排煙上無窓居室の検討(令116条の2) と 排煙設備の検討(令126条の2)
似ているようで全然違う検討です。
この2つの法文を並べても何がなんだかわかんないよ!という方も多いはず。
それはそうだと思います、非常にごっちゃになりやすい条文ですから。
まぁ、どうせ排煙設備の検討の方が難しいって言いたいんでしょ?と思うかもしれません。
ところが!排煙設備の方が検討しやすい部分もあるのです。
よって、しっかり整理しておかないと、一戸建て住宅、3階建の無窓検討で失敗してしまう、なんて事があるかもしれません。
この機会に整理してみましょう!
今回はまず、この2つの法律上の区別をご説明した上で、検討方法の違いを確認してみましょう!
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
2つの条文、法的な違いについて
まず、これを念頭に置いてください。
“排煙設備の検討(令126条の2)が大元の法文、排煙上無窓居室の検討(令116条の2)はおまけの法文”
あえて、排煙上無窓居室の検討(令116条の2)はおまけという風にここでは表現させてください。
3階建の一戸建て住宅では、いつもおまけの検討をさせられてるって事?
その通りなのですが、おまけと言っても重要なおまけなのです。
さて、あえておまけと表現している理由なのですが、
排煙上無窓居室の検討(令116条の2)を検討する理由は、排煙設備の検討(令126条)を設置させない為だからです。
こちらの記事で排煙設備の設置基準をまとめていますが、簡単にまとめると以下のようになります。
◆法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物で延べ面積が500m2を超えるもの
◆階数が3以上で延べ面積が500m2を超える建築物
◆第116条の2第1項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室
◆延べ面積が1,000m2を超える建築物の居室で、その床面積が200m2を超えるもの
この4つのどれかに該当をすると、排煙設備が必要になります。
さて、赤マーカーで線引きした箇所に注目してください。
第116条の2第1項第二号に該当する窓その他の開口部を有しない居室は排煙設備が必要になる、という事です。
第116条の2第1項第二号が確保できていれば、排煙設備の検討(令126条の2)は不要です。
よって、排煙上無窓居室の検討(令116条の2)は、排煙設備の検討(令126条の2)をさせない為のおまけの条文なのです。
排煙設備の検討(令126条の2)は、大変なんです。区画の話が出てきたり、設備の話が出てきたり。
そんなめんどくさい事したくないですよね?
その為に検討していただくのが排煙上無窓居室の検討(令116条の2)なのです。
紛らわしい検討方法の違い3点
計算上含める事ができる範囲の違い
何の変哲も無い部屋に見えますか?
実は、こんな変哲の無い計画でも排煙上無窓居室の検討(令116条の2)と排煙設備の検討(令126条の2)の計算方法は全然異なってきてしまうのです。
注目するとしたら、垂れ壁がある、という事ですよね。
この垂れ壁によって、計算に含める事のできる範囲が変わってきてしまうのです。
青く着色した部分は排煙上計算に含める事ができる範囲です。
排煙上無窓居室の検討(令116条の2)では、垂壁の寸法なんて全く関係がありません。
有っても、無くても、天井から800mmは計算に含める事ができます。
一方、排煙設備の検討(令126条の2)では、垂壁の寸法によって、天井から800mm計算に含める事ができません。
600mmの垂れ壁だったら600mmまでしか算定できないですし、500mmだったら500mmまでです。
ちなみに、排煙設備の検討の場合は、垂壁の設置は必須です。
垂壁などの防煙区画についてはこの記事では解説しきれていないので、以下の記事でよかったら確認ください。計算で含められる範囲等も読んでいただければ一通りわかります。
階段など空間が一体になっている場合の検討方法
この計画を見て、全然ピンと来ない方も多いかもしれませんね。
例えばこの部屋で火災が起こったとします。
火災が起こったら天井がフラットなのですぐに煙が2階に上がってしまう、というのはイメージ湧きますよね?
なので、こちらに区画が必要なのでは無いか?と疑問を持つ方がいたので取り上げてみました。
これも、排煙上無窓居室の検討(令116条の2)と排煙設備の検討(令126条の2)で扱いが異なります。
予想していた方もいるかもしれませんが(笑)
排煙上無窓居室の検討(令116条の2)では、全く関係がありません。
階段に対しての区画は、考えなくてもいい事になっています。
一方、排煙設備の検討(令126条の2)では、防煙区画(垂壁)必須です。
絶対に階段部分で垂壁などで区画をしなければなりません。
こちらについては防火避難規定の解説で、区画必須という解説がありますので、確認してみてください。
吹抜などで天井が高くなっている場合の検討方法
これが一番説明したかった。
吹抜がある場合の取り扱いです。
違いは以下のようになります。
施行令第116条の2の場合、告示1436号三号(平均天井高さ3m超えの告示)の検討は適用できません!
こちら、勘違いしている方が非常に多いところです。
告示1436号三号は、あくまでも排煙設備に適用できる告示なのです。
まだ排煙設備の設置に至っていない排煙上無窓居室の検討(施行令第116条の2)では、適用ができません。
今までご紹介してきた中で唯一、排煙設備の検討(令126条の2)の方が検討しやすい項目かもしれませんね。
告示1436号の話を解説している記事もありますので、よかったらこちらも確認ください。
まとめ:自分がどちらの条文の検討をしているか?把握する事が大事
それぞれの法文の違いについては、わかりましたか?
理解するのが難しい記事になってしまったのでないかと心配しています。
もし、わからない箇所があれば、他にも排煙の記事はたくさん書いていますので、そちらも確認していただければ、わかりやすくなると思います。
正直、今回私が一番言いたかった事は、
排煙上無窓居室の検討(施行令第116条の2)では、平均天井高さ3m超えの告示1436号三号は使えませんよ!
という事なのです。
これは、頭の中でちゃんと“今どっちの検討をしているのか?”整理できていれば楽勝なのですが、それが難しいんですよね。
この勘違いをしていると、吹抜部分の開口部で排煙計算をしてしまっている場合、排煙無窓になってしまう可能性があります。
排煙設備の検討(令126条の2)を設置する事にします!
と考える方もいるかもしれませんが、正直おすすめ出来ません。
それは、大変です。
では、試しに排煙設備で検討するとしましょう。
排煙上無窓居室の検討(施行令第116条の2)→排煙設備の検討(令126条の2)
に頭を切り替えてください!
計算の話だけだったら告示1436号の検討が使えるのでokですね!
でも、排煙設備の検討(令126条の2)は防煙区画(防煙垂壁など)で部屋を区画が必須なのです。
わざわざ、告示1436号の適合をする為だけに、500mm以上の不燃材垂壁を作ったりするのは、大変じゃないですか?
だったら、素直に開口部の計画をして、排煙上無窓居室の検討(施行令第116条の2)を確保した方が楽ではないでしょうか。
排煙設備って結構色々な話が絡んでくるので、安易に設置はしたくないですよね。
あくまで、ちゃんと2つの検討の差がわかっていれば全く問題無い話なので、もしまたわからなくなったら読みに戻ってきてください(笑)