北側斜線制限の計算式とは?
北側斜線制限と日影規制の関連はある?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
北側斜線制限とは、北側隣地の採光や通風が確保されるように、建築物の高さを制限しているもの
計算式は、用途地域によって異なり、下記の通り 北側斜線制限の
用途地域 | 計算式 | |
基準高さ | 勾配 | |
第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 田園住居地域 |
5m | 1.25 |
第一種中高層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 |
10m | 1.25 |
日影規制の関連は、少しだけ存在する。具体的には、日影規制が指定される第一種・第二種中高層住居専用地域の北側斜線制限は適用除外される 北側斜線制限と
|
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:増補改訂版 用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 著書:身近な事例から学ぶ 面白すぎる建築法規 /学芸出版社 |
『北側斜線制限』とは?
北側に接する建築物の高さを制限するもの
北側斜線制限とは、原則として、北側に近い部分には高い建築物を建てることができない
建築基準法には、法56条により、建築物の高さについての定めがあります。高さの制限は3種類存在していて
です。
今回の記事で解説するのは、北側斜線制限です。
北側に面して高い建築物を計画してしまうと、北側隣地の採光や通風の確保が出来なくなってしまいます。そこで、北側斜線制限により、建てられる建築物を規制しています。
どうして『北側』を制限しているのとか言うと、基本的に南側に日が当たるため、南側の家が高すぎると北側の家の日当たりを奪ってしまう可能性があるからです。

北側斜線制限では、『建築可能範囲』を求めます。そして、その求めた建築可能範囲に限り、建築物を計画することが可能となります。

規制を受ける地域とは?
北側斜線制限は、下記の用途地域に適用される
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 田園住居地域
- 第一種中高層住居専用地域(日影規制が指定される場合、適用除外)
- 第二種中高層住居専用地域(日影規制が指定される場合、適用除外)
北側斜線制限は、主として、住環境が重視される用途地域のみに適用されます。つまり、これらの用途地域以外については、北側斜線制限は適用されません。
日影規制の適用を受ける場合、どうして適用除外?
日影規制が指定されている場合、北側斜線制限は適用されない。
第一種・第二種中高層住居専用地域は、その理由は、日影規制を遵守することで法の目的を達成できると考えられるため
実は、第一種・第二種中高層住居専用地域で北側斜線制限の検討をするケースは少ないです。その理由として、第一種・第二種中高層住居専用地域のは日影規制が指定されていることが多いからです。
日影規制は、北側隣地の敷地に影を落とさないようにする規制です。目的としては、北側斜線制限と近い部分があるので、2重に規制がされないように、適用除外になっていると考えられます。
北側斜線制限の『計算方法』
北側斜線の検討式は、以下の通り
用途地域 | 計算式 |
|
5m + 1.25 × 真北距離 > 地盤面からの建築物の高さ |
|
10m + 1.25 × 真北距離 > 地盤面からの建築物の高さ |

北側斜線制限の計算式は、用途地域によって異なります。ただ、立ち上がりの高さが異なるだけで、勾配は『1.25』と同じです。勘違いが多いところなので、注意しましょう。
真北距離とは?
北極点の方向の距離のこと
真北距離とは、![]()
『国土地理院のHP』より引
北を示すものと言ったら、磁石を思い浮かべるかもしれません。しかし、磁石が示すのは『磁北』と呼ばれ、真北とは異なります。場所にもよりますが、磁北と真北は7度程度のズレがあります。結構な大きな違いがありますよね。
磁北で検討をしてしまって、真北に直したらNGだった…みたいなケースもあるので、注意しましょう!
地盤面からの高さとは?
建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面のこと
地盤面とは、
敷地の高さは必ずしも一定ではありません。そんな敷地に建築物を建てたら、建築物の高さがどれくらいなのかわかりませんよね。だから、建築物の周辺の地盤の高さを計算します。これが地盤面です。
北側斜線制限の計算では、建築物の高さは地盤面からとなります。詳しい算定方法などは、下記の記事を参考にしてみてください。
北側斜線にはどんな『緩和』がある?
下記の緩和が存在する
北側斜線制限には、名称 | 緩和の内容 | 図解 | |
川等の緩和 | 北側隣地に川等がある場合、その川等の1/2側の境界線からの距離で北側斜線制限を算定することが可能 | ![]() |
|
高低差緩和 | 道路と北側隣地に1mを超える高低差がある場合、算定した数値分あげた部分を道路面とみなして、北側斜線制限の算定が可能 | ![]() |
北側斜線制限には、多くはないですが、緩和規定があります。しかし、川等がある場合や敷地に高低差がある場合など、敷地に対して条件があるため、そこまで使いやすい緩和とは言えません。
北側斜線制限の緩和については、下記の記事で詳しく解説しています。
建築物の高さに含めない部分
北側斜線制限の計算において、下記の建築物の部分は、高さから除くことが可能
全ての規制で高さに算入しなくてもよい建築物の屋上部分 | 棟飾、防火壁の屋上突出部その他これらに類する屋上突出物 | 令2条1項六号ロ |
塔屋(ペントハウス)=建築物の高さから除かれるというイメージがあるかと思います。しかし、実際には、道路斜線制限と隣地斜線制限の高さから除かれますが、北側斜線制限の高さには含めなくてはなりません。
道路斜線制限 | 隣地斜線制限 | 北側斜線制限 | |
塔屋(ペントハウス)の扱い | 高さに含まない | 高さに含まない | 高さに含む |

参考:著書『増補改訂版 用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規/そぞろ』
ペントハウスについては、下記の記事で詳しく解説しています。
北側斜線制限と『高度斜線制限』の違いは?
建築基準法で定められているもの
北側斜線制限は高度斜線制限は、都市計画によって定めているもの
高度斜線制限とは、高度地区に定められる規制のことで、主として高さに関する規制をすることができます。その具体的な内容は、都市計画によって定めることがあります。つまり、地域によって内容が異なるということです。
だから、北側斜線制限と高度斜線制限は全くの別物です。
![]()
『https://www.ancoffice.com/anc/advice/toukyoto_koudo.html』より引用
北側斜線制限と高度斜線制限、似ているのでごっちゃに考えてしまいますが、実は、高度斜線制限の方が厳しい場合が多いです。例えば、東京都で指定されている高度斜線については、第1種は勾配が0.6です。明らかに厳しいですよね。また、第2種の場合には、真北距離8m以上の場合には勾配が1.25から0.6となってしまいます。
このように、規制上は似ていても、高度斜線制限の方が厳しかったりします。(もちろん、都市計画で定められる内容なので、一概には言えませんが)
詳しくは、下記の記事で詳しく解説しています。
法文で確認する【建築基準法56条1項三号】
北側斜線制限は、『建築基準法56条1項三号』に記載されています。
建築基準法56条1項三号
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域若しくは田園住居地域内又は第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域(次条第一項の規定に基づく条例で別表第四の二の項に規定する(一)、(二)又は(三)の号が指定されているものを除く。以下この号及び第七項第三号において同じ。)内においては、当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水平距離に一・二五を乗じて得たものに、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内の建築物にあつては五メートルを、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域内の建築物にあつては十メートルを加えたもの
まとめ
✔️北側斜線制限とは、北側に接する建築物の高さを制限するもの
✔️北側斜線の検討式は、下記の用途地域に、下記の計算式で適用される
用途地域 | 計算式 |
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5m + 1.25 × 真北距離 > 地盤面からの建築物の高さ |
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10m + 1.25 × 真北距離 > 地盤面からの建築物の高さ |
✔️北側斜線制限の検討式は下記の通り
名称 | 緩和の内容 |
川等の緩和 | 北側隣地に川等がある場合、その川等の1/2側の境界線からの距離で北側斜線制限を算定することが可能 |
高低差緩和 | 道路と北側隣地に1mを超える高低差がある場合、算定した数値分あげた部分を道路面とみなして、北側斜線制限の算定が可能 |