単体規定

敷地の安全性の規制とは?【建築基準法第19条について】

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建築基準法に、敷地の安全性っていう規定があるって聞いたけど、どんな規制なんだろう?

適合させるにはどうしたら良いんだろう?

こんなお悩みに対して法的根拠を元に解説していきます。

この規制の正体は、『建築基準法第19条』です。要点をまとめると、

✔️厳密には、安全性を確保しなければならないのは敷地ではなく『建築物

✔️建築物の安全性は崖条例と異なり、抽象的。故に厄介な規定

✔️適合させる方法は最終的には設計者判断になる事が多い(行政庁から指導が入る事もある)

今回の記事では、以上の内容を深堀りしていきたいと思います。

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社

まずは法文で内容を確認する

建築基準法第19条(敷地の衛生及び安全)

建築物の敷地は、これに接する道の境より高くなければならず、建築物の地盤面は、これに接する周囲の土地より高くなければならない。ただし、敷地内の排水に支障がない場合又は建築物の用途により防湿の必要がない場合においては、この限りでない。

 湿潤な土地、出水のおそれの多い土地又はごみその他これに類する物で埋め立てられた土地に建築物を建築する場合においては、盛土、地盤の改良その他衛生上又は安全上必要な措置を講じなければならない。

 建築物の敷地には、雨水及び汚水を排出し、又は処理するための適当な下水管、下水溝又はためますその他これらに類する施設をしなければならない。

 建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

この法第19条、読んでみるとわかりますが第4項以外は難しくありません。

問題は第4項です。以下、第4項をメインとして法第19条の規定を確認していきましょう。

安全性を確保するのは敷地じゃなくて『建築物』

法第19条のタイトルを確認してみましょう。『敷地の衛生及び安全』とあります。これだと、敷地に対しての規制だと感じますよね。

しかし、ここでもう一度建築基準法第19条第4項を読んでみましょう。

建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

あれ?第4項の主語が建築物になっている!
そう!だから、安全性を確保するべきなのは敷地じゃなくて『建築物』なんです!

タイトルのせいか、ここを敷地の勘違いする方が多いです。しかし、適合を判断する上で非常に重要なポイントなのでしっかり押さえておきましょう。

建築物の安全性の規定はとにかく曖昧

建築基準法第19条第4項を読むと、非常に曖昧な書き方をしていると思いませんか?

すごく曖昧!

まず、がけ崩れ等のおそれがある場合っていうのがどんな時かわからない。

それから、擁壁の設置その他安全上適当な措置って具体的にどうすればいいの?

その通り!そして、曖昧なのがこの規定の厄介なところ。

皆さんは、崖条例をご存知ですか?地方公共団体が条例で指定するもので、敷地の高低差が2mを超えた時に適用になる事が多い規制です。

この崖条例と今回の建築物の安全性(法第19条)の大きな違いは、明確な基準が無いという事です。崖条例は具体的な基準がありますが、建築物の安全性には明確な基準がありません。

明確な基準が無いと、がけ崩れ等のおそれがある場合 や 擁壁の設置その他安全上適当な措置はどうやって適合させるのか?これは、2つのケースがあります。

建築基準法第19条第4項の適合方法

①特定行政庁の指導があればそれに従う

②設計者が安全性の判断をする

基本的には②の設計者が安全性を判断するケースがほとんどですが、①の特定行政庁の指導入るケースもあり、そちらの方が厄介だったりします。

ここからは具体例で解説していきます。

困るのはこんなケースです。擁壁に注目してください。1m程度のそこそこ高低差がありますが、土留めの構造はコンクリートブロックです。

1mの高低差分の土圧と建物の荷重を支える擁壁がコンクリートブロックというのは、絶対に安全とは言い切れませんよね。法第19条大丈夫ですか?という指摘が飛んできてもおかしくない状況です。それに対してどう対応しましょうか。

擁壁に建物の荷重をかけない為に建物に鋼管杭を打ちますか?深基礎しますか?

擁壁から建物を離しましょうか。

上記の対応で確かに崖条例は適合させる事ができます。

しかし、何度もお伝えしている通り、法第19条は基準が曖昧なので適合させる為に基準が設けられていません。

その擁壁がもう明らかに危険でな場合、既存コンクリートブロック擁壁を破壊して型枠ブロックに作り変えを指導される可能性もあります。(これは①の特定行政庁の指導があるケースです。)

曖昧なので、設計者が安全を確保するのが原則ですが、特定行政庁から上記のような予測も出来ない指導が入る場合もあります。だからこそ、厄介な法文なのです。

ちなみに、擁壁の高さ2m超えると話は違ってきます

もう擁壁、2mってだけでピンと来ると思いますがこの規模は工作物確認申請対象です。

工作物の申請がされていない2m超の擁壁がある場合は必ず行政庁に取り扱いを確認しましょう。

本来だったら工作物申請が必要な擁壁です。だから、許可を取らないで勝手に作ったのではないか?という手続き違反の疑義が出てくるので。
その擁壁が隣地にあるんだったらまだいいですが、敷地内にある場合は最悪本当にやり変えの可能性が出てきます。(あんまりそこまでの話は無いとは思うのですが)

まとめ:既存擁壁については設計者で安全確認すべし

結論、法第19条が曖昧すぎて本当に困ります。

意識しだすと結構怖い条文です。

基準が曖昧というのはある程度設計者の主張通りになりますが、設計者の責任が重いと言えるでしょう。可能であればしっかり現場で擁壁の安全性を確認しておきたいですね。

最後までありがとうございました!

ABOUT ME
そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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