施行日:2023年(令和5年)4月1日
住宅の居室には、採光上の有効な開口部が必須です。従来、こちらの規制については緩和が無く、厄介な存在でした。しかし、法改正により緩和規定が追加されることとなりました。
簡単に緩和の内容をまとめると…
床面において50lx以上の照度を確保できる照明設備を設けた場合は、採光上の有効な開口部の数値が低減される(低減数値:1/7→1/10)
住宅の居室に定めなし(ただし、今後技術的助言に定められる可能性あり)
照明設備の条件は、現状は2点の明示事項あり
確認申請の図面には、故障や取替えを行った際に違反建築物となる危険性も…
緩和を受ける場合、ただし、実務で緩和を利用する場合は注意をしないと違反建築物となってしまう落とし穴がありそうです…!そちらも合わせて確認していきます!(sozooro)
採光計算の基本的な内容については以下の記事を確認してください。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
法文で改正内容を確認する
改正前 |
令19条3項 第28条第1項に規定する学校等における居室の窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積のその床面積に対する割合は、それぞれ次の表に掲げる割合以上でなければならない。ただし、同表の(一)から(五)までに掲げる居室で、国土交通大臣が定める基準に従い、照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置が講じられているものにあっては、それぞれ同表に掲げる割合から1/10までの範囲内において国土交通大臣が別に定める割合以上とすることができる。
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改正後 |
令19条3項 第28条第1項の政令で定める割合は、次の表の上欄に掲げる居室の種類の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる割合とする。ただし、同表の(一)の項から(六)の項までの上欄に掲げる居室のうち、国土交通大臣が定める基準に従い、照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置が講じられているものにあっては、それぞれ同表の下欄に掲げる割合から10分の1までの範囲内において国土交通大臣が別に定める割合とする。
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(参考:国土交通省のHP▶︎https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000941.html)
あまり目立っていませんでしたが、以前から採光義務に対する緩和は存在していました。ただし、緩和が使える居室は保育園・幼稚園等の居室に限られており、住宅の居室で緩和は使えませんでした。
しかし、今回の法改正によって、住宅の居室も緩和の対象として追加されました。
告示1800号
第一 照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置の基準
一~三 (略)
四 住宅の居住のための居室にあっては、床面において50lx以上の照度を確保することができるよう照明設備を設置すること。
第二 窓その他の閉口部で採光に有効な部分の面積のその床面積に対する割合で国土交通大臣が別に定めるもの
一 (略)
二 第一第三号又は第四号に定める措置が講じられている居室にあっては、1/10とする。
(参考:国土交通省のHP▶︎https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000096.html)
まとめると、以下の内容になります。
緩和内容のまとめ
住宅の居室には、床面積×1/7以上の面積を有する採光上有効な開口部が必要。
ただし、床面において50lx以上の照度を確保する照明設備を設けることで、
床面積×1/10まで必要となる面積を低減することが可能となる
続けて、もう少し緩和の内容を掘り下げていきましょう。
所定の照明設備とはどんなものか?
照明設備には条件はあるの?
Q.照明設備の種別(白熱灯、LED)や形状(天井埋め込み、 吊り下げ)等に制限はあるか。
A.本件改正において種別や形状等は制限しておりませんが、必要に応じて技術的助言等において お示しいたします。
(パブリックコメントより)
現状では、種別や形状等は定められていないようですが、技術的助言で今度定められる可能性がありそうです。もし定められた場合は、こちらの記事に追記していきます。
Q.調光タイプの照明設備については、出力を最大にした際に、床面において 50ルックス以上の照度が確保できていれば良いか。
A.貴見のとおりです。
(パブリックコメントより)
Q.居室の床面全てにおいて50ルックス以上の照度を確保しなければならないのか。
A.当該緩和規定を適用する場合には、原則として、居室の床面全てにおいて50ルックス以上の照 度を確保する必要があります。
(パブリックコメントより)
緩和を受ける場合、確認申請には記載すべき事項は?
Q.当該緩和規定が適用される建築物における確認申請時 の図書と明示すべき事項を明確にすべき。
A.具体的には、平面図や電気設備の詳細図等に
・照明設備の設置位置
・50 ルックス以上の照明設備を設置する旨 を明示していただくことなどを想定しており、今後、技術的助言において改めてお示しする予定です。(パブリックコメントより)
現状わかっている範囲では、平面図や電気設備図に『照明設備の設置位置』や『50ルックス以上の照明設備を設置する旨』を記載する必要があるようです。
技術的助言で詳細に定められた場合は、こちらの記事に追記していきます。
四号特例については以下の記事を参考にしてください。
緩和を受けた場合、完了検査時の現場設置状況は?
Q.完了検査の方法を明確にすべき。
A.完了検査時には、所要の照明設備の設置が可能であることを確認するため、照明設備を設置す るためのシーリングローゼット等が、確認申請図書と同様の位置に設置されていることを目視等により確認する等の検査方法について、今後、技術的助言において改めてお示しする予定です。
(パブリックコメントより)
検査の方法は、基本的には位置の確認などを行うようです。ただし、詳細な内容については技術的助言で明示される予定です。
技術的助言で詳細に定められた場合は、こちらの記事に追記していきます。
緩和を使う場合に注意すべき内容は?
ただ、緩和を使う場合は注意しないと、後になって違反建築物になってしまう可能性もあります…
照明設備は、当たり前ですが、故障や取替えが発生するものです。この取替えをするのは、住宅に居住している一般の方でしょう。
緩和を受けている場合は、床面の照度が50ルックス以上確保されている照明設備に取替えなくてはなりません。その選別を、一般の方が行わなければならないと言うことです…。
もし、条件を満たす照明設備に取替えをしない場合、違反建築物扱いになってしまいます。パブリックコメントにも、同様の回答がされています。
Q.照明設備の故障や取替等により当該緩和規定に適合しない状態となった住宅は建築基準法違反となるのか。
A.建築基準法施行令(昭和 25 年政令第 338 号)第 19 条第3項ただし書の規定に適合しなくなった 場合は、違反となります。
(パブリックコメントより)
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住宅の居室は、建築基準法の中でも扱いが特殊です。
住宅には、採光計算が義務になっているだけでなく、他にも換気無窓や排煙無窓などの規制が複雑に絡んでいます。これらの内容を住宅の用途に絞り、わかりやすく解説しています。ぜひ、住宅設計でお困りの方はお手に取ってみてください。
まとめ
✔️住宅の居室に床面において50lx以上の照度を確保できる照明設備を設けた場合は、採光上の有効な開口部の数値が低減される(低減数値:1/7→1/10)
✔️現状、照明設備は種別や形状等は定められていない
✔️確認申請の図書に明示すべき内容は以下2点
- 照明設備の設置位置
- 50 ルックス以上の照明設備を設置する旨
✔️緩和を受ける場合、取替え時にも条件(床面において50lx以上の照度を確保できる照明設備)を満たす照明設備を設置するようにしなければ、違反建築物扱いとなる