建築基準法

検査済証は再発行できる?|無い理由・代わりになる手続きを解説

検査済証ってなに?

検査済証が無いんだけど、理由は?

検査済証の再発行はできる?検査済証の代わりになる書類はある?

検査済証を取得していない違反建築物はどうすればいい?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

検査済証とは、完了検査(現場検査)が合格した証明書

検査済証が無い理由は、紛失以外に、完了検査をそもそも受けていない違反建築物の可能性がある(古い建築物でよくある)

紛失した検査済証は再発行できない。ただし、類似した書類は発行してもらえる

そもそも検査済証を取得していない違反建築物に対しては、救済措置が用意されている(ただし、難易度は高め…)

このページを見ている方は、検査済証が無いのでアクセスしていると思うのですが、『どうして検査済証が無いのか』というのが大きなポイント

単純に書類を紛失していないだけなのか。それとも、そもそも検査済証を取得していないのか…

今回の記事では、それぞれのケースに分けて、その対応方法を解説します!(X:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版

『検査済証』とは?

検査済証とは、建築主事・指定確認検査機関から『完了検査(現場検査)』を受け、合格した場合に発行される証明書

建築基準法は、プロである設計者であっても完全に理解することできない、難解な法律です。したがって、建築法規を専門としている建築主事や指定確認検査機関という第3者から、図面の審査や、現場の検査が行われます。

完了検査とは、建築物が完了した時に受ける検査のこと。詳しくは下記の記事で解説しています。

これに合格すると、今回の記事で解説している検査済証が発行されます!検査済証が発行されないと、建築物の使用ができません!

確認済証との違いとは?

確認済証とは、工事着工前に、図面審査を行われ、合格したことの証明書

検査済証は、検査が合格した時に発行される書類です。一方、確認済証は図面審査が合格した時に発行される書類です。

流れとしては、まず、『確認済証』を取得して、図面上で建築基準法に適合していることの確認を受けます。そして工事完了後、その図面通りに建築物が出来ているか現場検査を受け、合格することで『検査済証』を取得することができます。

この確認済証を取得する図面審査のことを、確認申請と呼ばれています。確認申請については、下記の記事で詳しく解説しています。

検査済証の義務化は『いつから』?

検査済証の取得は、建築基準法が誕生した昭和25年11月23日から

建築基準法は毎年法改正されています。よく、検査済証の取得も、最近になって法改正されたのではないか、と勘違いされます。

しかし、検査済証の取得に関する法律は、建築基準法は施行された昭和25年11月23日からずっとあります。

だから、昭和25年11月23日以降の建築物は、基本的には、検査済証があるはずです!

検査済証は『いつ必要』になる?

建築物を増改築・用途変更を行う場合に、必要になる

建築物の増改築・用途変更を行う場合には、当然ですが、その建築物が建築基準法に適合しているかどうか確認されます。それを確認し、状況を把握した上で、増改築・用途変更の法規について確認を行います。

検査済証は、その建築物が『建築基準法に適合しているかどうか』を判断する重要な書類。だから、増改築・用途変更の時には、必須となります!

実際、検査済証がなく、増改築・用途変更ができなくなる、ということは残念ながらよくあることです。それくらい、重要性が高い書類です。

検査済証が『無い理由』とは?

検査済証が無い理由は2つ考えられる

  1. 書類の紛失
  2. そもそも、完了検査を受けていないので、検査済証を受け取っていない

①については、言うまでもありません。この場合は、後ほど解説しますが、検査済証の再発行は難しくとも、他の方法でどうにかできます。あまり心配はいりません。

問題は、②のそもそも完了検査を受けていない場合です。こちらは、本来なら完了検査を受けなければならないのに、完了検査を受けていない、『違反建築物ということです。だから、検査済証の取得・代わりになる書類の取得は、困難です。

どうして、完了検査を受けていない、検査済証を受け取っていない建築物があるの?
こういう建築物は、一昔前の古いものに多いのですが…実は、昔は確認済証だけで銀行の融資が受けられ、完了検査を受けないのは当たり前!という時代があったのです。

しかし、最近は、制度が厳しくなり、検査済証まで交付されていないと、銀行の融資が受けられなくなりました。だから、比較的新しい建築物は、きちんと完了検査を受け、検査済証を取得している場合が多いです。

実際、完了検査を受けていない建築物は、申請を受けていた図面とは全く異なる建築物が建ってしまっていることもあります。(検査をしていないので、当たり前の話ですが…)だから、完了検査を受けていない建築物は、建築基準法に適合しているのかかなり怪しい建築物ということになります。しっかりと、検査済証の取得については確認を行う必要があります。

そもそも、今手元に検査済証がないから、完了検査を受けたかどうかすらわからないのだけど…どうしたらいいの?
その場合、管轄の行政に問い合わせをしてみましょう!行政は、確認済証の履歴・検査済証の履歴をすべて把握しているので、検査済証を取得しているか確認することができますよ!

検査済証は『再発行』できる?

検査済証は、再発行できない

しかし、法的な根拠があるものではないが、代わりの書類の取得は可能

まず、検査済証の再発行はできません。なぜかというと、建築基準法上、検査済証の再発行が可能、となっていないからです。

それに、もし仮に再発行がポンポンできてしまうとすると、同じ物件の検査済証や確認済証が複数世の中に出回ってしまうという事になりますね。どれが本物なのかわからなくなり、偽装か何かの疑いが出てくると思いませんか?

だから、検査済証は再発行できません。

しかし、検査済証に代わる書類を手配することは可能です。しかし、あくまでも法的根拠な書類ではない、ということは注意したいです。

つまり、何が言いたいかというと、銀行などの手続きで必要になった場合は、今からご紹介するもので手続きできるのか?というのは事前に確認が必要です。

ちなみに、次にご紹介する書類で、増築や用途変更などの申請は基本的に可能ですのでご安心ください。

検査済証の代わりとして、『特定行政庁』に対して、『建築計画概要書の写しまたは『建築確認台帳記載証明の手続きが可能

これらの書類で、確認済証や検査済証の取得履歴、物件の概要を確認する事ができます。

ちなみに、何度も言いますが、法的なものではないので、名称などは地域によって少し違うかもしれません。

私が確認申請を出したのは、指定確認検査機関なんだけど特定行政庁に問い合わせしなきゃだめなの?
基本的には特定行政庁です。

特定行政庁に問い合わせをしていただきたい理由は2点です

まず1点目は、確認済証、検査済証の取得履歴を管理しているのいは特定行政庁だからです。それは、確認済証を受けた指定確認検査機関と、検査済証を受けた指定確認検査機関が異なる可能性があるからです。

建築基準法上、確認済証を受けた審査機関で検査の申請をしなければならないという決まりはありません。確認申請はA会社、完了検査はB会社という申請方法も可能なのです。

よって、確認申請を受けたA会社に問い合わせをしても、検査済証の交付はわかりません。

しかし、確認済証や検査済証の交付は必ず行政庁に報告しているので、特定行政庁であれば、確認済証及び検査済証取得状況を正確に把握する事が可能です。

そして2点目は、指定確認検査機関は守秘義務があるので、申請関わっていない者に建築物の概要を伝える事ができないからです。

ちょっと待ってよ、守秘義務って言われたら特定行政庁だってそうでしょ?

いえいえ、特定行政庁は建築基準法で閲覧させなければならないという法文があるんですよ

その法文とは、法93条の2です。気になる方は確認をしてみてください。

(気になる方は建築基準法第93条の2を確認)

建築基準法に記載がある以上、特定行政庁は概要書の閲覧を拒む事はありません。(悪用させない為にある程度のルールはあるかもしれませんが)

以上の2点より、指定確認検査機関で交付した建築物の概要書でも、特定行政庁に閲覧申請をしてください。

『完了検査を受けていない場合』の対応は?

完了検査を受けていない建築物は、「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」という手続きを行うしかない

(ただし、難易度はかなり高め…)

完了検査を受けていない建築物は、残念ながらたくさんあります。これらの建築物に対して、『救済措置』が求められています。それが、「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」です。

詳しくは国土交通省のホームページで確認

要は、検査済証と同じ効力ような書類を取得する手続きです。登録している指定確認検査機関に申請を出して進めることができます。

検査済証が無くても、こんな手続きを国土交通省が用意してくれてるなら何の問題もない!

よかった!

これが、そんなに素晴らしい手続きでも無いんです。

なぜなら、申請の難易度が高すぎるから。

このガイドライン、本当に難易度が高いです。

考えてもみて下さい。既に建ってしまっている建築物の構造部分などの法適合も確認するんです。そのあたりの見えない部分の調査資料の作成、検討、検査。もう、考えただけで大変そうじゃないですか?

しかも、結果、不適合でした。みたいな事もよくあるようです。

高い申請手数料、調査費、時間をかけても不適合の判子を押されてしまう可能性がある手続きです。

しかし、そうは言っても、一体増築や用途変更の場合は検査済証、またはそれに変わるものは必須です。

このガイドラインで進められるか。それも考慮して増築、用途変更ができるかどうかは慎重に判断をしたいですね。

まとめ

✔️検査済証とは、建築主事・指定確認検査機関から『完了検査(現場検査)』を受け、合格した場合に発行される証明書

✔️検査済証がない場合の手続きは下記の通り

検査済証を紛失した場合 検査済証の代わりとして、『特定行政庁』に対して、『建築計画概要書の写しまたは『建築確認台帳記載証明の手続きが可能
完了検査を受けていない場合 検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドラインを行う
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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』

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