今回は建築基準法上の『住宅の定義』についてです。
住宅として取り扱いをする為には、必要なものがあります。
それは、水回り3点セット。
つまり、トイレ、浴室、流し台(キッチン)です。
この『水回り3点セット+就寝可能な部屋』で、建築基準法上、住宅として取り扱う事が可能です。
という方もいるかもしれませんが、
実はこの水回り3点セットをマスターすると、住宅の『離れ』の計画に役立つ、用途不可分について理解する事ができます。
今回は、
◆住宅の水回り3点セットについて
◆応用編!用途不可分にする方法
についてご説明します。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
住宅要件である水回り3点セットについて
建築基準法では、住宅の定義についての記載は、ありません。
記載があるのは、『住宅の品質確保の促進等に関する法律』くらいです。
住宅の品質確保の促進等に関わる法律第2条
この法律において「住宅」とは、人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分(人の居住の用以外の用に供する家屋の部分との共用に供する部分を含む。)をいう。
なんと、これしか書いていません。だから、住宅の要件ってなに?と迷う方も多いはず。
そこで、根拠資料としては有力なのは
こちらの図書は、『日本建築行政会議』が監修している図書で、それなりに根拠になるものです。この図書の中『ソーホーSOHO』に住宅の定義についての記載があります。
『トイレ、流し台(流し台)、浴室』の3点セットが備えられている場合は住宅と判断とあり、あとは、常識的には『寝室』も必要と言われています。
だから、
となります。
一つだけ、欠けてもいいものがある
さて、『トイレ、流し台(流し台)、浴室』の3点セットが必要という事がわかったところで、
この中で欠けても住宅として扱えるものがあります。
たとえば、住む人が『家でお風呂は入らない!私はスーパー銭湯に行くの!』って方かもしれないじゃないですか。
トイレ、流し台は生活に必ず必要ですが、唯一、浴室は欠けていても認められる事が多いです。
私もいくつかの特定行政庁に確認をした事がありますが、浴室は無くてもokとしている所が殆どです。
念のために申請先に確認をした上で、浴室を無くすという事は可能だと思います。
ただし、建築基準法、品格法の話ではありませんが、住宅支援機構の融資を受ける場合の適合証明の申請は、浴室必須です。
これはもう決まっています。こちらを受ける予定の場合は浴室を無くしてはいけません。
3点セットをあえて欠けさせて、用途上不可分で別棟計画をする方法
さて、ここからが本題。みなさん、用途上可分、不可分の関係を知っていますか?
建築基準法は、『1つの敷地に建築物は1つという原則』があります。
もし、1つの敷地に建築物を2つにする為には、『用途不可分』の関係にしなければなりません。
例えば、『共同住宅』の場合、
『共同住宅』以外にも敷地内に建っている建物があります。
例えば、『プロパン庫』や、『ゴミ置き場』などで、これらは間違いなく『用途上不可分』です。
だって、プロパン庫やゴミ置き場は共同住宅の為の施設だから、『分けたくても、分けられないよ』と言い訳出来ますよね?
だから、『用途上不可分』なんです。
たとえば、この敷地って『分けられないよ!』という言い訳はできますか?
明らかに、言い訳できませんよね?なぜなら、AもBも『一戸建て住宅』として成り立っているから。
ここで、『水回り3点セット』の一つを削ってみましょう
これは、言い訳できますよね。『Bの建物はAのキッチンを使わないと、一戸建て住宅として使えません!』と言い訳できますよね。
だから、『用途上不可分』になるんです。
よって、
となります。
ただし、この中で浴室のみを欠けさせる場合は、申請先に確認しておきましょう。
なぜなら、先ほどお伝えした通り、浴室はなくても一戸建て住宅として取り扱うので、もしかしたら用途上可分と判断されて、敷地を分けなくてはいけなくなる可能性があるから。
住宅設計に必須の書籍
住宅は、建築基準法の中でも扱いが特殊です。
住宅には、採光計算が義務になっているだけでなく、他にも換気無窓や排煙無窓などの規制が複雑に絡んでいます。これらの内容を住宅の用途に絞り、わかりやすく解説しています。ぜひ、住宅設計でお困りの方はお手に取ってみてください。
まとめ:住宅として成り立つ条件を抑えるべし
おさらいになりますが、
住宅の要件は、『水回り3点セット+就寝可能な居室』です。
応用して、別棟で離れを計画する場合は、
あえて『水回り3点セットを欠けさせる』事で用途上不可分にすることができます。
知っていれば、離れの計画に役立つと思うので、頭の片隅に入れておきましょう!