建築基準法

特定天井の定義とは?|建築基準法の条件・基準をわかりやすく解説

特定天井ってなに?

特定天井ってどんな条件の天井

特定天井になったら、どんな基準を満たす必要があるの?

こんなお悩みに、答えます!

まずは結論から…

特定天井とは、『脱落すると重大な危害が生じるおそれのある天井』と定義され、特に高い耐震性が求められる吊り天井のこと

特定天井は具体的に、下記すべての条件を満たす天井のこと

  • 日常的に人が利用する場所
  • 高さ6m超
  • 水平投影は200㎡超
  • 質量は2kg/㎡超
  • 吊り天井

特定天井に該当した場合に、

『仕様規定に適合させる』『計算で安全性を確かめる』『大臣認定の認定を取得する』の3ついずれかに適合させる必要がある

特定天井という用語、あまり聞き馴染みがないんですけど、確認申請書の表記に出てきたり、建築士試験に出てきたり、意外と登場が多いんですよね。

今回の記事では、最低限知っておきたい、特定天井の基本的な知識について、わかりやすく解説していきます!X:sozooro

書いている人
そぞろ

指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。
Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから
著書:増補改訂版 用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社
著書:身近な事例から学ぶ 面白すぎる建築法規 /学芸出版社

『特定天井』とは?

特定天井とは、下記すべての条件を満たす天井のこと

  1. 日常的に人が利用する場所
  2. 天井高さ6m超
  3. 水平投影面積は200㎡超
  4. 質量は2kg/㎡超
  5. 吊り天井

すべての条件を満たさなければ、特定天井に該当しません。例えば、天井高さが5mの部分の天井だったら、他の条件がすべて該当したとしても、特定天井には該当しません。だから、特定天井に該当するのは結構稀なケースです。

特定天井に該当すると、どうなっちゃうの?
脱落したら重大な被害が出るとして、構造耐力上の安全性を確保する必要があります!
おおげさだなぁ…天井の脱落なんかするかなぁ?
それが、実際に脱落した天井があるんですよ!

この特定天井の実装のキッカケとなったのは、2011年に発生した東日本大震災です。体育館、劇場、商業施設などの大規模空間を有する建築物の天井が脱落する被害が多く見られました。そして、その被害数は2000件にも上り、多くの死傷者を出すこととなりました。

引用:「建築物における天井脱落対策試案」について/国土交通省

いつから施行されたの?

特定天井の施行日は、平成26(2014年)年4月1日

東日本大震災があったのが2011年なので、少し時間が経ってから改正されました。

つまり、平成26年より前だったら、特定天井は既存不適格建築物なので、特定天井の基準に必ずしも適合している必要はないということになります!

既存不適格建築物の定義等については、下記の記事を確認してください。

『強化天井』との違いは?

『強化天井』と『特定天井』は似ているようで、全くことなる天井を示す

特定天井→構造規定に関する用語

強化天井→防火規定に関する用途

実は、建築士試験などでは、強化天井と特定天井を入れ替えた問題がよく出題されます。でも、用語としては全くことなる意味を示すんです。

具体的には、特定天井は、構造方面の規制で登場する天井です。一方、強化天井は、防火方面の規制で登場する天井です。

特定天井が満たすべき『基準』とは?

特定天井に該当した場合、下記3つのいずれかの基準に適合させなければならない

  1. 仕様規定に適合させる
  2. 計算で安全性を確かめる
  3. 大臣認定を取得する

特定天井に該当した場合には、天井落下の対策が必要になります。その方法は、3つです。

②計算と③認定については読んでそのままです。②の場合には、構造計算をして安全性を確かめる必要があります。③の場合には、国土交通省から認定を受ける必要があります。

では、①仕様規定の内容を確認してみましょう!

仕様規定に適合させる

下記すべての基準に適合させること(告示771号第3により)

  • 天井面構成部材等の単位面積質量は、二十キログラム以下とすること。
  • 天井材(グラスウール、ロックウールその他の軟質な繊維状の材料から成る単位面積質量が四キログラム以下の天井板で、他の天井面構成部材に適切に取り付けられているものを除く。)は、ボルト接合、ねじ接合その他これらに類する接合方法により相互に緊結すること。
  • 支持構造部は十分な剛性及び強度を有するものとし、建築物の構造耐力上主要な部分に緊結すること。
  • り材にはJISに定めるつりボルトの規定に適合するもの又はこれと同等以上の引張強度を有するものを用いること。
  • り材及び斜め部材(天井材に緊結するものを除く。)は、埋込みインサートを用いた接合、ボルト接合その他これらに類する接合方法により構造耐力上主要な部分等に緊結すること。
  • り材は、天井面構成部材を鉛直方向に支持し、かつ、天井面の面積が一平方メートル当たりの平均本数を一本(天井面構成部材等の単位面積質量が六キログラム以下のものにあっては、〇・五本)以上とし、釣合い良く配置しなければならない。
  • 天井面構成部材に天井面の段差その他の地震時に有害な応力集中が生ずるおそれのある部分を設けないこと。
  • り長さは、三メートル以下とし、おおむね均一とすること。
  • 斜め部材(JIS G三三〇二(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)―二〇一〇、JIS G三三二一(溶融五十五%アルミニウム―亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)―二〇一〇又はこれと同等以上の品質を有する材料を使用したものに限る。)は、二本の斜め部材の下端を近接してV字状に配置したものを一組とし、次の表に掲げる式により算定した組数以上を張り間方向及びけた行方向に釣合い良く配置しなければならない。ただし、水平方向に同等以上の耐力を有することが確かめられ、かつ、地震その他の震動及び衝撃により天井に生ずる力を伝達するために設ける部材が釣合い良く配置されている場合にあっては、この限りでない。
  • 天井面構成部材と壁、柱その他の建築物の部分又は建築物に取り付けるもの(構造耐力上主要な部分以外の部分であって、天井面構成部材に地震その他の震動及び衝撃により生ずる力を負担させるものを除く。以下「壁等」という。)との間に、六センチメートル以上の隙間(当該隙間の全部又は一部に相互に応力を伝えない部分を設ける場合にあっては、当該部分は隙間とみなす。以下同じ。)を設けること。ただし、特別な調査又は研究の結果に基づいて、地震時に天井面構成部材が壁等と衝突しないよう天井面構成部材と壁等との隙間を算出する場合においては、当該算出によることができるものとする。
  • 建築物の屋外に面する天井は、風圧により脱落することがないように取り付けること。

法文により確認すると、上記すべての基準を満たす必要があります。結構複雑ですよね。

国土交通省さんが図解を出しているので、そちらの方がイメージつくかと思います!引用しておきます!

引用:引用:「建築物における天井脱落対策試案」について/国土交通省

法文で確認する

特定天井は、『建築基準法施行令39条3項、告示771号』に記載されています。

建築基準法施行令39条3項

特定天井(脱落によつて重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。以下同じ。)の構造は、構造耐力上安全なものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

告示771号第2

特定天井は、吊つり天井であって、次の各号のいずれにも該当するものとする

一 居室、廊下その他の人が日常立ち入る場所に設けられるもの

二 高さが六メートルを超える天井の部分で、その水平投影面積が二百平方メートルを超えるものを含むもの

三 天井面構成部材等の単位面積質量(天井面の面積の一平方メートル当たりの質量をいう。以下同じ。)が二キログラムを超えるもの

まとめ

✔️特定天井とは、下記すべての条件を満たす天井のこと

  • 日常的に人が利用する場所
  • 天井高さ6m超
  • 水平投影面積は200㎡超
  • 質量は2kg/㎡超
  • 吊り天井

✔️特定天井に概要した場合、下記3ついずれかの方法で安全性を確かめる必要がある仕様規定に適合させる計算で安全性を確かめる

大臣認定を取得する
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そぞろ。
このサイトを作成している管理者。建築法規に関わる仕事をしています。難解な建築基準法をわかりやすく、面白く解説して、『実は簡単なんじゃないの?』と勘違いしてもらいたい。著書『用途と規模で逆引き!住宅設計のための建築法規』『身近な事例から学ぶ 面白すぎる建築法規』他多数の書籍の監修

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