今回は『準耐火構造の層間変形角』についての記事です。
主要構造部を準耐火構造にすると、『施行令第109条の2の2』の法規制がかかります。
法文を読んでみると、層間変形角。意外にも構造の話。
と思っている方も多いのではないでしょうか。
そして、
という方の為に、簡単な検討方法もご紹介します。
書いている人 |
指定確認検査機関にて、過去に5000件以上の物件の相談や審査業務を行っていた経験を生かし、ブログやSNSで建築法規に関する発信を行っている。 Instagram、X、LINE@などのSNSのフォロワーは延べ4万人以上。 詳しいプロフィールはこちらから 著書:用途と規模で逆引き! 住宅設計のための建築法規/学芸出版社 |
法の趣旨について
『準耐火構造=層間変形角』
これには、ちゃんと法の趣旨があります。
まずは、条文を確認しましょう。
建築基準法第109条の2の2 主要構造部を準耐火構造とした建築物の層間変形角 法第2条第九号の三イに該当する建築物の地上部分の層間変形角は、1/150以内でなければならない。ただし、主要構造部が防火上有害な変形、き裂その他の損傷を生じないことが計算又は実験によつて確かめられた場合においては、この限りでない。
要約すると
『主要構造部を準耐火構造にした建築物は、層間変形角を1/150以内にしなければならない』
となります。
そもそも、層間変形角とは?
層間変形角は、簡単に言うと、『建物の変形のしやすさ』です。
低ければ低いほど、建物の変形が少なくなります。
だから、今回の条文は建物の変形を少なくせよ!と言っているわけです。
どうして準耐火構造は建物の変形を少なくする必要があるのか?
さて、そもそも準耐火構造にする理由ってなんでしょうか?
あとは、地震火災の時とか?
令第109条の2の2は、この地震火災を防止する目的があります!
『地震→火災』が発生するというのは、イメージ付きますよね?
地震の後にこそ、主要構造部を準耐火構造にしている理由である、火災が発生します。
ここまで言えばわかりますよね。
そうすると、せっかくの準耐火構造なのに、意味がありませんよね?
だから、建物変形を無くして(層間変形角を強化して)地震の後も被覆材を残るようにしているんです。
これが、施行令第109条の2の2の法の趣旨です。
言われれば、確かにそうかもって、納得しますよね。
簡単な検討方法
早速、結論から!
構造計算が不要になる4号建築物の代表格、木造建築物なら簡単に検討可能です。
(ちなみに枠組壁工法だったら1.25倍する必要無し)
さて、1.25倍する事は知っている方も多いかと思いますが、どうしてこんな数値なのか?というのは知らない方も多いはず。
そもそも、普通の主要構造部を準耐火構造にしていない建築物の層間変形角はいくつなのでしょうか?
法文で確認してみましょう。
建築基準法第82条の2 層間変形角 建築物の地上部分については、第88条第1項に規定する地震力(以下この款において「地震力」という。)によつて各階に生ずる水平方向の層間変位を国土交通大臣が定める方法により計算し、当該層間変位の当該各階の高さに対する割合(第82条の6第二号イ及び第109条の2の2において「層間変形角」という。)が1/200(地震力による構造耐力上主要な部分の変形によつて建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合にあつては、1/120)以内であることを確かめなければならない。
木造は地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって建築物の部分に著しい損傷が生じるおそれがない場合に該当するので、1/120が適用されます。
ここまで言えばわかりますよね?
準耐火構造ではない木造建築物は、1/120以下
準耐火構造の木造建築物は1/150以下
ここです!ここで1.25倍なんです。
だから、壁量計算を満たしている建築物の層間変形角は1/120以下として考えられるので
1.25倍すればいいんじゃないの?という、わりと安易な理由かと思います。
令46条の検討に1.25倍でokな根拠
それは、『準耐火建築物の防火設計指針』です。
そちらに1.25倍でokという説明がありますので、確認してみてください。
まとめ:層間変形角は4号建築物の場合は壁量計算でしっかり検討すべし
いかがでしたか。
主要構造部を準耐火構造にした時にどうして層間変形角の検討が必要なのか。
それは、建物の変形を防ぎ、被覆材を剥がさない為。
実は、建物の防火性能を高める大事な法文です。
そして、層間変形角の検討、及び構造計算をしていない木造建築物については、
令46条の検討に1.25倍した数値で検討すればokです。
構造計算をしていない方でも、慌てずに壁量計算をしましょう。