防火上主要な間仕切壁の仕様・開口の定めは?
防火上主要な間仕切壁と防火区画の違いは?
こんなお悩みに、答えます!
まずは結論から…
配慮が必要な特定の用途の間仕切壁を強化することで、火災時に建築物内の人々が火災の拡大に先じて安全に避難できるようにすることを目的にしている
防火上主要な間仕切壁とは、仕様・開口は…
防火上主要な間仕切壁の間仕切壁 | 原則として、45分準耐火構造とし、小屋裏天井裏に達せしめる |
開口 | 制限なし(防火設備等も不要!) |
防火区画は、あくまで区画なので、壁・天井・開口部に制限がある。一方、防火上主要な間仕切壁は、主として間仕切壁に対する制限のみ
今回の記事では、わかりやすく要点を整理して、解説していきます!(X:sozooro)
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
『防火上主要な間仕切壁』とは?
防火上主要な間仕切壁とは…
学校・就寝利用などがある用途、不特定多数が利用するマーケット等の配慮すべき特定の用途の
間仕切壁を準耐火構造以上とすること
ポイントは、やはり、『特定の用途』に対して必要になるということです。つまり、規模などは関係なく、用途が重視されている規制ということです。
『実は防火上主要な間仕切壁が必要だった!』みたいなうっかりミスがよくあります
だからこそ、防火上主要な間仕切壁が必要な『用途』については、しっかりと把握しておく必要があります。
Q.防火区画との違いは?
区画するか、壁の耐火性能を強化するかの違い
防火区画壁・床・開口部で『区画』する
防火上主要な間仕切壁間仕切壁とその小屋裏部分を『準耐火構造』にする
意外と、防火区画と防火上主要な間仕切壁の区別を付けられていない人は多いです。しかし、読んで字のごとく、防火区画はしっかりと区画をすること。防火上主要な間仕切壁は、ただ単純に壁の性能を上げるだけで適合させることができます。
なお、後ほどQAでも紹介しますが、防火上主要な間仕切壁は、壁だけに対する規制なので、開口部などについては特に規制対象とはなりません。
防火区画については、下記の記事を参考にしてください。
防火上主要な間仕切壁が『必要になる建築物・用途』とは?
防火上主要な間仕切壁が必要になる建築物・用途は、下記の通り
- 学校
- 病院
- 診療所(患者の収容施設を有しないものを除く。)
- 児童福祉施設等
- ホテル
- 旅館
- 下宿
- 寄宿舎
- マーケット
防火上主要な間仕切壁の場合は、建築物の規模・構造は関係せず、『用途のみ』で決まります。
この用途の中でも、特定の壁についてのみ、防火上主要な間仕切壁にすればOKです!次の『配置すべき位置』で詳しく解説していきます!
防火上主要な間仕切壁の『設置すべき位置』とは?
防火上主要な間仕切壁を設置すべき位置とは
▼用途によって異なる部分 | |
学校 |
|
病院・診療所・児童福祉施設等・ホテル(旅館)・寄宿舎・下宿 |
|
マーケット |
|
▼共通の部分 | |
キッチン・厨房などコンロを設置する室 | 火気使用室とその他の部分を区画する壁 |
詳しい内容は、下記の書籍を参考にしてください!
防火上主要な間仕切壁の『仕様』とは?
下記2つどちらにも適合させること
防火上主要な間仕切壁は、主要構造部によって定める下記の仕様とすること
間仕切壁を建築物の構造種別 | 防火上主要な間仕切壁の種別 |
耐火建築物 | 耐火構造(耐火壁の時間は位置により、非耐力壁は1時間とする。) |
準耐火建築物(1時間) | 準耐火構造(1時間) |
準耐火建築物(45分) | 準耐火構造(45分) |
準耐火建築物(ロ-1)(外壁耐火) | 準耐火構造(45分) |
準耐火建築物(ロ-2)(主要構造部不燃) | 準耐火構造(45分・準不燃) |
小屋裏・天井裏まで達せしめること
間仕切壁を防火上主要な間仕切壁は、法文では準耐火構造にすること、としか書かれていません。しかし、 建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)では、耐火建築物で計画する場合などでは、準耐火構造ではなく、耐火構造にすべきことなどが明記されています。
Q.防火上主要な間仕切壁の開口部に、防火設備は必要か?
防火設備とする必要はありません。
防火上主要な間仕切壁に設ける開口部は、Q.防火上主要な間仕切壁に対して、設備配管等を貫通する場合の方法は?
法文にも明記されているため、必要(令114条5項)
内容としては、下記に定めるもの(防火区画と同じです)
貫通する給水管・配電管等の措置
以下2つ全てに適合させること
①管と防火区画との隙間をモルタル等の不燃材料で埋めること
②以下3つのいずれか1つに適合させること
・貫通する部分からそれぞれ両端1m以内の距離にある管を不燃材料で造ること
・管の外径が、用途、材質その他の事項に応じて告示1422号が定める数値未満であること
・国土交通省の認定を受けたもの
貫通する換気、暖房、冷房の風道等の措置
特定防火設備であって、大臣が定めた構造又は大臣の認定したものであること
防火上主要な間仕切壁を『免除・緩和する方法』とは?
免除・緩和する方法は2つ。スプリンクラーを設置する場合と、設置しない場合の2つがある
防火上主要な間仕切壁を防火上主要な間仕切壁を免除・緩和する方法は大きく分けて2つあります。スプリンクラーを設置しているかどうかで内容が大きく分かれていますので、それぞれ確認してみましょう。
スプリンクラーを設置する場合
2つ全ての条件を満たすこと(令112条4項)
以下居室の面積を以下2つのいずれかに該当させること
・当該階の居室の床面積の合計が200m²以下であること
・居室の床面積 200m²以内ごとに準耐火構造の壁、20分防火設備で区画すること
各居室に自動スプリンクラー設備等を設けること
スプリンクラーを設置しない場合
3つ全ての条件を満たすこと(令114条2項かっこ書、告示860号)
以下居室の面積を以下の2ついずれかに該当させること
・当該階の居室の床面積の合計が100m²以下であること
・居室の床面積100m²以内ごとに準耐火構造の壁、20分防火設備で区画すること
各居室に以下の3ついずれかの煙感知式の消防設備を設置すること
・住宅用防災報知設備
・自動火災報知設備
・連動型住宅用防災警報機
各居室から屋外へ容易に避難できる計画にすること(後述)
〈各居室から屋外へ容易に避難できる計画とは〉
以下の3つ全てに適合させること
があるか、2を満たす出口があり、下記のいずれかに避難可能であること ・道
・道に通じる幅員50cm以上の通路 ・準耐火構造の壁、20分防火設備で区画されている部分
各居室の出口から「屋外への出口」または「避難上有効なバルコニー」まで歩行距離8m※以下であること
各居室と通路は間仕切壁および戸+「閉鎖性能」で区画すること
※各居室及び通路の壁(床面からの高さ1.2m以上の部分)・天井が難燃材料の仕上げであれ ば、歩行距離16mとする
法文で確認する【建築基準法施行令114条】
主要構造部は、『建築基準法施行令114条2項』に記載されています。
建築基準法施行令114条2項
学校、病院、診療所(患者の収容施設を有しないものを除く。)、児童福祉施設等、ホテル、旅館、下宿、寄宿舎又はマーケットの用途に供する建築物の当該用途に供する部分については、その防火上主要な間仕切壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の間仕切壁を除く。)を準耐火構造とし、第百十二条第四項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。
まとめ
✔️防火上主要な間仕切壁が必要な用途は下記
- 学校
- 病院
- 診療所(患者の収容施設を有しないものを除く。)
- 児童福祉施設等
- ホテル
- 旅館
- 下宿
- 寄宿舎
- マーケット
✔️防火上主要な間仕切壁は、下記2つどちらにも適合させること
主要構造部によって定める下記の仕様とすること
間仕切壁を建築物の構造種別 | 防火上主要な間仕切壁の種別 |
耐火建築物 | 耐火構造(耐火壁の時間は位置により、非耐力壁は1時間とする。) |
準耐火建築物(1時間) | 準耐火構造(1時間) |
準耐火建築物(45分) | 準耐火構造(45分) |
準耐火建築物(ロ-1)(外壁耐火) | 準耐火構造(45分) |
準耐火建築物(ロ-2)(主要構造部不燃) | 準耐火構造(45分・準不燃) |
小屋裏・天井裏まで達せしめること
間仕切壁を