建築基準法のことを知っている方であれば、京アニの事件を見て疑問に思いませんでしたか?
京アニの建物はおそらく、ロ準耐。
ロ準耐だった場合、建築基準法上、竪穴区画不要になるでしょう。
なので、京アニの建築物は建築基準法に違反していた訳ではありません。
しかし、京アニの建築物がもし竪穴区画をしていた場合、もっと被害は抑える事ができたかもしれません。
竪穴区画の法の趣旨、どうして竪穴区画がロ準耐は不要なのか?
そちらを今回はご紹介します。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
竪穴区画の法の趣旨、他の階に煙が広がる事を防ぐ
竪穴区画とは、階段部分を区画して、火災が起こった時に他の階に火が燃え広がる事を防ぐ規制。
煙というのは、横に広がるより、縦に広がるの方が早いです。
下階で起こった煙はあっという間に建物全体に広がります。
そこで、他の階に煙が広がらないように、階段部分や吹抜部分とその他の部分を区画しましょうね!というのが竪穴区画です。
竪穴区画が必要な建築物は?
主要構造部が準耐火構造 かつ 3階部分に居室がある
壁、柱、床、はり、屋根、階段
この6点の事。
つまり、この6点セット(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が準耐火構造だったら、
竪穴区画が必要になる、という事です。
どうしてロ準耐は竪穴区画かからないの?
それは、主要構造部が準耐火構造になっていないから。
もう少しわかりやすく言うと、一部主要構造部が準耐火構造になっていないから。
竪穴区画必要なんじゃないの?
準耐火構造の仲間だけど、主要構造部が準耐火構造じゃなくても認められてしまいます
ロ準耐火は準耐火構造もどき。
どうしてでしょうか?法文で確認してみましょう。
建築基準法第2条九の三号 準耐火建築物 耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。 イ 主要構造部を準耐火構造としたもの
ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの
ロ準耐と呼ばれる建築物は、いわゆるこの建築基準法第2条九の三号のロに該当建築物のこと。
法文に書いてある通りなのですが、
イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの
とあり、主要構造部を準耐火構造にする必要が無いのです。
一部の主要構造部を準耐火構造にしない事ができます。
(例えば、階段とか)
そうすると、竪穴区画がかかる建築物の条件である「主要構造部が準耐火構造」の定義から外れるのです。
よって、ロ準耐は竪穴区画が不要な建築物
になるのです。
ロ準耐は外からの火災に強く、中からの火災には弱い
さて、実際にロ準耐の構造を確認してみましょう。
ちなみに、ロ準耐にはロ-1とロ-2があります。
建築基準法施行令第109条の3第1号がロ-1
建築基準法施行令第109条の3第2号がロ-2
となります。一覧にすると
ロ準耐は竪穴区画が不要な上に、このように外側の性能は高いですが、内側の性能は低いです。
特に、ロ-1なんて、壁と屋根しか性能が求められていません。
これで延焼ラインに防火設備を設置すれば、準耐火建築物になるのです。
まとめ:竪穴区画をさせない為に、ロ準耐にするのはどうなのか。
竪穴区画を回避したい→ロ準耐にしよう!
というのは、建築基準法上、だめではありません。
しかし、今回の京アニの事件で、もし耐火構造やイ準耐にして、竪穴区画をしていたら。
あんなに被害は広がらなかったかもしれません。
正直、あの事件は犯罪なので建築基準法や消防法で守れる範囲では無いのかもしれませんが、
改めて竪穴区画は非常に重要な法文だと世の中が認識する事になった事件だと思います。
ロ準耐で竪穴区画を無しにする事もできますが、本当に利用者さんを大事に思うのであれば、竪穴区画はした方がいいかもしれませんね。
最後までありがとうございました!