具体的にどんな室が居室になるの?
居室になると、建築基準法上、どんな規制内容なの?
こんなお悩みに対して法的根拠を元に解説していきます。
内容を簡潔にまとめると、
✔️居室の定義とは、『居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室』の事です。
✔️住宅だと、「居間」「寝室」「台所」などが居室になるが、判断は室名ではなく、使用方法で判断する
✔️もし居室になった場合、無窓検討や避難規定の検討が必要になる
その室が継続利用されるかどうか?判断をしなければいけません。
では、早速確認していきましょう!
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
『居室』の定義とは?
建築基準法では、以下のように居室の定義が示されています。
建築基準法第2条第四号
居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。
建築基準法では、以上のように居室の定義が示されています。しかし、建築基準法には『非居室』の定義はありません。違いを簡潔にまとめると、
居室 | 居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。 |
非居室 | 居室以外の室(継続的に使用しない室) |
継続利用する室は『居室』
それ以外の室は『非居室』
具体例|居室とは?
- 住宅のリビング、ダイニング、寝室、書斎、応接室
- 事務所の事務室、会議室、守衛室
- 病院の病室、待合室、診察室
- 飲食店の客席、厨房
- 物販店舗の売り場、休憩室
- 工場の作業場
- ホテルのロビー
- 病院等の待合室1、X線室、暗室(小規模なものを除く)
- 公衆浴場
具体例|非居室とは?
- 納戸
- トイレ
- 浴室
- 廊下
- 倉庫
- 更衣室
- 機械室
- 車庫
- 玄関ホール
曖昧な場合、居室か非居室かは室名だけでは決められない
曖昧な場合、居室か非居室かの判断は使い方によるので、室名では決められない
継続利用があるかどうか、個別判断をする必要がある
例えば、『更衣室』や『浴室』は使い方によっては居室扱いになります。それは、継続利用があるかどうか設計者が判断する事が多いです。
継続利用するかどうか、どのように判断するか、まだぴんと来ない方も多いはず。
これだったら『非居室』でも良さそうですよね。
なぜなら、法文上の『継続的に利用する室』とは言えないからです。
これだったらどうですか?
常時人が出入りをして、『継続的に利用する室』に合致してしまうので、『居室』として扱った方が良さそうですよね。
このように、使い方によって居室なのか非居室なのかというのは分かれるので、『この室名なら非居室だな!』という事にはなりません。あくまでも利用方法で『継続的に利用するかどうか』で判断すべきです。
居室かどうか迷う室の判断
さて、『継続的に利用するかどうか』を少し迷う室について考えてみましょう。
住宅の台所
住宅の台所は基本的には『非居室』として扱われます。ただし、広さ4.5帖以上の台所は居室として取り扱いをすべき
根拠は『S59の全国建築行政連絡会議の取扱い』より
住宅の台所においては次に該当するものは、居室として扱わないことができる
①調理のみに使用し、食事等の用を供しない(形態的に十分それが予測される。)
②床面積が小さく(おおむね3〜4.5帖程度)、他の部分と間仕切等で明確に区画されていること
『S59の全国建築行政連絡会議の取扱い』より
よって、4.5帖を超える台所は基本的には居室として取り扱った方が良さそうです。
浴室
まず、何の用途の浴室なのか?というのが大事です。
一般的に住宅の浴室は『非居室』として取り扱っても問題ありません。
他に考えられる浴室で、病院の浴室は『居室』になる事が多いです。病院だと、患者さんが順番に利用する事もあるので『継続的な利用』となったり寝たきりの方が浴室を利用する場合など、やはり健常者よりは超時間の利用が想定されるので『居室』として扱うべきとされる場合もあります。
このあたりは、利用方法を元に申請先に事前に確認をした方がいいと思います。
居室になると、建築基準法上どんな規制がかかるか?
無窓検討(採光・換気・排煙)と避難規定の規制内容が追加になる
建築基準法では、非居室よりも居室の方が圧倒的に規制が厳しいです。全ては紹介できませんが、大まかな内容を紹介します。
無窓検討(採光・換気・排煙)が必要になる
居室には、原則、窓が必要になる
居室には、採光、換気、排煙で有効となる窓が必要です。窓を作らずに居室を設ける事はかなり難しいです。
詳しくは、当サイトで詳しく解説しているので、確認してみてください。
避難規定の規制内容が追加になる
居室があると、避難規定(法第35条)が厳しくなる
これは想像がしやすいと思いますが、居室があるという事は、人が多くいる可能性があります。だから、非居室よりも、居室の方が圧倒的に規制が厳しいです。
避難規定とは、建築基準法第35条の事です。施行令で言うと、建築基準法施行令第116条の2〜128条の3の事です。
当サイトでも一部規定を解説しているので是非合わせて確認してみてください。
節 | 概要 | 政令 |
---|---|---|
第1節 | 総則 | ・第116条の2(窓その他の開口部を有しない居室等) |
第2節 | 廊下、避難階段及び出入口 | ・第117条(適用の範囲) ・第118条(客席からの出口の戸) ・第119条(廊下の幅) ・第120条(直通階段の設置) ・第121条(2以上の直通階段を設ける場合) ・第121条の2(屋外階段の構造) ・第122条(避難階段の設置) ・第123条(避難階段及び特別避難階段の構造) ・第123条の2(共同住宅の住戸の床面積の算定等) ・第124条(物品販売業を営む店舗における避難階段等の幅) ・第125条(屋外への出口) ・第125条の2(屋外への出口等の施錠装置の構造等) ・第126条(屋上広場等) |
第3節 | 排煙設備 | ・第126条の2(排煙設備の設置が必要な建築物) ・第126条の3(排煙設備の構造) |
第4節 | 非常用の照明装置 | ・第126条の4(非常用照明装置の設置が必要な建築物) ・第126条の5(非常用照明装置の構造) |
第5節 | 非常用の進入口 | ・第126条の6(非常用進入口の設置が必要な建築物) ・第126条の7(非常用進入口の構造) |
第6節 | 敷地内の避難上及び消火上必要な通路等 | ・第127条(適用の範囲) ・第128条(敷地内の通路) ・第128条の2(大規模な木造等の建築物の敷地内における通路) ・第128条の3(地下街) |
まとめ:最終的には設計者の判断と、申請先との調整次第
いかがでしたか。居室かどうかというのは、『この室は継続利用があるのかどうか?』という判断をした上で、申請先に事前に調整をしておいた方がいいです。
なぜなら、法文が曖昧で、これが居室!これが非居室!という定義が無いので、こればっかりは居室か非居室かは申請先によってバラつきが出るからです。いくら設計者が『これは継続利用がない室です』と主張をしても、あまりにもその説明に合致しないであろう、継続利用しそうな疑義がある場合は申請先も良しとはできないからです。
だから、もし迷った時は申請先との調整もしっかり行いましょう。