高層区画の区画方法は?
共同住宅の住戸の場合、どうやって区画するの?
高層区画は、スプリンクラー設置で緩和できるって本当?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
非常時に危険性の高い高層階(11階以上)の安全性を高める為に区画をすること
高層区画とは、防火区画の1つで、原則として、100㎡以内ごとに耐火構造の壁・床・防火設備で区画が必要(ただし、内装を強化することで200㎡又は500㎡に緩和可能)
高層区画は、共同住宅の住戸の場合、200㎡以内ごとでOK(ただし、特定防火設備で区画が必要)
その設置部分の1/2を区画面積から除くことが可能(単純に数値倍読みではないので注意)
高層区画は、スプリンクラー設置によって、今回は、基本的な内容から緩和の内容まで、わかりやすく解説していきます! (twitter:sozooro)
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
『高層区画』とは
4つある防火区画の1つ 高層区画とは、
建築基準法施行令112条により、建築基準法には防火区画が定められています。防火区画には4種類存在していて、①面積区画、②高層区画、③竪穴区画、④異種用途区画です。
この中に、高層区画があります。
高層区画は、簡単に言うと、高層階(11階以上)の安全性を高める為に、区画をすることです。11階以上の階で火災が発生すると、はしご車による消防隊の救助が出来ません。はしご車が届かないからですね。したがって、高層階は低層階よりもリスクが高いです。
そこで、高層部分を防火区画することにより、安全性を高めているのです。
区画が必要になる建築物 | 建築物の内装・用途 | 区画面積 | 区画方法 | |
壁・床の構造 | 防火設備の種別 | |||
建築物の11階以上の部分 | 一般の建築物 | 床面積≦100㎡ | 耐火構造 | 防火設備※1 |
内装仕上げ・下地: 準不燃材料 (床面から1.2m以上の範囲) |
床面積≦200㎡ | 特定防火設備※1 | ||
内装仕上げ・下地: 不燃材料 (床面から1.2m以上の範囲) |
床面積≦500㎡ | 特定防火設備※1 | ||
共同住宅の住戸部分 | 床面積≦200㎡ | 特定防火設備※1 | ||
※1…以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、以下2つのいずれかと連動して自動閉鎖するもの ・煙感知器 ・熱煙複合式感知器 |
(↑わかりやすくするために、床の防火区画は省略しています)
11階以上から一気に区画が増えるイメージです!
さらに、区画についての注意したいのは、防火設備に加えて、閉鎖方式の指定があるということです。常時閉鎖又は随時閉鎖の性能が必要です。(令112条19項)具体的には、以下のいずれかに適合しているものにしなくてはなりません。
- 告示仕様(告示2564号)に適用していること
- 大臣認定(CAS-⚫︎⚫︎⚫︎)を取得しているものであること
単なる特定防火設備だと、火災が起こっても、開口部が開きっぱなしになる可能性があります。これだと、区画している意味がありませんよね。だから、閉鎖性能等についての指定があるのです。
配管の貫通について
所定の措置をしなくてはならない 防火区画に配管等を貫通する場合は、
防火区画には、原則として、配管等をは貫通させない方が良いです。しかし、やむを得ず貫通が必要な場合もあるかと思います。
その場合、所定の措置をしなくてはなりません。(建築基準法施行令112条20項、21項)
貫通する給水管・配電管等の措置
以下2つ全てに適合させること
①管と防火区画との隙間をモルタル等の不燃材料で埋めること
②以下3つのいずれか1つに適合させること
・貫通する部分からそれぞれ両端1m以内の距離にある管を不燃材料で造ること
・管の外径が、用途、材質その他の事項に応じて告示1422号が定める数値未満であること
・国土交通省の認定を受けたもの
貫通する換気、暖房、冷房の風道等の措置
特定防火設備であって、大臣が定めた構造又は大臣の認定したものであること
スパンドレルについて
スパンドレルの計画が必要です 高層区画を計画する場合、
スパンドレルとは、建築物の内部からではなく、外部からの回り込みによる延焼を防止するための規定です。
面積区画とぶつかる外壁は、そこを含む90㎝以上の外壁を準耐火構造とするか、50㎝以上突出した庇を準耐火構造とし、開口部があった場合は防火設備としなくてはなりません。
図
高層区画の『緩和』とは?
高層区画で使える緩和
- 『階段室の部分若しくは昇降機の昇降路の部分』で耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画した場合、高層区画不要(令112条10項)
- 『廊下その他避難の用に供する部分』で耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画した場合、高層区画不要(令112条10項)
- スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもの(自動式)を設けた部分は、その部分の床面積の1/2を区画面積から除くことが出来る(令112条1項)
高層区画については3つの緩和があります。それぞれの特徴について確認していきましょう。
階段室の部分・昇降機の昇降路の部分・廊下の部分
これらはいわゆる避難で使われる部分です。
避難経路を区画してしまうと、逆に避難に支障が出てくることがありますので、これらの部分は高層区画をしなくても良いこととされています。
ただし、耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画で区画する必要がありますので、注意しましょう。
スプリンクラー等の設置部分
スプリンクラー等(自動式)を設けることで、その設置部分の1/2を区画面積から除くことが出来ます。しかし、あくまで設置部分に限るので、注意が必要です。
スプリンクラーを設置すれば、単純に倍読みの100→200㎡となるわけでは無いので、そこは注意してください!
建築基準法で『高層区画』を確認する
建築基準法施行令112条
まとめ
✔️高層区画は、基本は100㎡以内。ただし、内装制限等をすることで、最大500㎡まで緩和される
区画が必要になる建築物 | 建築物の内装・用途 | 区画面積 | 区画方法 | |
壁・床の構造 | 防火設備の種別 | |||
建築物の11階以上の部分 | 一般の建築物 | 床面積≦100㎡ | 耐火構造 | 防火設備※1 |
内装仕上げ・下地: 準不燃材料 (床面から1.2m以上の範囲) |
床面積≦200㎡ | 特定防火設備※1 | ||
内装仕上げ・下地: 不燃材料 (床面から1.2m以上の範囲) |
床面積≦500㎡ | 特定防火設備※1 | ||
共同住宅の住戸部分 | 床面積≦200㎡ | 特定防火設備※1 | ||
※1…以下のいずれかの構造 ①常時閉鎖式 ②随時閉鎖式で、以下2つのいずれかと連動して自動閉鎖するもの ・煙感知器 ・熱煙複合式感知器 |
✔️高層区画には、以下の緩和を使うことができる
- 『階段室の部分若しくは昇降機の昇降路の部分』で耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画した場合、高層区画不要(令112条10項)
- 『廊下その他避難の用に供する部分』で耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画した場合、高層区画不要(令112条10項)
- スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもの(自動式)を設けた部分は、その部分の床面積の1/2を区画面積から除くことが出来る(令112条1項)