今回は『道路斜線の計算式・検討方法』についての記事です。
道路斜線の検討は、実はかなり複雑です。
複雑な理由としては、建物形状、敷地形状、高低差、道路幅員、更には用途地域と、道路斜線の検討をするだけなのに、かなりの要素が絡んでくるからです。
そんなに複雑なのにも関わらず、殆どの建築計画にかかってくる法規制ですし、絶対に見落としてはいけない法文の一つです。
そこで、『見落とさない道路斜線の計算式、検討方法』についてご紹介します。
それは、3つの手順に沿って確認する方法です。
この手順に沿って確認を行う事で、様々な要素が絡む複雑な検討ですが、見落とし少なく確認する事ができます。
では、早速その3つの手順を確認していきましょう!
(※今回の記事は実務向けです。建築士の試験向けではありません)
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
手順①勾配を『用途地域』で確認する
道路斜線の勾配は『×1.25』と『×1.5』に分かれます。
まずは、今回の用途地域で勾配を確認してください。
建築物がある地域 | 勾配 |
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域 第1種中高層住居専用地域 第2種中高層住居専用地域 第1種住居地域 第2種住居地域 準住居地域 |
×1.25(以下、住居系) |
近隣商業地域
工業地域 準工業地域 工業地域 工業専用地域 |
×1.5(以下、商業系) |
用途地域の指定のない区域 | ×1.25又は×1.5
(行政庁の審査会の儀によって地域毎に異なる) |
手順②検討位置、計算式を『建物形状』『敷地形状』『道路幅員』『道路との高低差』で確認する
次は、検討位置を確認するのですが、これが1番難しいです。
そこで、3つの要素で確認するようにしてください。
その1、屋根形状によって確認する
道路に面している立面図を確認して、道路に距離が近く、建物の高い部分をターゲットにして確認します。
この時、怪しそうな箇所が複数あったら、すべての箇所で確認しましょう。(以下2つも同じ)
その2、高低差で確認する
敷地と道路の高低差が大きい部分をターゲットにして確認します。
なぜなら、図中の検討式を見ていただけるとわかると思いますが、敷地と道路の高低差も大きな影響を与えるからです。
その3、距離で確認する
道路の対岸側から、建物までの距離が短い部分をターゲットにして確認します。
この時、もし道路の幅員が異なる場合でも、あくまで道路の対岸側からの距離です。(要するに、幅員が狭い箇所も厳しくなる)
手順③:建築物の部分の高さを計算する
最後に、先程の検討式の中で、一箇所不明な数値があったかと思います。
それは、建築物の部分の高さAです。
次にこちらを求めます。
このAは基本的に『最高高さ』か『樋先高さ』のいずれかになる事が殆どです。
(申請先によるとは思いますが、)最高高さは立面図に寸法を落とし、確認すればいいのですが、
樋先高さについては、計算式を用いて算定する必要があります。
そこで、その検討方法についても以下のように算定する事ができます。
これで、Aの高さを求める事ができるので、先程の式に当てはめて、成立していればokです。