実は超重要なバリアフリー法の読替え条文の話!
今回は『バリアフリー法の読替え条文』についての記事です。
バリアフリー法=高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
以下の記事でも解説していますが、バリアフリー法は、2000㎡以下の建築物でも適合義務が発生する事があります。
内容を要約すると、
本来だったら『特別特定建築物で2000㎡超』でバリアフリー法の適合義務ですが、
特定行政庁が定めれば、
①2000㎡以下の特定特別建築物でもバリアフリー法適合義務が発生したり
②特別特定建築物でない建築物(共同住宅とか)でもバリアフリー法適合義務が発生したり
と、厳しくする事が出来るんです。
だから、『特定行政庁のせいで発生するバリアフリー法適合義務』って結構色々な建築物でかかってくるんです。
そこで、皆さん『特定行政庁のせいで発生バリアフリー法適合義務』と切っても切れない『読替え条文』を皆さんご存知ですか?
実は、この『読み替え条文』を知らないと、そもそもスタートラインに立てていないという事になるんです。
そんなに大事なの!?と思うかもしれませんが、大事です。
なぜなら、この読替え条文を正しく理解していないと、バリアフリー法の中でも『適合させなければならない事』と『適合しなくてもいい事』に分かれるている事に気が付かないから。
今回は、そんな『バリアフリー法の読替え条文』について解説します。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
実例:特定行政庁が強化したバリアフリー法を検討するAさんの話
なぜ、読替え条文が大事なのか?というのは、実例を踏まえてご説明します。
という、Aさんがいます。
共同住宅は特別特定建築物ではないので本来、2000㎡を超えてもバリアフリー法はかかりませんが、東京都の場合は共同住宅を特別特定建築物に追加しているので、バリアフリー法適合義務が発生します。
だから、バリアフリー法の適合が必要なんです。
とりあえず、条文を最初から確認してみよう!
この方は、非常に真面目な方なので、条文からしっかり確認するようです。
では、条文を見てみましょう。
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第11条 (廊下) 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する廊下等は、次に掲げるものでなければならない。一 表面は、粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げること。二 階段又は傾斜路(階段に代わり、又はこれに併設するものに限る。)の上端に近接する廊下等の部分(不特定かつ多数の者が利用し、又は主として視覚障害者が利用するものに限る。)には、視覚障害者に対し段差又は傾斜の存在の警告を行うために、点状ブロック等(床面に敷設されるブロックその他これに類するものであって、点状の突起が設けられており、かつ、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものをいう。以下同じ。)を敷設すること。ただし、視覚障害者の利用上支障がないものとして国土交通大臣が定める場合は、この限りでない。
皆さんはどう思いますか?
共同住宅って、不特定多数が利用する用途では無いですよね。(あえて言うなら特定多数)
だから、ここだけだと『バリアフリー該当無し!』と読めてしまうんです。
残念な事に、共同住宅でもバリアフリー法がかかるのです。
それは、タイトルにもある通り、『読替え条文』があるから。
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令第23条 (条例で定める特定建築物に関する読替え) 法第十四条第三項の規定により特別特定建築物に条例で定める特定建築物を追加した場合における第十一条から第十四条まで、第十六条、第十七条第一項、第十八条第一項及び前条の規定の適用については、これらの規定中「不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する」とあるのは「多数の者が利用する」と、同条中「特別特定建築物」とあるのは「法第十四条第三項の条例で定める特定建築物」とする。
この条文は、条例で強化した規定は
「不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する」→「多数の者が利用する」
として、読み替えるんですよという事が書かれています。
先ほどの例の共同住宅は『多数の者が利用する』なので、この読替え条文より、バリアフリー法の廊下の規定が適合させなければならないのです。
注意!全ての条文を読み替える訳では無い!
さて、バリアフリー法には読み替えの条文があると言う事はわかりましたよね?
しかし、読み替え条文はもう一歩踏み込んだ話があるのです。
それを理解しておかないと、全ての条文のバリアフリー法を適合させないといけないと勘違いをしてしまいます。
それは、バリアフリー法の条文の主語は大きく2つあるんです。
①不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する
②不特定かつ多数の者が利用し、又は主として視覚障害者が利用する
さて、先ほどの読み替え条文の内容を考えると、
①不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する | 『多数の者が利用する』に読み替える |
②不特定かつ多数の者が利用し、又は主として視覚障害者が利用するもの | 読み替えない(不特定かつ多数の者が利用し、又は主として視覚障害者が利用するものまま) |
そうなんです!
②不特定かつ多数の者が利用し、又は主として視覚障害者が利用するだったら読み替えが無いので
先ほどのような共同住宅は適合させなくてokなんです!
条文によって、読み替えるのか?読み替えないのか?これをしっかり判断する事が非常に大事なんです!
まとめ:読み替え条文を理解して読むと、多数の者が利用する建築物は点字ブロックが不要になる
いかがでしたか?
読み替え条文を駆使よく理解すると、バリアフリー法のどれに適合させればいいのか?という事がよくわかると思います。
最後に、大事な結論をお話する為に、バリアフリー法の主語をまとめました。
第11条(廊下等) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第12条(階段) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第13条(階段に代わり、又はこれに併設する傾斜路) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第14条(便所) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第15条(ホテル又は旅館の客室) | ホテル又は旅館 |
第16条(敷地内の通路) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第17条(駐車場) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第18条(移動等円滑化経路) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第19条(標識) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第20条(案内設備) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する |
第21条(案内設備までの経路) | 不特定かつ多数の者が利用し、又は主として視覚障害者が利用するもの |
なんと、ここまで引っ張りましたが、結論として不特定かつ多数の者が利用し、又は主として視覚障害者が利用するものという主語で読み替えが不要なのは
案内設備までの経路(点字ブロック)のみなんです。
だから、結論はほとんどのバリアフリー法がかかります。(結局…)
しかし点字ブロックを省略できるだけでも大きく無いですか?今まで知らずに付けていた方もいるのでは無いでしょうか。
今後は無しで計画してみてもいいかもしれませんね。