今回は『小屋裏の隔壁』(施行令第114条第3項)についての記事です。
『建築面積300㎡以上』でかかってくる条文がある事をご存知ですか?
今回ご紹介する小屋裏の隔壁(令第114条第3項)は、上記の内容でかかってくる少しマイナーな条文です。
建築基準法は大体、床面積500㎡超や、床面積1000㎡超といったキリのいい数値で法規制が厳しくなっていく事が多いです。
そんな中、この『300㎡』というのはなかなかピンとこない方も多いのではないでしょうか。
だからこそ、見落としやすくなってしまう『小屋裏の隔壁』についてをまとめてみました。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
まずは条文を確認する
建築基準法施行令第114条 建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁 (省略)
3 建築面積が300m2を超える建築物の小屋組が木造である場合においては、けた行間隔12m以内ごとに小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。
一 法第2条第九号の二イに掲げる基準に適合する建築物
二 第115条の2第1項第七号の基準に適合するもの
三 その周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあつて、その構造及び用途並びに周囲の状況に関し避難上及び延焼防止上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する畜舎、堆肥舎並びに水産物の増殖場及び養殖場の上家
『小屋裏の隔壁』がかかる建築物は?
まとめると
だから、主にかかるのは木造建築物です。
鉄骨造やRCだった場合は建築面積が300㎡を超えても、この条文はかかりません。
条文で求められている内容について
これを言い換えると『けた行間隔が12m以内なら、隔壁は不要』です。
ただし書きで除ける条件について
それは、3つあります。
- 耐火建築物にする事(法第2条第九号の二イに掲げる基準に適合する建築物)
- 建物全体の壁、天井の内装を難燃材料にする事 又は スプリンクラーと排煙設備設置(第115条の2第1項第七号の基準に適合するもの)
- 国土交通大臣が定める基準に適合する畜舎、堆肥舎並びに水産物の増殖場及び養殖場の上家
界壁と隔壁の違いについて
共同住宅などの界壁は馴染みがある方も多いと思います。
界壁と隔壁はごっちゃになりがちで、界壁のイメージを持ったまんまだと、なんだか面倒くさい法規制のように感じてしまうかもしれませんが、そんな事はありません。
この隔壁は、小屋裏部分で火が回ることを防ぐ事を趣旨としています。あくまで、小屋裏部分です。
だから、界壁みたいな壁は不要です。
つまり、隔壁があっても、大空間を作ったりする事は可能だと言うことです。
法適合させるポイントは?
ズバリ、ポイントは『内装にこだわりがあるかどうか』で決まります。
どういう事かというと、内装にこだわりが無ければ、壁と天井の仕上げを難燃材料するというただし書きが使いやすいので、こちらを使ってしまった方が簡単です。
では、内装にこだわりがある(例えば、木を表面現しにしたい寺院とか、協会)は素直に小屋裏部分で隔壁をするしか無いです。
そこに重点を置いて検討すると、法適合はさせやすいです。