建ぺい率容積率

備蓄倉庫の容積率緩和について|計算方法・定義・住宅で使えるか解説

備蓄倉庫ってなに?定義とかあるの?

備蓄倉庫の容積率緩和ってどうやって使うの?計算方法は?

住宅の備蓄倉庫でも、容積率緩和は使えるの?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

備蓄倉庫とは、非常用食糧を備蓄する用途や応急救助物資等を備蓄する倉庫のことで、容積率緩和を受ける場合、プレートの設置などの条件がある

備蓄倉庫の容積率緩和は、延べ面積の1/50まで、緩和することが可能(ただし、緩和できるのはあくまで容積率の算定上の数値のみ)

一戸建て住宅であっても、備蓄倉庫の容積率緩和の適用が可能(ただし、念の為に申請先に事前確認は必要)

備蓄倉庫の容積率緩和は、比較的使いやすい緩和のため、利用される方が多いのではないでしょうか。

今回は、国土交通省から出ている技術的助言の情報を踏まえ、備蓄倉庫の容積率緩和について徹底解説します!X:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版

『備蓄倉庫』とは?

備蓄倉庫とは…

災害が発生した際に食料品や衛生用品などの生活必需品を確保するための非常用保管倉庫のこと。

建築物内の一室に設けてもいいし、別棟でも設けてもOK

なんとなく、備蓄倉庫と言われたらイメージできると思いますが、万が一の災害が発生した場合の非常食などを備蓄しておく倉庫です。

2011年の東日本大震災で、備蓄倉庫の重要性が再認識され、計画しやすいように、備蓄倉庫の容積率緩和が追加された、という経緯があります!

容積率の計算方法などについては、下記の記事を確認してください。

なるほどね。

ところで、備蓄倉庫だったなんでも緩和を使えるの?

いえ!備蓄倉庫を計画して、容積率の緩和を使う場合には、条件があります!

容積率緩和を受ける備蓄倉庫の『定義』とは?

容積率緩和を受ける備蓄倉庫の定義は、下記2つを満たすこと

  • 利用者に見えやすい位置に備蓄倉庫である旨の表示されていること
  • 備蓄倉庫部分は壁や建具で囲われた専用室とする

こちらは、技術的助言に記載されている内容です。原文を確認したい方は、下記を確認してください。

クリックで国住指第 2315 号を確認

国住指第 2315 号

2 (1)防災用の備蓄倉庫の用途に供する部分(以下「備蓄倉庫部分」という。)

「専ら防災のために設ける備蓄倉庫」とは、非常用食糧、応急救助物資等を備蓄 するための防災専用の倉庫であり、利用者に見えやすい位置に当該倉庫である旨の表示されているものをいう。

—(抜粋)—

3 適用範囲について 本規定を適用させる部分については、壁で囲われた専用室であることを原則とする。ただし、蓄電池設置部分、自家発電設備設置部分及び貯水槽設置部分にあっては、壁 で囲われた専用室でなくとも、当該設備を設けるために必要な範囲において、他の部 分と明確に区画されていれば、当該部分の床面積を不算入として差し支えない。

建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施行について(https://www.mlit.go.jp/common/000228859.pdf) より

備蓄倉庫の『計算方法』とは?

備蓄倉庫の計算方法とは…

延べ面積の1/50を限度として、容積率対象の床面積から除くことができる

容積率の緩和は、備蓄倉庫の計画すべてが使えるとは限りません。限度があるため、あまりにも大きな備蓄倉庫を計画する場合、一部は通常通り容積率対象の床面積に含める必要があります。

なお、計算で使う延べ面積とは、『敷地全体の延べ面積』のことです。つまり、複数の建築物がある場合には、合計してOK。もちろん、備蓄倉庫の面積も全部含めてくださいね。(あんまり難しいことは考えずに、敷地内の建築物をすべて合計した面積としてください)

図解で示すと、下記のようになります。

備蓄倉庫の緩和は『住宅』でも使えるか?

備蓄倉庫の緩和は、用途に制限がないため、住宅でも使える

ただし、建築後の転用を防止するため、必要に応じ報告を求められることもある。場合によっては、立入検査が入る可能性もある

まず、技術的助言にも、用途は問わないと記載がされています。しかし、やはり転用をして違反になりやすい部分なので、そのための報告・検査は行うように記載されています。そちらの部分を、引用していますので確認してください。

クリックで国住指第 2315 号を確認

国住指第 2315 号

2 適用対象について

本規定は、建築物の用途を問わず、令第2条第3項に規定する割合を上限として、以下に掲げる部分に適用される。

—(抜粋)—

6 違反建築物の現出防止について

建築基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号)を改正し、備蓄倉庫部分等の床面
積を建築確認申請書の記載事項として加えたところ。特定行政庁にあっては、本規定 の適用を受け建築される建築物について、台帳の整備により本規定の適用実態を適切 に把握するとともに、建築後の転用を防止するため、必要に応じ、報告を求め、又は 立入検査等により実態の把握や違法状態の是正に努められたい。

建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施行について(https://www.mlit.go.jp/common/000228859.pdf) より

じゃあ、住宅に備蓄倉庫を計画する場合、何か事前に確認とかした方がいいの?
そうですね!住宅の備蓄倉庫の計画について、申請地によっては、なんらかの決まりが定められている場合があるので、そちらは確認した方がいいと思います!

また、備蓄倉庫を計画する位置も影響は大きいと考えられます。

例えば、廊下から使う小さな押入れ部分を備蓄倉庫として利用するとします。建築主の要望で備蓄倉庫の計画をしたい!という事であれば十分計画としてありそうだと思います。

でも、普通の寝室や洋室の押入れを備蓄倉庫にしている場合などは、やはり疑義が出やすいです。備蓄倉庫で検討するのはいいとは思いますが、申請先とも相談しながら計画を進めるようにしてください。

私も行政に何度か問い合わせしましたが、回答バラバラでした。

  • 先ほどご紹介した技術的助言に乗っ取っていればok
  • 一戸建て住宅は一切認めていない
  • 共用部(廊下等)からだったら認めている

など…確認はした方がいいかなと思います。

法文で確認する【建築基準法施行令2条1項四号ロ、3項二号】

主要構造部は、『建築基準法施行令2条1項四号ロ、3項二号』に記載されています。

建築基準法施行令2条1項四号

四 延べ面積 建築物の各階の床面積の合計による。ただし、法第五十二条第一項に規定する延べ面積(建築物の容積率の最低限度に関する規制に係る当該容積率の算定の基礎となる延べ面積を除く。)には、次に掲げる建築物の部分の床面積を算入しない。

—(抜粋)—

ロ 専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分(第三項第二号及び第百三十七条の八において「備蓄倉庫部分」という。)

建築基準法施行令2条3項二号

第一項第四号ただし書の規定は、次の各号に掲げる建築物の部分の区分に応じ、当該敷地内の建築物の各階の床面積の合計(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、それらの建築物の各階の床面積の合計の和)に当該各号に定める割合を乗じて得た面積を限度として適用するものとする。

—(抜粋)—

二 備蓄倉庫部分 五十分の一

まとめ

✔️容積率緩和を受ける備蓄倉庫の定義は、下記2つを満たすこと

  • 利用者に見えやすい位置に備蓄倉庫である旨の表示されていること
  • 備蓄倉庫部分は壁や建具で囲われた専用室とする

✔️備蓄倉庫は、延べ面積の1/50を限度として、容積率対象の床面積から除くことができる

✔️備蓄倉庫の緩和は、用途に制限がないため、住宅でも使える(ただし、申請先確認は必要となる

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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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