入されない。
まとめ:「階」は「階数」には該当しないが床面積には算入すべし
「階」と「階数」の違いについてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。意識せずとも使い分けをできている方もいらっしゃたんじゃ無いでしょうか。
注意点としては、たまにさらっと「階」に該当してくるケースがあり、面積に参入しなければならない事があります。
例をあげると、地下の設備点検スペースを人が立ち入るできるなら「階」にすべきなのではという考えもできてしまいます。
ちなみに、「階数」には点検スペースはそんなに広く無いと思うので建築面積の1/8以下には抑えられているので含まれる心配はそこまで無いと思いますが、床面積には含まれてくるので、容積率ギリギリの時は少し気にした方がいいかもしれませんね。