建築基準法において、建築物かどうか?というのは非常に大切です。それは、建築物に該当すれば建築基準法の規制を受けますが、逆に建築物に該当しなければ、建築基準法の規制は受けないからです。
今回はそんな『建築物の建築基準法の定義』について建築基準法の内容を確認してみましょう。
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指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
建築物の定義は5つに分かれる
建築基準法上の建築物に該当するもの5つ
- 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの
- 建築物に附属する門若しくは塀
- 観覧のための工作物
- 地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)
- 建築設備
では、それぞれの内容を確認していきましょう。
土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの
以下の要件全てに該当する時
- 土地に定着する事
- 工作物である事
- 屋根がある事
- 柱または壁のいずれかがある事
実はこちらの条件で一番建築物かどうかの疑義が生じるのは、『物置』や『倉庫』です。ホームセンターなどで買ってきた既製品を設置する場合、建築基準法の規制を受けるかどうか?という事です。結論、建築物に該当するので建築基準法の規制を受ける事になります。
附属する門若しくは塀
建築物に付属する門若しくは塀は建築物扱い
(建築物に付属しない単独の門若しくは塀は建築物では無い)
更地に塀や門の設置があるのみでは、建築物扱いになりません。あくまで、建築物の付属としてのみ、建築物扱いになります。
観覧のための工作物
屋根や柱壁が無くとも、観覧の為の工作物は建築物扱い
具体的な例を挙げると、野球場、乗馬場等の観覧席などが考えられます。一般的には建築物に該当する例は先ほどご紹介した、屋根や柱壁を有する建築物です。しかし、観覧の為の工作物は屋根や柱が無くとも、建築基準法の規制を受ける事になります。
地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設
地下施設の『事務所』や『店舗』は建築物扱い
(『地下道』や『地下広場』は建築物扱いでは無い)
しかし、鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。
『地下道』や『地下広場』などで有れば、建築物ではありません。しかし、そういった施設には『事務所』や『店舗』などの計画が付き物だと思います。その店舗や事務所の利用者の安全性の確保の為、地下部分については建築物として取り扱うべきという事で追加しているものです。
しかし、ここで注意していただきたいのは、構内の一般の駅舎、待合室などは通常通りの建築物です。線路敷地というのは、構内までは含んでいないので注意が必要です。
建築設備
こちらについてはどんな建築設備なのか、法文に明示があります。(法2条第三号)
以下のもの該当する建築設備は、建築物扱いです。
建築設備とは?
建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針
法文で確認する
建築基準法第2条第1項第一号
建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類するこ 施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
建築物に該当しないもの
今まで建築物に該当するものを紹介してきましたが、逆に、建築物に該当しないものについても整理しておきましょう。
建築物に該当しないもの
- 所定の条件を満たした『倉庫・物置』
- 建築物に付属していない『塀』
所定の条件を満たした『倉庫・物置』
倉庫と物置は、原則として建築物です。(よくある勘違いなので念押しします)これは、前提としてありますが、倉庫や物置であっても所定の条件を満たしたものは、建築物になりません。
建築物に該当しない倉庫・物置
土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置等を含)のうち、奥行きが1m以内のもの又は高さが1.4m以下のものは、建築物に該当しない。
建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例2017年度版 より
ただし、これは一般的な話であり、行政によってはこれ以外に条件を設けていることもありますので、よく確認するようにしましょう。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
建築物に付属していない『塀』
建築物に付属している塀は、建築物です。しかし、逆に建築物に付属していない塀は建築物にはなりません。
つまり、更地の敷地にある塀は建築物では無いということです。敷地内に建築物があるかどうか?で塀が建築物になるかどうか?が決まりますので、よく確認しましょう。
建築物の定義に関係する法規とは?
確認申請の有無について
確認申請はそもそも『建築物』の場合取得が必要になります。だから、建築物で無い場合、確認申請不要になります。
まとめ
建築物の定義に該当するかどうかは、建築基準法の適用を受けるかどうかに関わる非常に重要な内容です。
特に、塀などは建築物と言われてもピンと来ないと思いますが、建築物に付属するものは建築物扱いとなります。(つまり、厳密に言うと確認申請も必要になるということ…)