排煙設備が必要になった建築物には500㎡以内毎に防煙区画が必要です。
防煙区画とは、防煙壁で区画する事です。
さて、防煙壁とは何でしょうか?
防煙壁にする為には3つの方法があります。
①間仕切壁で区画する方法
②防煙垂壁で区画する方法
③防煙垂壁+不燃材の扉で区画する方法
また、少し勘違いしやすい、防煙壁によって異なる有効排煙高さについてもご紹介していきます
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
そもそも防煙区画は何故必要なのか?
防煙壁の種類の説明の前に、防煙区画が必要な理由を知っておいた方がわかりやすいと思うので先に解説します。
そもそも防煙区画を要求している排煙設備は火災時の煙を建物全体にを広げずに外へ排出する為に設置されます。
その煙を外に排出させる為に防煙区画が必須なのです!
さて、煙は空気より軽いので、天井に溜まる、というのはイメージ湧きますよね?
このように、防煙区画(今回の場合は防煙垂壁)を設ける事で、煙が建物内に広がる事を防ぎます。
これが、防煙区画の最初の役割です。
では、煙を外へ排出する為に、外側に排煙設備を設けましょう。
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適切な位置(天井に近い位置)に排煙設備が設置されていれば、煙を建物全体にを広げずに外へ排出する事ができます。
これが防煙区画の2つ目の役割です。しかし、あくまで適切な位置(天井に近い位置)に設けた場合です。
これが、少し下に設置するとどうなるでしょうか?
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煙が天井にどんどん溜まり、排煙設備まで降りてくる頃には他の建築物の部分へ煙が流れてしまうのです。
このように、防煙区画(防煙垂壁)より下に排煙設備を設置しても有効に煙を排出できない、というのはわかると思います。
つまり、何が言いたいかというと
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排煙設備の有効部分というのは、防煙区画の計画によって決まるのです。
青い部分は有効部分として排煙設備の計算に含める事ができます。
しかし、垂れ壁より赤い部分は排煙設備の計算に含める事ができません。
よって、防煙区画の仕方だけでなく、どこまで排煙計算に含む事ができる有効部分なのか、という事を把握する事は非常に重要なのです。
さて、そちらを踏まえた上で、防煙区画の3つの方法を確認して見ましょう。
防煙区画の3つの方法
間仕切壁で区画する方法
間仕切壁で区画した場合、天井から800mmまで排煙上有効
防煙垂壁で区画する方法
防煙垂壁で区画した場合、垂壁部分まで排煙上有効(最低寸法500mm)
使うケースとしては、部屋毎に防煙区画をする場合で、建具の上部に防煙垂壁をする事が多いです。
最低限、500mm以上の垂壁が必要で、不燃材で造るか、不燃材で覆ってください。
一番気を付けていただきたい事は、排煙設備の有効寸法です。防煙垂壁の場合、600mmの垂れ壁だったら600mmまでしか算定できないですし、500mmだったら500mmまでです。正直、一番やりがちなのが、垂壁の最低寸法500mmで区画しているにも関わらず、計算は有効800mmで見て足りなくなる、、というのはよくあるのです。
防煙垂壁+常時閉鎖or随時閉鎖不燃扉
防煙垂壁(最低寸法300mm)+不燃材の扉(常時閉鎖式or煙感知連動)の場合、天井から800mmまで排煙上有効
垂壁寸法500mm確保出来ない場合に有効です。
扉を不燃扉や常時閉鎖にしたりするのは厳しいかもしれませんが、場合によっては選択肢としては有りですよね
ちなみに、こちらは法文には明記されていませんので、以下の書籍にて根拠については確認ください。
まとめ:無窓の排煙検討とは頭を切り替えるべし
普段、無窓の排煙設備をやってる方ってこの防煙区画によって、計算の有効部分が異なってくるトラップにまんまと引っかかるんですよね(笑)
冒頭で排煙区画の意味を説明してみたのは、実際の火災時の事を考えると防煙区画によって計算を変えるのはあたり前、というのを再認識していただきたかったからです。
なるほどなぁと思っていただけたら本当に嬉しいです。
防煙区画については特に3つ目のやり方を使いこなせば、かなり色々なケースで上手く防煙区画をする事ができるので是非ご活用ください!